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ビジネス街の書店をめぐりながらその時々のその街の売れ筋本をウオッチしていくシリーズ。今回は定点観測している紀伊国屋書店大手町ビル店に戻る。強い売れ筋にはあまり変化は見られない。金融庁が進める資産運用改革をルポした新書の『捨てられる銀行2 非産運用』や、ホワイトカラーの働き方を論じる『生産性』などが5月初めと変わらずに売れ続けている。そんな中で大手町のビジネスパーソンが新たな関心を寄せる新刊は、東芝危機を軸に日本の電機産業の失敗に光を当てた1冊の新書だった。

産業ピラミッドの瓦解が構造要因

その本は大西康之『東芝解体 電機メーカーが消える日』(講談社現代新書)。著者は企業取材に長く携わってきた元日本経済新聞の記者だ。タイトルをよく見ると「東芝解体」の方が小さな文字になっている。つまり東芝が副題で、本題は「電機メーカーが消える日」。東芝1社の問題を掘り下げるというより、日本の電機産業全体の失敗について正面から検証してみようというのが、本書の意図するところとなる。

序章で明らかにされるのは、次の言葉に集約される失敗の本質だ。構造的要因といってもいい。「電電ファミリーと電力ファミリー。戦後の日本の電機産業を支えてきた、この二つの産業ピラミッドが瓦解したことが、『電機全滅』の最大の原因なのである」。電電公社、後のNTTグループと電力業界。国策的ともいえる両グループの巨額な設備投資を分け合って成長を遂げたのが戦後の日本の電機産業であり、その「ミルク補給」がなくなった後、どのように生きる場所を見つけるのか、その模索と失敗が刻まれたのがこの30年ということになる。課題は今も電機各社の経営陣に重く突きつけられている。

8つの企業を個別に検証

もちろんそうした大づかみな構造に、はまらない企業もある。序章に続いて個別企業の失敗を丹念に点検する中で、企業ごとの事情の違いも明らかにしていく。取り上げたのは東芝、NEC、シャープ、ソニー、パナソニック、日立製作所、三菱電機、富士通の8社。それぞれの経営の失敗を指摘する著者の口調はきびしいが、「日本の電機産業にはまだ人材と技術と経験が残っている。ノキアのように変貌することは、まだ可能だ」と言い、再生への期待ものぞかせる。「おわりに」の中で、電機業界をめぐる新しい流れとして、家電ベンチャーや新規参入の家電メーカーなどで生き生きと働く元大手家電の技術者たちの姿をスケッチしているのも、著者の希望の証しだ。

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