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ロマンチックな「散骨」 高まる認知度、薄れる抵抗感 終活見聞録(6)

2017/6/9

カズラ島上陸前に執り行われた合同慰霊祭。左にあるのがカズラ島

散骨は海だけではない。島根県の隠岐諸島にある無人島のカズラ島(海士町)では、土の上に粉末状にした遺骨をまく。料金は26.5万円(委託の場合は22.5万円)。生前予約なら20万円を下回る(いずれも消費税別)。こちらは粉骨料を含む料金だ。カズラ島の場合、好きな日時に島に行って散骨や慰霊はできない。上陸できるのは年2回(5、9月)に限られる。それ以外は対岸の慰霊所から遥拝する。運営するのは戸田葬祭サービス(東京都板橋区)。2008年の開始後、9年でまいた遺骨が120体を超えた。15年10月には初めての合同慰霊祭を開き、7家族を含む約20人が参加した。「参加者には海士町の食のイベントに出てもらい、町の人との接点をつくれた。地元の人も喜んでいた」と村川英信専務は振り返る。

■刑法とのからみ、問われる節度

気になるのが、法的な問題だ。刑法の「遺骨遺棄」の法律などがそれに当たる。葬送の自由をすすめる会が1991年に散骨を実施した際も話題になったが、当時の法務省が「葬送のための祭祀(さいし)として節度をもって行うものについては遺棄罪にあたらない」という非公式見解を出しており、これが散骨業者のよりどころとなっている。一方で地元住民とのトラブルも珍しくなく、北海道長沼町のように散骨を条例で禁止したり、静岡県熱海市や埼玉県秩父市のように規制したりする自治体もある。

僧侶が読経した後、散骨した家族はそれぞれの場所でお参りする

問われるのは「節度」だ。「遺骨を粉末にする」「水溶性の紙に遺灰を包む」「セロハンで巻いた花束を禁じ、花びらだけにする」など、同会が定めたルールはある。海洋散骨業者26社でつくる「日本海洋散骨協会」では、「喪服の着用は避ける」「自然にかえらない副葬品はまかない」「線香や焼香の禁止」といったマナーを乗船する人にお願いしている。

散骨には「自然にかえる」「環境にやさしい」といったイメージがある。加えて、墓を建てるのに比べて費用が安く済む、継承問題を考えなくてよいといったメリットもある。以前はあった抵抗感や忌避感も薄れているようだ。一方で、全国で年間どのぐらいの散骨が実施されているか正確なデータはなく、業者数も不明だ。希望するなら、過去の実績などを踏まえて、信頼できる業者に託す必要があるだろう。そして節度やマナーなどの点から、何ができて何ができないのかをしっかり確認したい。

■全てをまいてしまうと…

散骨は亡くなる人の遺志に基づく場合が大半だが、希望する際は後に残る家族や親族の気持ちを考えたい。よく聞く話が、遺骨を全部まいてしまった結果、「どこに手を合わせたらよいか分からない」と悩むケースだ。

第一生命経済研究所調べ(2009年)

やや古いデータだが、第一生命経済研究所が2009年に実施した調査では、「自分は遺骨を全部まいてもらいたい」が17%と、「自分は遺骨を一部だけまいてもらいたい」の11.8%を上回った。前述の「墓地埋葬等に関する意識調査」でも、すべてを散骨するという回答が、一部を散骨するより多かった。「一度まいた遺骨は拾いに行くことはできない。まくのは一部にとどめて、残りを墓に入れたり、手元に置いたりすることを考えたい」と、死生学を専門にする同研究所の小谷みどり主席研究員は話す。

最近では「墓じまい」の一環で、取り出した遺骨を散骨にする事例があり、今後増えていきそうだ。子どもがいない人や、いても「墓参りで迷惑をかけたくない」と考える人が散骨を望むのはよくあるが、「遺骨をまく人の気持ち次第で、単なる骨の捨て場になってしまう可能性がある。散骨を業者に委託して、それっきり供養もしないというケースは典型例だろう」と小谷さん。ロマンチックなムードが先行している感はあるが、望む際は後を託す人が敬愛の情や弔いの気持ちを持ち続けてくれるかどうかも、しっかり見極めたい。

ワンポイント:遺骨の一部で手元供養も

散骨の際に遺骨の一部を残して「手元供養」にする選択肢もある。遺骨や遺灰を自宅や身近な場所に置いて供養するという考え方で、ペンダントにして身に付けたり、置物にして部屋に飾ったりするケースが多い。遺骨を全部まいてしまうと心のよりどころを失ってしまう人もいるので、手を合わせる対象として、こうした供養品を併せて考える人も増えている。

NPO手元供養協会のシンポジウムでは各種の商品が展示された

国内で手元供養品が生まれたのは、1990年代の終わりごろとされ、その後、徐々に広がっていった。「この10年間で認知・浸透し、今では年間に7万個程度販売されているのではないか」と、「手元供養」の名付け親とされる、NPO手元供養協会(京都市)の山崎譲二会長は話す。商品はたくさんの種類があるが、大きく「納骨型」と「加工型」に分類できる。納骨型は、遺骨や遺灰を小さな容器に入れて保管するもので、ペンダントとして身に付けたり、オブジェやミニ骨壷などにして部屋に置いたりする。価格は数千円から2万~3万円程度と比較的安価だ。一方の加工型は、遺骨に特殊な加工を施すため、値段が高くなる。プレートやペンダント、指輪などが主流だが、ダイヤモンドに加工するものなどでは200万円以上かかるものもある。

もともとは墓や仏壇の代わりだった手元供養だが、今では墓や仏壇はあっても、故人を身近に感じたいと注文する人が増えている。残された家族が購入する場合が多いが、「近くに置いて、いつまでもしのんでもらいたい」「家族を見守っていたい」と、自分の遺骨を使った品物を生前予約する人も出てきているという。供養の仕方は人それぞれ。ライフスタイルに応じて多様化しているのが現状だ。

(マネー報道部 土井誠司)

[日経回廊の記事を再構成]

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