ロマンチックな「散骨」 高まる認知度、薄れる抵抗感終活見聞録(6)

故高倉健さんの最後の主演作となった映画「あなたへ」、それぞれ原作がベストセラーになり、映画にもなった「マディソン郡の橋」と「世界の中心で、愛をさけぶ」。この3作品の共通点をご存じだろうか? 答は「散骨」。遺骨や遺灰をまく儀式がキーポイントになっている。散骨したとされる著名人を調べてみると、海外ではアインシュタインやジャック・マイヨール、ジョージ・ハリスンの各氏ら、国内では石原裕次郎さんや立川談志さんなどの名前が挙げられる。認知度は高まってきたが、弔いの手法として定着するのだろうか。

海上散骨は30万円弱で可能

船内で行われたお別れ会。参加者全員で黙祷、献花をする

東京・晴海から船に乗って約50分。羽田沖のポイントに到着した。船はエンジンを止め、やがて海洋散骨式が始まった。参加者は順番に船尾から袋に入った粉末状の遺骨や花びらを海面にまく。その後、屋上デッキに出て黙祷。船は散骨ポイントを3周して帰路についた――。

ブルーオーシャンセレモニー(東京都江東区)が実施した海洋散骨体験クルーズのひとこまだ。20人以上集まり、満席の盛況ぶり。船内では喪主役の人のあいさつや献花など「お別れ会」も実施、デザートバイキングもあり、湿っぽさを感じさせない旅だった。都内に住む40代の女性は「海が好きだった父が亡くなったときは散骨のことを知らなかった。母が亡くなったときは父の遺骨も併せて、こんな旅立ちをさせてあげるのもいいかな」と話してくれた。

ポイントに到着すると遺骨の入った袋と一緒に花びらをまく

以前は死んだら墓に入るのが当たり前だったが、昨今目立つのが「お墓はいらない」と考える人たちだ。そんな人たちの選択肢のひとつとして注目されているのが散骨だ。2007年から海洋散骨を手掛けるブルーオーシャンセレモニーの村田ますみ社長は、「16年は年間250件ほどだったが、17年は300件を超えそう。毎週末に船を出している状態です」と話す。

希望するのは、海が好きだった人や海外で長く生活していた人、そして墓を継承する子どもがいない人や、いても引き継いでくれるか分からない人たちだ。料金は、船を家族などで貸し切るプランで25万円、他の家族との乗り合いの合同乗船なら12万円、同社に委託すると5万円だ。それぞれ遺骨を粉末にする費用の3万円がプラスでかかる。16年は月2回だった合同乗船プランを、17年から月3回に増やした。

9割近くが「散骨知っている」

国内で散骨が知られるようになったのは1990年代に入ってから。91年にNPO法人の「葬送の自由をすすめる会」が海洋散骨を実施したのを機に広がっていった。

墓地埋葬等に関する住民の意識調査(2013年度厚生労働科学特別研究事業)
楽天リサーチ調べ(2014年9月)

「墓地埋葬等に関する住民の意識調査」(厚生労働科学特別研究事業)によれば、散骨の認知度について「名前も方法も、両方知っている」は47.4%、「名前のみ知っている」が41%となり、度合いはさておき、全体の9割近くが知っているという結果になった。また、楽天リサーチが20~60代の男女1000人に、自身の埋葬方法の希望を聞いたところ、散骨は16.6%と、「先祖代々のお墓」(29.5%)に次いで多く、「自分や家族らが新しく用意するお墓」や「永代供養墓」を上回った。女性の回答率が22%と高く(男性は11.2%)、先祖代々のお墓の22.4%とほぼ一緒。先祖や墓といったものに縛られたくないという女性の姿が垣間見える。

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