酸味が強い赤スグリ=PIXTA

ワンプレートで提供しているスイスの朝食メニュー「スイスの朝ごはん」には、この国で人気の果物である赤スグリを生であしらったが、とても酸味が強いため残す人も多いという。

「スイスの朝ごはん」には、チーズフォンデュに使うグリュイエールや穴あきチーズとして有名なエメンタールの薄切りが盛り合わせてあったが、主役は別。「レシュティ」と呼ばれる、おろしたジャガイモをパンケーキのような形にバターで焼いたものだった。

様々な具材をトッピングするなどしたレシュティはメイン料理としてもポピュラー=PIXTA

小麦が不作で値段が高かった時代にそれより安価だったジャガイモを使った料理が普及したとのことで、西スイスのベルン州発祥とも言われる。同国のドイツ語圏で食べられていた料理だが、今は国民食と言っていいほど全国的に親しまれているという。

「メイン料理や料理の付け合わせにもなるのですが、朝食のメニューとしてもポピュラー。平日は忙しいのでパンとチーズだけといった食事で簡単にすませ、週末にゆったりこうした料理を食べるようですね」(木村さん)。失礼ながら調理法を聞いて、最初は「マクドナルドの『ハッシュポテト』に似ているかも」と感じたが、出てきたこれを食べてみると、全く別物。

カリカリの食感とバターで焼いた野菜のうまみが魅力

口に入れると、カリカリに焼けたジャガイモの表面がサクッと音をたてた。食べ進むとたっぷりとタマネギも入っていて、ジュワっとバターで焼いた野菜のうまみが口の中に広がる。食べる前はメイン料理にもなると聞いて「役不足では?」と思ったものの、ボリューム感もあり、これとワインがあれば、十分夕食として楽しめると確信した。

「おろしたジャガイモを焼くだけなので簡単な料理かと思ったら、両面をカリカリに焼くのに結構時間がかかって大変なんです」と木村さんは苦笑する。店のキッチンでは、下ごしらえされた大量のジャガイモを脇に置きながら、調理スタッフが黙々とフライパンでレシュティ作りに励んでいた。

「ワールド・ブレックファスト・オールデイ」のキッチン

さて、「スイスの朝ごはん」の皿には、「ハイジの白パン」ものっていた。日本のパン店でよく見かけるふわふわもっちりの「ハイジの白パン」とは違う。中はふわっとしているが、外はパリッと硬い。

「店で似たパンを手作りした方が安上がりなんですが、本場スイスのものを出したくて」と、わざわざスイスのメーカーの冷凍パンを使っているという。「ハイジが感動したパンもこんな風だったのかな」と想像。

スイスから取り寄せた「ワールド・ブレックファスト・オールデイ」の白パン

皿に一緒に盛られたチーズやスイスの干し肉「ビュンドナーフライシュ」を挟んで食べたりするもので、子どもの頃憧れた、外国の物語にでてきたきこりが森でかぶりつく、チーズを挟んだパンを思い出した。

調味液に漬け込んだ牛の塊肉を乾燥させて作るビュンドナーフライシュは、薄くスライスして食べる。「『アルプスの少女ハイジ』でも、ハイジの友だちのペーターがよく食べているんですよ」と木村さん。アルプスの名峰が連なる山岳州であるグラウビュンデン州やヴァレー州(同州では、ビュンドナーフライシュのことをヴァリサー・トロッケンフライシュと呼んでいる)の特産品だそうだが、当初これが手に入らず、苦労したらしい。

珍しい牛肉の干し肉、ビュンドナーフライシュ

「大使館にも観光局にも日本には入ってないと言われ、やはりよく朝食に食べるというサラミを代わりに盛り合わせようかと思ったんですが、どうにか同じレシピで作ったオーストラリア産の肉を使ったものを発見したんです」。紙のように薄く削られたビュンドナーフライシュは、イベリコ豚のスライスに似ているけれど、豚のような脂っぽさはなくさらっとしている。しっかりとした熟成感のある味わいで、お酒のつまみにも最適。