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世界の朝食にこだわる専門店 次々紹介、はや26カ国

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NIKKEI STYLE

多くのファンを持つスイスの作家ヨハンナ・シュピリ原作のアニメ「アルプスの少女ハイジ」。このアニメには、魅力的な食べ物がいくつか登場する。

アルプスの山で暮らしていたハイジが、都会に出た際に感激する軟らかな白いパンもその一つ。今や「ハイジの白パン」として、これをイメージしたパンが、日本のあちこちのパン店で売られているほどだ。

東京・外苑前にある「ワールド・ブレックファスト・オールデイ」は、世界各国の朝食が期間限定で食べられるお店。メニューは2カ月ごとに国が変わり、この5、6月はスイスの朝食を提供している。

店主は建築家の木村顕さん。木村さんが同店を開いたきっかけは、2006年に日光に古民家をリノベーションした宿を開いたことにさかのぼる。宿泊者の半分が外国人だったことから相手の文化を知ろうと話を聞くうちに、食の話題からは相手の国への理解が深まりやすいことに気が付いたのだ。

中でも朝食は、各国とも料理の内容がほぼ決まっていて、毎日食べるもの。それぞれにこだわりがあった。そこで世界の朝食を専門に提供する店を開こうと思い立ち、13年に同店をオープン。スイスを含め、これまでに26カ国の朝食を提供してきた。

「イスラエルの朝食メニューでは、『シャクシューカ』というピリッと辛いスパイシーなトマトソースに目玉焼きをのせたものと、ヒヨコ豆のペースト『フムス』、パンなどを一皿に盛り合わせました。20世紀の半ばにできた新しい国であるイスラエルは、世界各地からの移民が暮らす国。だから、アラブ人の料理であったシャクシューカなどと、東ヨーロッパの食文化の影響を受けたパンを一緒に食べる。おいしい食べ物を味わいながら、その国の文化も実感できるんです」(木村さん)。

これまで、一番人気があった朝食の一つは、台湾の朝食。日本に住む台湾人の来店が目立ったらしい。日本にも台湾料理店はあるが、朝食メニューまで提供している店はなかなかないからだろう。木村さんはこう話す。「『蛋餅(ダンピン)』というハムやチーズが中に入った台湾風卵焼きなどを出したんですが、何度も来てくれた台湾の方もいて。蛋餅は上にかけるソースもトンカツソースみたいに、しょっぱいけど甘さもあって独特なんです」。

普通の飲食店とは異なり「日本人がおいしいと思うかより現地の人がおいしいと思うものを出す」のが木村さんのモットー。「納豆を最初からおいしいと思う外国人は少ないですよね。それと同じ」。だから、外国人旅行者や大使館、政府観光局などから得た情報から組み立てたメニューは、必ず日本に住むその国の人に試食してもらっている。

ワンプレートで提供しているスイスの朝食メニュー「スイスの朝ごはん」には、この国で人気の果物である赤スグリを生であしらったが、とても酸味が強いため残す人も多いという。

「スイスの朝ごはん」には、チーズフォンデュに使うグリュイエールや穴あきチーズとして有名なエメンタールの薄切りが盛り合わせてあったが、主役は別。「レシュティ」と呼ばれる、おろしたジャガイモをパンケーキのような形にバターで焼いたものだった。

小麦が不作で値段が高かった時代にそれより安価だったジャガイモを使った料理が普及したとのことで、西スイスのベルン州発祥とも言われる。同国のドイツ語圏で食べられていた料理だが、今は国民食と言っていいほど全国的に親しまれているという。

「メイン料理や料理の付け合わせにもなるのですが、朝食のメニューとしてもポピュラー。平日は忙しいのでパンとチーズだけといった食事で簡単にすませ、週末にゆったりこうした料理を食べるようですね」(木村さん)。失礼ながら調理法を聞いて、最初は「マクドナルドの『ハッシュポテト』に似ているかも」と感じたが、出てきたこれを食べてみると、全く別物。

口に入れると、カリカリに焼けたジャガイモの表面がサクッと音をたてた。食べ進むとたっぷりとタマネギも入っていて、ジュワっとバターで焼いた野菜のうまみが口の中に広がる。食べる前はメイン料理にもなると聞いて「役不足では?」と思ったものの、ボリューム感もあり、これとワインがあれば、十分夕食として楽しめると確信した。

「おろしたジャガイモを焼くだけなので簡単な料理かと思ったら、両面をカリカリに焼くのに結構時間がかかって大変なんです」と木村さんは苦笑する。店のキッチンでは、下ごしらえされた大量のジャガイモを脇に置きながら、調理スタッフが黙々とフライパンでレシュティ作りに励んでいた。

さて、「スイスの朝ごはん」の皿には、「ハイジの白パン」ものっていた。日本のパン店でよく見かけるふわふわもっちりの「ハイジの白パン」とは違う。中はふわっとしているが、外はパリッと硬い。

「店で似たパンを手作りした方が安上がりなんですが、本場スイスのものを出したくて」と、わざわざスイスのメーカーの冷凍パンを使っているという。「ハイジが感動したパンもこんな風だったのかな」と想像。

皿に一緒に盛られたチーズやスイスの干し肉「ビュンドナーフライシュ」を挟んで食べたりするもので、子どもの頃憧れた、外国の物語にでてきたきこりが森でかぶりつく、チーズを挟んだパンを思い出した。

調味液に漬け込んだ牛の塊肉を乾燥させて作るビュンドナーフライシュは、薄くスライスして食べる。「『アルプスの少女ハイジ』でも、ハイジの友だちのペーターがよく食べているんですよ」と木村さん。アルプスの名峰が連なる山岳州であるグラウビュンデン州やヴァレー州(同州では、ビュンドナーフライシュのことをヴァリサー・トロッケンフライシュと呼んでいる)の特産品だそうだが、当初これが手に入らず、苦労したらしい。

「大使館にも観光局にも日本には入ってないと言われ、やはりよく朝食に食べるというサラミを代わりに盛り合わせようかと思ったんですが、どうにか同じレシピで作ったオーストラリア産の肉を使ったものを発見したんです」。紙のように薄く削られたビュンドナーフライシュは、イベリコ豚のスライスに似ているけれど、豚のような脂っぽさはなくさらっとしている。しっかりとした熟成感のある味わいで、お酒のつまみにも最適。

朝食の皿の上には、さらに小さなガラスの器に入った、スイスで誕生したシリアル、ミューズリーもあった。平たく押しつぶしたオーツ麦(エンバク)に果物やドライフルーツ、ナッツなどを加え、これにミルクをかけて硬いオーツ麦をふやかし食べるものだ。羊飼いが食べていた携帯食にヒントを得、スイス人医師のビルヒャー・ベンナーがサナトリウムの患者向けの食事として1900年頃に開発した。

普段からミューズリーは好きでよく食べるのだが、この店のミューズリーはちょっと様子が違った。オーツ麦にかけたミルクの量がいつも私が食べるミューズリーより格段に少なく、全体がもっちりとしていたのだ。

「本来は、スプーンが立つぐらいがちょうどいいと言われているんです」と木村さんが教えてくれる。黄金色のハチミツがかかったミューズリーはねっとりしていて、デザートを食べているような満足感がある。

「ワールド・ブレックファスト・オールデイ」では、朝食以外にも期間限定スイーツなどを出している。スイスのデザートのメニューを見ていたら、日本でもよく知られたお菓子「メレンゲ」があった。メレンゲは、卵白に砂糖を加え泡立てたものをオーブンで焼いたお菓子。

マリー・アントワネットの好物だったと言われ、てっきり彼女の故郷オーストリアの発祥とばかり思っていたが、ベルン州の山間の村マイリンゲン発祥という説もあるらしい。

今や様々な形でお菓子に使われるメレンゲだが、スイスでは乳脂肪分が多いクリームをたっぷりつけて食べる。濃厚なクリームと一緒に食べるサクサクとしたメレンゲは、シンプルながら本格デザートの味だ。

「これもおもしろいんですよ」。最後に木村さんが薦めてくれたのは「アルプスのハーブ」を使ったスイスのハーブティー。今回のメニュー作りに協力してくれたスイス人が、「このお茶を出すといいと思う」とわざわざ故国から送ってもらったものだという。

メニューにミントベースのお茶とあったので、普通のミントティーを想像していたら、運ばれてきたのは想像より濃い緑色の液体。コップを口に近づけたとたんむせ返るような草の匂いが広がった。

東京の一角に、ぽっかりアルプスの麓の草原が現れたかのようだった。

(フリーライター メレンダ千春)

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