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育休中の復職ウオーミングアップ 「ママボノ」とは?

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日経DUAL

「ママボノ」という言葉をご存じですか? 職場復帰を目指す育児休業中などの女性が、NPO支援などの社会貢献活動をチームで行うプロジェクトのことです。全員が子育て中の女性、子ども同伴で参加できる、と書くと、ふんわりしたイメージのボランティア活動をイメージするかもしれません。しかしその実態は、緩やかでありながらも仕事のインターンシップに近い、プロフェッショナルな内容です。ぎゅっと詰まった期間の中で、メンバー同士が仕事や子育ての悩みを分かち合える「戦友」になれたという感想も聞かれるママボノとは? 「ママボノ2016」の内容を、経験者の声と共に紹介します。

ボランティア「プロボノ」のママ版

ママボノとは、本プログラムを主催する、認定NPO法人サービスグラントによる造語です。

サービスグラントは、ビジネスパーソンが職業上のスキルや専門的知識を、非営利団体の課題解決といった支援に活用するボランティア「プロボノ」活動を日本で最も早く取り入れ、活動している団体です。プロボノの語源は、「公共善のために」を意味するラテン語で、例えばアメリカでは、弁護士が経済的弱者のために無償で弁護活動を行うことを「プロボノ」と表現しています。

サービスグラントのプロボノ活動は、スキル登録制のボランティアです。例えば会社員事務職ならマーケッター、管理職ならプロジェクトマネジャー、アカウントディレクターなどとしてウェブサイト上にスキルを登録し、登録プロボノワーカーで編成されたチームでプロジェクトに参加します。筆者(フリーライター)はコピーライターとして、約10年間で6つのプロジェクトに参加してきました。

通常のプロボノ活動はメンバーも多様なため、活動が平日夜や休日に行われることが多くなります。そこで、育休などからの復帰を前にした女性が参加しやすいように特化した活動が、ママ限定のプロボノ=「ママボノ」というわけです。

ママボノは2013年に第1期の活動が始まり、2016年度の今回は第4期を迎えました。

約2カ月間、力を合わせて「成果物」を完成

ママボノは参加しやすい活動です。その理由は主に2つあります。

まず、期間と目的が決まっていること。2016年度の場合、10月下旬に顔合わせをし、12月上旬には成果を発表するという短期間です。どのような団体に対し、どのような支援を行うかは、サービスグラントの事務局が事前に審査・聞き取りを行い「マーケティング調査」「リーフレットのリニューアル」などのプロジェクト内容を設定していきます。ワーカーはあらかじめ、「2カ月間でこの団体にこの支援を行う」というゴールへのイメージを持って参加することができます。

これは大変重要なポイントです。一般的に、ボランティア活動を始めるきっかけは「何かしたいという気持ち」である場合が多いものですが、もしイメージしていた活動との差異があった場合などには、辞め時を自分で決めなければなりません。この判断は難しく、つらいものです。

ママボノのプロジェクト期間は、あえて物足りないくらい短く設定されており、もしその後も支援を続けたいという気持ちがあれば支援者として関わる、という選択肢がワーカー側にあります。これからずっと支援を続けたいと思える非営利団体との「出会いの場」にもなるわけです。

またチーム制を取っていることもポイントです。非営利団体には、ビジネスでは暗黙の了解である「利益を上げる」「ピラミッド型の命令系統」といったルールがない場合もあります。そうした事実に直面して初めて、ビジネスの暗黙知の便利さや、ありがたさに気が付くこともしばしばです。カルチャーショックを感じながらもチーム内で討論しながら、「原点に立ち返り、支援先にいかによりよい提案をするか」の道筋を決めていくのは貴重な経験です。

仕事の進め方のカルチャーショックは支援を受ける団体側も感じていることが多く、ディスカッションを積み重ねることで「ビジネスパーソンから得た発想を今後の運営に前向きに取り入れたい」と、お互いが満足する成果が生まれます。これはまさに、仕事で1つのプロジェクトを終えたときの達成感と同じです。

「育児脳」から仕事モードに戻れるか確認したかった

ここで、2016年度のママボノに初参加したママボノワーカーの声を聞いてみましょう。資生堂に勤務する江川恵美さんは2015年2月に長男を出産し、育児休業(最大3年間)を取得中です。ママボノを知ったのは世田谷区発行のメールマガジンでした。

「育休中にしかできないことを何かしたいと思っていたところ、子連れで参加できるということだったので興味を持ちました」。子どもを預けてまで何かするのはハードルが高いけど、一緒に連れていけるので気楽だったと語ります。

江川さんが産休・育休前に所属していたのは情報企画部(当時)。70人ほどの部署で担当するシステムの分野別に5~十数人のグループに分かれていました。

「産休直前には、海外、マーケティング、物流、人事・会計の各システムを担当する4グループと、プロジェクト管理、システム企画、インフラをサポートする3グループがありました。当時、私はプロジェクト管理業務担当で、部内承認会議の運営や議事進行をしていました。過去にはマーケティングと物流に関する社内システムの導入や運用に携わっていました」

具体的な業務としては、製品管理のシステムをウェブ化したり、全国の社員が使っている端末の設置状況をウェブ化したりして、改善を行うといった内容でした。

「職場に復帰するに当たり、『育児脳』になっていた自分が仕事モードに戻れるか確認しておきたいという気持ちがありました。また、過去に異業種交流の研究会に参加したことがあり、そのときとても楽しかったという思い出があったので、そんな経験がママボノに参加するきっかけにもなりました」

江川さんのチームが支援したのは、NPO法人ぷかぷか。横浜市で2008年から、障がいのある人たちが働くパン屋、カフェ、お総菜屋、アートスタジオの運営を行っている団体です。ママボノとしてのチームのミッションは、お店や商品の魅力のみならず、「障がいのある人たちと一緒に生きていくと社会が豊かになる」というメッセージを発信するための、ウェブサイトの改善提案です。

「ウェブサイトは、伝えたいことを次々と盛り込んだ結果、情報が整理されておらず分かりにくい状態になっていました。伝えたい内容が階層の奥深くに隠れてしまっていたり、発信すべき情報が書かれていなかったり。それをどう改善したらよいかを提案しました」

2016年10月25日、東京の全チームが助成元の日本財団が提供する会場に集まってキックオフミーティングを開き、顔合わせを行いました。その日に成果物の範囲を決め、チーム内でのグループ分けをして担当を決定。最終成果物は(1)ウェブサイト内のカテゴリの整理(2)ウェブサイト内のタイトル、キャッチコピーなどの言葉の表現(3)トップページデザイン(4)ウェブサイト更新のソフト(またはシステム)(5)ウェブサイトドメインの変更(6)外部サイトの活用です。江川さんは(1)と(6)を担当することになりました。育休前に会社で担当していた情報分析スキルや資料作成方法などが、ここで役立ったそうです。

チームで行った具体的な作業は次の通りです。ウェブサイトを隅々までチェックし、サイトマップを作成。それを元にカテゴリを整理して新しいホームページの階層案を作る。同時に、トップページデザインとタイトルやキャッチコピーを考え、システム環境や推奨ソフト、ドメインに関する調査を行う。また、調査していく中で外部のグルメサイトを活用することも有効と考え、参考情報として提案に含めることに決定。

11月1日には現地を見学し、団体のメンバーにも直接インタビューを実施。12月7日には全体報告会で成果発表とタイトな進行であるため、すべてを手際よく進める必要がありました。

「団体の方々から、障がい者や社会に対する思いを直接聞くのは貴重な経験でした。食材や製法に力を入れ、『障がい者の方が作っているから買ってあげる』ではなく『本当においしいから買う』とお客さんに思ってほしいと考えていることや、『健康な命を未来に引き継ぐ』というコンセプトが素敵だと感じました。店舗にもお邪魔したのですが、スタッフの皆さんもお店もとても魅力的で、パンやお総菜もおいしく、家の近くにあったら毎日通いたいくらいでした」と江川さん。

3つの視点で振り返る、ママボノの成果

江川さんに、3つの視点でママボノ経験を振り返ってもらいました。まず「ママボノ×プライベート」。

――育児とママボノの両立はいかがでしたか?

週2回の息子の習い事や外出の予定を入れていることが多く、昼間の作業はほとんどできませんでした。息子が起きている間はパソコンに向かえないので、寝かしつけた後の夜中に作業するのが少し大変でしたね。でも、チームメンバーとのやり取りや資料共有は、グループウエアのサイボウズを使ってストレスなくできたので、「育休から職場復帰を果たした後、自宅で仕事をするとしたらこんな感じだろうか? 在宅もありだな」という発見がありました。

ただ、実際に子どもがそばにいると仕事にならないのはご存じの通り。在宅勤務が実現しても、幼稚園なり保育園なり、結局どこかに預けることは変わらないと思います。

――「ママボノ×仲間」。活動を通して出会ったチームメンバーとの交流は?

近所のママ友とは仕事の話をすることはないので、ママボノでの出会いは新鮮で刺激的でした。皆さん、業種も違いますし、これまで職場で関わったことのない人たちで、それぞれの仕事の進め方や資料の作り方など、新たな発見もあり勉強になりました。

プロジェクト発表会が行われた12月7日、チームメンバー同士でメッセージを交換する時間がありました。感謝の気持ちや良かった点などを付箋に書いて交換するというものです。私は複数のメンバーから「冷静に判断して的確なコメントをしてくれた」「文章が上手」といったメッセージをもらって驚くとともに、とても嬉しかったです。

職場では、なかなかそういったフィードバックを受ける機会がありませんし、自分がチームの中でどういう存在なのかあまり確認できません。ママボノの短い期間の中でよかった点を発見してもらえるというのは、ある意味本質を見抜かれているというか……自信につながったと感じます。職場への復帰に向けても、前向きな気持ちになれました。

――「ママボノ×仕事スキル」。ご自分の仕事スキルにどんなふうに役立ちましたか?

今回、主にウェブサイトのカテゴリの整理を担当したのですが、過去に同じような業務をした経験があったので、作業は違和感なくスムーズに行えました。ママボノは短期間なので、いかに効率よく進めるかということを考え、完璧ではなく妥協点も見極める必要がありました。この辺りは、復帰後に役立つスキルになるのではないかと思います。

――これから「ママボノに参加したい」人へのアドバイスは?

特に準備は必要ないと思いますが、資料作りは自宅のパソコンを使うことを念頭に置いておいたほうがいいかもしれないですね。私の場合は、自宅のパソコンのエクセルやワードが、職場で使い慣れていたマイクロソフトのものではなかったので、少し作業に時間がかかってしまいました。また、プロジェクト期間がとても短いので、可能であればその間プライベートの予定はあまり入れないほうがよいでしょう。楽しくなってつい作業に没頭してしまうので(笑)、時間に余裕を持たせておくことをおすすめします。

「短期間で最大限の結果を残せた」が自信に

江川さんは2017年度中の職場復帰を目指していますが、保育園が決まり次第になるので今のところ未定とのこと。「ママボノで短期間で最大限の結果を残すということが実行できました。それは自負しています。この経験が生かせるよう頑張りたいです」と語ります。

江川さんはママボノ参加に際し、念のために勤務先の人事部に問い合わせたといいます。その返事は「社会貢献活動やコミュニティー活動については、個人の裁量に任せている」というもの。成果発表会などには人事部の担当者が足を運び、活動を熱心に見学していました。

「復帰に向けてキャリアを断絶させないことは、当社としても重要な課題と考えています。休業すると、仕事の経験や勘に不安があるという話も聞いています。正直、ママボノという名前からだけではどういった活動をしているのか、イメージが湧きませんでした。でも実際に内容を見ると、プロボノ活動(社会貢献活動)を休業中に行うことで、育休中社員の復帰に向けたウオーミングアップになるレベルの内容であると感じました。会社から離れている期間に外の世界に触れることは、経験や視野が広がるため、個人の成長にも繋がるのではないかと思います」(資生堂・人事部)

ママボノ体験で"仕事スイッチ"が入った後は、イベントやセミナーに参加する、短期留学するなどしてさらに育休を充実させ、復職に向けた準備をする人もいるそうです。

オリエンテーション、キックオフミーティング、成果提案。「ママボノ」の会場にはいつもエネルギーが溢れていました。それは、子どもたちの元気に、ママでありワーカーである女性たちの力強いポジティブなパワーが加わったものです。復職前のウォーミングアップによって自信を身に付けた女性たちが、それぞれの職場に復帰していくことに希望を感じます。

2017年度は「一度離職し、再就職検討中の女性」にも、ママボノ参加をさらに呼びかけていくそうです。参加申し込みは9月下旬締切の予定です。10月にオリエンテーションを行い、12月初旬には納品完了というスケジュールで進めていく予定だそうです。

そのころに育休を取得している可能性のある方や、再就職を考えている方は、ぜひ参加を検討してみてはいかがでしょうか?

(ライター 阿部祐子)

[日経DUAL 2017年4月12日付記事を再構成]

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