育休中の復職ウオーミングアップ 「ママボノ」とは?

日経DUAL

「団体の方々から、障がい者や社会に対する思いを直接聞くのは貴重な経験でした。食材や製法に力を入れ、『障がい者の方が作っているから買ってあげる』ではなく『本当においしいから買う』とお客さんに思ってほしいと考えていることや、『健康な命を未来に引き継ぐ』というコンセプトが素敵だと感じました。店舗にもお邪魔したのですが、スタッフの皆さんもお店もとても魅力的で、パンやお総菜もおいしく、家の近くにあったら毎日通いたいくらいでした」と江川さん。

3つの視点で振り返る、ママボノの成果

江川さんに、3つの視点でママボノ経験を振り返ってもらいました。まず「ママボノ×プライベート」。

――育児とママボノの両立はいかがでしたか?

週2回の息子の習い事や外出の予定を入れていることが多く、昼間の作業はほとんどできませんでした。息子が起きている間はパソコンに向かえないので、寝かしつけた後の夜中に作業するのが少し大変でしたね。でも、チームメンバーとのやり取りや資料共有は、グループウエアのサイボウズを使ってストレスなくできたので、「育休から職場復帰を果たした後、自宅で仕事をするとしたらこんな感じだろうか? 在宅もありだな」という発見がありました。

ただ、実際に子どもがそばにいると仕事にならないのはご存じの通り。在宅勤務が実現しても、幼稚園なり保育園なり、結局どこかに預けることは変わらないと思います。

――「ママボノ×仲間」。活動を通して出会ったチームメンバーとの交流は?

近所のママ友とは仕事の話をすることはないので、ママボノでの出会いは新鮮で刺激的でした。皆さん、業種も違いますし、これまで職場で関わったことのない人たちで、それぞれの仕事の進め方や資料の作り方など、新たな発見もあり勉強になりました。

プロジェクト発表会が行われた12月7日、チームメンバー同士でメッセージを交換する時間がありました。感謝の気持ちや良かった点などを付箋に書いて交換するというものです。私は複数のメンバーから「冷静に判断して的確なコメントをしてくれた」「文章が上手」といったメッセージをもらって驚くとともに、とても嬉しかったです。

職場では、なかなかそういったフィードバックを受ける機会がありませんし、自分がチームの中でどういう存在なのかあまり確認できません。ママボノの短い期間の中でよかった点を発見してもらえるというのは、ある意味本質を見抜かれているというか……自信につながったと感じます。職場への復帰に向けても、前向きな気持ちになれました。

――「ママボノ×仕事スキル」。ご自分の仕事スキルにどんなふうに役立ちましたか?

今回、主にウェブサイトのカテゴリの整理を担当したのですが、過去に同じような業務をした経験があったので、作業は違和感なくスムーズに行えました。ママボノは短期間なので、いかに効率よく進めるかということを考え、完璧ではなく妥協点も見極める必要がありました。この辺りは、復帰後に役立つスキルになるのではないかと思います。

――これから「ママボノに参加したい」人へのアドバイスは?

特に準備は必要ないと思いますが、資料作りは自宅のパソコンを使うことを念頭に置いておいたほうがいいかもしれないですね。私の場合は、自宅のパソコンのエクセルやワードが、職場で使い慣れていたマイクロソフトのものではなかったので、少し作業に時間がかかってしまいました。また、プロジェクト期間がとても短いので、可能であればその間プライベートの予定はあまり入れないほうがよいでしょう。楽しくなってつい作業に没頭してしまうので(笑)、時間に余裕を持たせておくことをおすすめします。

「短期間で最大限の結果を残せた」が自信に

江川さんは2017年度中の職場復帰を目指していますが、保育園が決まり次第になるので今のところ未定とのこと。「ママボノで短期間で最大限の結果を残すということが実行できました。それは自負しています。この経験が生かせるよう頑張りたいです」と語ります。

江川さんはママボノ参加に際し、念のために勤務先の人事部に問い合わせたといいます。その返事は「社会貢献活動やコミュニティー活動については、個人の裁量に任せている」というもの。成果発表会などには人事部の担当者が足を運び、活動を熱心に見学していました。

「復帰に向けてキャリアを断絶させないことは、当社としても重要な課題と考えています。休業すると、仕事の経験や勘に不安があるという話も聞いています。正直、ママボノという名前からだけではどういった活動をしているのか、イメージが湧きませんでした。でも実際に内容を見ると、プロボノ活動(社会貢献活動)を休業中に行うことで、育休中社員の復帰に向けたウオーミングアップになるレベルの内容であると感じました。会社から離れている期間に外の世界に触れることは、経験や視野が広がるため、個人の成長にも繋がるのではないかと思います」(資生堂・人事部)

ママボノ体験で“仕事スイッチ”が入った後は、イベントやセミナーに参加する、短期留学するなどしてさらに育休を充実させ、復職に向けた準備をする人もいるそうです。

オリエンテーション、キックオフミーティング、成果提案。「ママボノ」の会場にはいつもエネルギーが溢れていました。それは、子どもたちの元気に、ママでありワーカーである女性たちの力強いポジティブなパワーが加わったものです。復職前のウォーミングアップによって自信を身に付けた女性たちが、それぞれの職場に復帰していくことに希望を感じます。

2017年度は「一度離職し、再就職検討中の女性」にも、ママボノ参加をさらに呼びかけていくそうです。参加申し込みは9月下旬締切の予定です。10月にオリエンテーションを行い、12月初旬には納品完了というスケジュールで進めていく予定だそうです。

そのころに育休を取得している可能性のある方や、再就職を考えている方は、ぜひ参加を検討してみてはいかがでしょうか?

(ライター 阿部祐子)

[日経DUAL 2017年4月12日付記事を再構成]