世界的な研究者が次々飛び出している武蔵。東大以外の大学に進み、大きな研究成果を上げた卒業生も少なくない。ある武蔵OBは「中学の頃から好きな研究にはまる同級生もいたが、数学は得意でも、国語はダメという場合もある。それじゃ東大は受からない。ほかの進学校なら塾に行ってフォローするんでしょうが、そんな時間はムダだと、別の大学でいいやという人もいた」という。

武蔵の校舎は深い緑に囲まれている

武蔵の17年の進学実績は東大32人のほか、一橋大学10人、東工大8人など国公立大学は80人。ちなみに武蔵は合格実績を公表しないため、いずれも進学者数だ。1980年代や90年代は、東大合格ベストテンの常連校だったため、当時と比較するとさびしい数字だ。

ただ、開成と麻布の定員はそれぞれ400人、300人とほぼ倍の規模だ。梶取校長は「単純に比較されるととつらいですが、保護者の方もやはり東大合格者の数に目がゆく。以前の武蔵は自由放任でしたが、時代の流れに逆らえなくなった。今は受験に対しての面倒見もよくなりました」という。

事務室の前には大手進学塾のパンフレットも置かれている。ここ数年は業者の全国模試を校内でも実施している。「当初は武蔵らしくないと反発する生徒もいましたが、今は素直に受け入れる生徒が増えましたね」と梶取校長は苦笑いする。

少数教育の武蔵。国語ではゼミ形式を導入し、数学など主要科目では人数を絞って教師と生徒がやり取りする双方向型の授業を実践している。群馬県などの校外の施設も活用し、体験型の学習にも力を入れている。中学3年生は、ドイツ、フランス、韓国、中国語から1つの第2外国語が必修。高1からは自由選択だ。以前から英国やドイツ、フランスなどの提携校との生徒交流も活発だ。

「確かに東大はいい大学だけど、海外を含め親元を離れた大学にも行ってほしい。ただ、進学実績をもっと上げていかないといけない。武蔵の授業レベルを維持するためには、優秀な生徒に入学してもらわないと困りますから」という。「いいオタク」を輩出してきた武蔵。異色校長による復活の序曲が響き始めている。

(代慶達也)

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