年金・老後

定年楽園への扉

夢の早期リタイア 果たして充実感はあるのか 経済コラムニスト 大江英樹

2017/6/29

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 会社勤めをしている人の中には定年を待たずにできるだけ早期にリタイアしたいと考える人が多くいます。私の知り合いの会社員も「投資で十分な資産をつくり、早期に仕事から引退したい」と思っているようです。米国でも40歳代までは馬車馬のように働いて早期リタイアし、フロリダあたりに住むという夢を持つ人は大勢います。

 とはいえ、現実には投資で失敗したりして、うまくいく人はなかなかいないと思います。それより何より、早期リタイアは本当に幸せなのでしょうか? 確かに会社員の人たちにとって仕事は必ずしも楽しいものではありません。私も会社員時代は長年、日曜日にNHKの大河ドラマが終わると、月曜からの仕事が思い出されて実に憂鬱な気分になったものです。

■会社員はストレスがのしかかる

 会社員の本質を考えればこれは当たり前のことです。なぜなら、組織で動いているからです。組織の中では自分の意見が必ずしも通るとは限りません。いや、むしろそうではない場合の方が圧倒的に多いでしょう。会社は経営陣が方針を決めますので、自分の意見とは異なる意思決定がなされる場合もあるでしょう。一般従業員はそれに従わなければなりません。

 意に反することが続くと、当然ながらストレスが重くのしかかります。でも、その代償として給料をもらい、収入は安定しています。会社員とはそういうものなのです。だからお金をたくさん稼いでためて、早く引退したいという気持ちは痛いほどわかります。いわば仕事は苦行だからです。

 一方、自営業やフリーランスの人たちは、元気なうちは働き続けたいという人がほとんどです。経済的な理由はあるにせよ、それほど悲壮感はありません。私も現在はフリーランスで働いていますから気持ちは理解できます。仕事が必ずしも苦行というわけではないからです。

 自営業やフリーランスの人たちは、誰から指示されるわけでも命令されるわけでもなく、自分のやりたい仕事を自分のペースでやれます。もちろん、資金繰りの苦労や、仕事がなくなってしまう不安はありますから、会社員とはまた違った苦労はあります。しかしながら、両方を体験した私からいわせてもらうと、「自営業とはこんなにも自由で楽しく仕事ができるものだったのか」という印象です。

■働き続けることで社会とかかわる

 私は40歳代の頃は、何とか早期リタイアができないものかと考えていましたが、実際に定年が近づいてくると、一切働かないで、のんびりすることが「果たして充実した人生なのだろうか」という疑問を持つようになりました。働くと経済的に豊かになるというのは事実ですが、それだけではなく、仕事を続けることで社会とのつながりを持ち続けていたいという気持ちが強くなってきたのです。

 仕事とは人のために何かをしてあげることだと私は考えています。報酬は、いわば感謝のしるしとしてもらえるものでしょう。何歳になっても人の役に立つことを仕事として続けていくことは素晴らしいことです。現役時代のようにバリバリ働いて稼ぐ必要はありませんが、自分の体力と時間に応じて、社会とかかわる道もあるのです。

 仮に可能だとしても、会社員が早期リタイアしてしまうことはもったいないことです。できれば自営業やフリーランスの人たちのように、働き続けるべきではないでしょうか。

「定年楽園への扉」は隔週木曜更新です。次回は7月13日付の予定です。
大江英樹
 野村証券で確定拠出年金加入者40万人以上の投資教育に携わる。退職後の2012年にオフィス・リベルタスを設立。著書に「定年男子 定年女子 45歳から始める「金持ち老後」入門!」(共著、日経BP)など。http://www.officelibertas.co.jp/

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