年金・老後

定年楽園への扉

豊かな老後 会社員は脱「バットマン」から 経済コラムニスト 大江英樹

2017/6/15

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 私は経済コラムニストとして活動していますが、「60歳以降の働き方や生き方」について、企業内の50歳代の社員に対してお話をする機会があります。その際は「会社員なら定年後は年金や退職金もあるのだから、生活に困ることはない。現役時代にはできなかったことに思い切って挑戦すべきだ」などと述べています。

 うれしいのは私の話を聞いて「元気になった」とか「自分も何か新しいことに挑戦してみようと思った」とおっしゃっていただくことです。ところが、一方では「なかなか納得できない」とか「そんなことできるわけがない」という表情をされる方もいらっしゃいます。そういう方のご意見をうかがうと、だいたい次のようなコメントが返ってきます。

■会社員は言い訳を連発しがち

 「大江さんのいってることはよくわかりますよ。しかし、そうはいってもなあ……」。共通するのはおおよそ以下の接続詞を使うことです。「だけど」「しかし」「でも」――。いわゆる英語のButです。私はこういう人たちを「バットマン」と呼ぶことにしています。

 実をいうと私も会社員時代はバットマンでした。会社員がこうした反応をするのはある意味当然なのです。長く仕事をしていると自分が何か新しいことを考えついたり、それを上に提案したりすることはよくあります。しかしながら多くの場合、それは否定されることが多いのです。

 もちろん会社にもよるでしょうが、組織というのは本質的に自己防衛的な体質を持っている部分が多く、何か物事を変えるということに対しては慎重かつ保守的になりがちです。会社員としての生活をずっと続けていけば、新しいことに一歩踏み出そうとは思わなくなり、言い訳としてButを連発することになってしまいます。

 ただし、定年後に新しい仕事や生活に踏み出すのは、会社員時代に新しい企画や戦略を考えるのとは事情が大きく違います。仮にうまくいかなくても誰かに迷惑がかかるわけではなく、その責任を取らなければならないというわけではありません。新たに借金をして事業をするとか、人を雇うとかすれば大きなリスクですが、そういうやり方さえしなければ、それほど深刻な話ではないのです。

■長い老後だからこそ新しい人生を

 冒頭でも述べましたが、会社員なら年金や退職金があるので、自分がやりたいと思っていることをやって、少しでもお小遣いが稼げればいいというやり方でも一向にかまわないのです。自分でコントロールできる範囲内であれば、従来の延長線上で考えるのではなく、まったく新しいことにチャレンジしてみることはとても楽しいことです。退職した後には20年とか30年の時間があるのですから、新たな人生に踏み出すまたとないチャンスです。

 そのためにも、いつまでも現役時代の癖でButを連発するのはやめましょう。50歳代からゆっくりとギアチェンジをしながら準備していくことで、ワクワクする老後を送れるのではないかと思います。言い訳ばかりでは仕事も面白くないでしょうし、何よりお金も稼げないのではないでしょうか。そんな人には豊かな老後はやって来ません。

「定年楽園への扉」は隔週木曜更新です。次回は6月29日付の予定です。
大江英樹
 野村証券で確定拠出年金加入者40万人以上の投資教育に携わる。退職後の2012年にオフィス・リベルタスを設立。著書に「定年男子 定年女子 45歳から始める「金持ち老後」入門!」(共著、日経BP)など。http://www.officelibertas.co.jp/

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