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企業飛び出し、来れスポーツ界へ ラグビーW杯が公募 「観客動員200万人」の戦略立案と実行担う

スポーツイノベイターズOnline

2017/6/15

19年ラグビーW杯日本大会では200万人の観客動員を目指している(写真は15年イングランド大会のパブリックビューイングに詰めかけた観客=東京都港区の秩父宮ラグビー場)

 ラグビーワールドカップ(W杯)日本大会の開幕まで2年あまり。成否を左右するのが観戦チケットの売れ行きだ。公益財団法人のラグビーW杯組織委員会はこのほど、販売戦略を担う人材の公募を始めた。スポーツに関わった経験ではなく、ビジネスの最前線で磨いたマーケティングなどの能力を求めている。ビジネス界とスポーツ界の間で人材交流が活発になれば、その後の日本のスポーツイベントに追い風となりそうだ。

 今回公募しているのは、チケット販売やマーケティングを統括するマーケティング局のトップ(局長)をはじめとする4人と、経営戦略、人材採用の担当者それぞれ1人の合計6人。募集は転職サイト「ビズリーチ」を通じて、6月20日まで。出向者ではなく正職員として採用し、2019年12月まで雇用する。

 チケットの売れ行きは大会の収益に直結するため、非常に重要だ。日本大会の販売目標は48試合で合計200万枚。ちなみにラグビーの母国イングランドで開かれた15年大会のチケット販売は247万枚、チケット収入は2億5000万ポンド(約355億円)だった。世界一の代表チーム「オールブラックス」を抱えるニュージーランドの11年大会でもチケット販売は135万枚だった。日本大会の目標がいかに高いかが分かる。

 日本では19年のラグビーW杯の後、20年の東京五輪・パラリンピック、21年の関西ワールドマスターズゲームズと大きなスポーツイベントが続く。ラグビーW杯日本大会の組織委が外部から優秀な経営人材を集められるかどうかは、「ポスト2020」の日本のスポーツ界を占う意味で大きなカギを握る。

■間口を広げて「プロ人材」を採用

 組織委で人材募集の責任者を務める中田宙志・企画局兼総務局主任に、狙いや期待する人材などについて聞いた。

三井物産からラグビーW杯組織委に転じた中田宙志氏

 ――今回の公募の狙いを教えてください。

 「まだ確定はしていませんが、試合の組み合わせが5月に決まったことを受け、18年以降にチケットの販売を始めます。それに向けてセールスやマーケティングの「プロ人材」を採用し、観客動員の取り組みを強化することが目的です。海外では、一般のビジネスの世界からスポーツビジネスへという人材の流れが当たり前になっています。その逆もしかりです。あるスポーツの国際競技団体から、別のスポーツの国際競技団体に転職することもよくあります。そういう人材の流れが生まれることは、日本のスポーツ界にとってもプラスになるはずです」

 ――現在の組織委の体制は。

 「試合会場の運営を担う『ベニューチーム』、開催都市やその周辺地域を盛り上げる『シティーオペレーション』、参加チームの宿泊や警備、ロジスティックスを担う『トーナメントサービス』、実際の試合を運営する『ラグビーサービス』、経営や財務などを担う『経営企画』で構成されています。そこに今回公募する『チケッティング・マーケティング』が加わります」

 「現在の職員は約100人で、うち20人弱が正職員、残り80人強が開催自治体や国、企業からの出向者です。ピークには200人以上の体制になる予定で、関連企業や自治体などの多くの関係者と一緒に大会をつくり上げていくことになります」

 ――企業からの出向ではなく、正職員を採用するのはなぜですか。

 「もちろん、企業などからの出向者もプロ人材です。ただ、これまでの出向者の多くはラグビーのトップリーグのチームを持つ企業や広告会社の社員でした。今回は対象を広げて、幅広い業界の人材から適切な人を採用したいと考えました」

 「200万枚というチケット販売数は、プロ野球の北海道日本ハムファイターズが16年に集めた年間観客動員数とほぼ同等。これを7週間48試合の大会で実現しようということなので、単一スポーツの大会としてはかなり大きなチャレンジです」

 ――どんな人材を求めていますか。

 「新しいマーケットにチャレンジしたい、ラグビーをはじめとするスポーツビジネスの環境を良くしたいという志のある人材の応募に期待しています」

 「もちろん、理想はスポーツとマーケティングの両方に秀でた人物です。でもスポーツという分野に限ってしまうと人材の母数が極めて小さくなってしまう。今回は、マーケティングに携わった経験を持つ様々な業種のプロ人材を求めています。特にマーケティング局長については、実際に事業のマネジメントを手掛けて、ビジネスの第一線で活躍してきた人物に来ていただきたいですね」

 ――中田さん自身、大手商社を辞めて組織委に転職したそうですね。ご自身の経験から、応募のメリットをどう考えていますか。

 「自分自身は、とてもハッピーです。第1の理由として、学生時代にラグビーをやっていたこともあり、自分が好きなことを仕事にできているということ。第2に、ラグビーW杯や東京五輪・パラリンピックなどのビッグイベントを控える日本では、スポーツビジネス全体が盛り上がろうとしているのでマーケット環境がいい。仕事の中で高揚感を得られます。明治維新に立ち会っているような気分なのではないかと」

 「第3には、ラグビーというスポーツ自体が生まれ変わろうとしていることです。長い歴史があるスポーツですが、サッカーなどのように成熟した産業ではなく、発展途上でこれからさらに良くなろうとしています」

 ――それは日本だけではなく、世界でということですか。

 「ええ。それが4つ目の理由なのですが、今回の日本大会に対する世界の関心はとても高いのです。ラグビーは世界で約600万人の競技人口を抱えるスポーツです。このうちアジアの競技人口は60万人で、日本は10万人とアジアでは最大です。競技力も高い。ただ、世界の人口構成を考えると、70億人のうち6割がアジアにいるにもかかわらず、ラグビーの競技人口では10%しか占めていません。そうした中でアジアで初めてW杯を開催する。日本大会は、ラグビー普及のグローバル戦略で大きな位置を占めているわけです」

 ――実際のところ、スポーツビジネスは能力を磨く場としてどうですか。

 「スポーツビジネスは、ステークホルダー(利害関係者)が多い。例えばラグビーW杯では、国際競技団体のワールドラグビー、参加20カ国のチームや競技団体、開催都市やキャンプ地などの自治体、政府、関連の民間企業やスポンサー企業など多様です。プロジェクトの目標も、チケット販売による収益確保だけでなく、人々の気持ちに訴えかけて大会を楽しんでもらうことや、開催自治体を盛り上げること、大会のレガシーを残すことなどたくさんあります。これらをまとめ上げるには多くの困難がありますが、それだけにやりがいも大きいです」

中田宙志
 1985年生まれ。東京工大を卒業後、2009年に三井物産に入社。豪州や中南米の発電事業などに携わる。15年6月に退職し、ラグビーW杯組織委に転身。プロジェクトマネジメント業務と採用・人事戦略立案を担当している

(日経テクノロジーオンライン 高橋史忠)

[スポーツイノベイターズOnline 2017年6月5日付の記事を再構成]

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