日経Gooday

正解は、(1)ホント です。

ミドル以上のビジネスパーソンなら、健康診断のたびに「肝機能」の欄をおそるおそる眺めている人も多いでしょう。気をつけようと思っても、なかなかコントロールしづらいのが食生活とアルコール。しかし、肝臓はいたわらないと、肝硬変や肝臓がんリスクが心配です。

コーヒーは、そんなビジネスパーソンの不安解消に一役買ってくれます。コーヒーは肝機能障害はもちろん、痛風、糖尿病というビジネスパーソンを悩ます生活習慣病にも効果が期待できることが明らかになっています。

生活習慣病とがんの予防を専門に研究してきた国立健康・栄養研究所所長の古野純典さんは、1980年代後半から、自衛官の男性を対象にした肝機能の数値などを調査しており、その中で「コーヒーを飲んでいる人は肝機能検査の数値がいい」という傾向を確認しています。

アルコールを摂取するとγ-GTPの値は上昇する。その際、コーヒーをほとんど飲まない人に比べて、毎日コーヒーを飲んでいる人のγ-GTP値の上昇率は低くなる傾向が確認できた(自衛官健康調査1986-1992年、Am J Epidemiol. 1994;139:723-7)

「2500名の自衛官のデータをまとめて解析した結果、ビール2本分程度のアルコールを摂取した人のγ-GTPの値は、コーヒーをほとんど飲まない人よりも毎日飲む人のほうが平均で10以上も低いことがわかりました(グラフ参照)。γ-GTPは、肝臓の状態を判断する指標の一つで、アルコールを飲んだときに上がります。つまり、『アルコールにより肝機能が悪くなるのを、コーヒーが抑える』わけです」(古野さん)

1992年には米国の研究者であるアーサー・クラツキー氏らによって「コーヒーを飲む量が多いほど、アルコール摂取による肝硬変リスクが下がる」というコホート研究が発表されています。同氏らは、その後も12万5000人を対象に22年間追跡する大規模研究によって、「毎日4杯以上コーヒーを飲む人は全く飲まない人に対してアルコール性肝硬変の発症率が5分の1になる」という報告を2006年に行っています。

カギを握るのが、ポリフェノールの一種「クロロゲン酸」

コーヒーは、γ-GTPだけでなく、ALT、AST(いずれも肝臓の状態を判断する基本的な指標)の値についても効果があります。

「(コーヒーの摂取により)ALT、ASTも改善します。2000年代に、福岡市東区の住民男女を対象に、コーヒー飲用とALT、AST、γ-GTPという肝機能数値の関係を調べたところ、ALT、AST、γ-GTPの3つの数値が、コーヒーの摂取量が多くなるほど低くなる傾向が確認できました」(古野さん)

コーヒーの摂取量が多くなると、ALT、AST、γ-GTPの3つの数値ともに低くなる傾向が確認された(九州大学福岡コホート研究・基礎調査2004-2007年、Scand J Chin Lab Inv 2010;70:171-9)

「『コーヒーがアルコール飲用による肝機能低下を抑える』という報告は、1980年代後半以降、15年ほどの間でノルウェーやイタリア、フィンランド、米国などからも多数発表されています。コーヒーが肝機能にいい効果を及ぼすのは間違いないでしょう」(古野さん)

なぜコーヒーは肝臓にいいのでしょうか。そのカギを握るのが、コーヒーに豊富に含まれるポリフェノールの一種「クロロゲン酸」です。「クロロゲン酸には強い抗酸化作用があります。これが肝機能にいい影響を与えるのでしょう。実際、動物にクロロゲン酸を投与した研究報告も非常に多くあり、効果が確認されています」(古野さん)

[日経Gooday 2017年5月15日付記事を再構成]

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