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「私は会社で塩漬け」 両立支援、就労継続止まり ダイバーシティ進化論(水無田気流)

2017/6/10 日本経済新聞 朝刊

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 産休・育休からの復職後、会社の「配慮」により仕事が補助的な業務に転化したという総合職の女性が、「私は会社で塩漬け」ともらすのを聞いたことがある。同様のことは、ケアワークを抱え込んだ男性にも起きうる。妻の入院で幼い子どもの世話を背負い込んだ、老親の介護が必要になったなどの理由から異動や時短勤務を余儀なくされ、「出世コース」から外された男性も珍しくはない。この国でケアワークと就労を両立するためには、生産性の高い仕事は諦めなければならないのだろうか。

 厚生労働省「雇用均等基本調査」(2014年度)の企業調査で、「女性の活躍を推進する上での取り組みとして必要と考えていること」(複数回答)をみると、「女性の継続就業に関する支援」とする企業割合が67.3%と最も高い。「就労継続支援」は大企業ほど重視する傾向があり、従業員5000人以上では90%が必要と考えている。

 同調査の事業所調査によれば、育児のための短時間勤務制度などがある事業所は61.3%だが、時短勤務はいわゆる「バリキャリ」志向の女性には悩ましい問題だ。ジャーナリストの中野円佳氏は学会誌「女性学」で、仕事と育児の「両立支援」が、男女の「均等推進」にはつながっていない問題や、当の女性たちが抱える葛藤を指摘。時短を利用すればこれまでのような「戦力」としては認められず、「マミートラック」に乗せられてしまう。利用しなければ、子どもへの後ろめたさにさいなまれる。

 背景には、女性活躍の取り組みが就労継続中心で、生産性の高い働き方と出産・育児とが実質的には両立しがたい現状があげられる。あまりに就労継続に傾いた女性活躍推進の在り方が、マミートラック層の増加による「飽和状態」を生み、同僚への負担増のようなゆがみをもたらしている点も中野氏は指摘する。

 生産年齢人口の急減が見込まれるこの国では、女性が就労継続はできても生産性が高まらないという現状を打破せねばならない。鍵を握るのは、女性以上に管理職の意識改革や人材育成の機会均等だが、先述の調査では、「中間管理職や現場の管理職の男性に対する女性の活躍の必要性についての理解促進」や「人材育成の機会を男女平等に与えること」が必要と回答した企業は3割前後にとどまる。「女性活躍」観自体の改変が求められている。

水無田気流
 1970年生まれ。詩人。中原中也賞を受賞。「『居場所』のない男、『時間』がない女」(日本経済新聞出版社)を執筆し社会学者としても活躍。1児の母。

[日本経済新聞朝刊2017年6月5日付]

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