教育現場のパラリンピック 子供にどう魅力を伝えるかマセソン美季さんのパラフレーズ

パラリンピック教育と聞いて、何を想像するだろうか。東京都を皮切りに国も本腰を入れているが、競技体験や選手による講演などが一般的だ。ただ、今は依頼が増え、選手が全てのリクエストに応じることができていない。選手抜きで現場の先生が実施を求められても、「知らない、用具がない、教えられない」のないないづくしと聞く。

選手や競技団体スタッフから生の声を聞くことができれば一番いい。しかし、関係者がいなければできないという考え方は払拭してほしい。先生だけでもパラ教育ができる教材として、国際パラリンピック委員会(IPC)がこのほど開発したのが「I'm POSSIBLE」だ。

「不可能(Impossible)」と思えたことも、考え方を変えたり、少し工夫することで何でもできるようになる。そんなパラリンピック選手が体現しているメッセージを伝えながら、大会と競技を学び、パラリンピックムーブメントの推進や大会機運の醸成を促す教材だ。

日本版は日本の教育現場の事情も反映させたもの。全国すべての国公私立小学校、特別支援学校と各地の教育委員会に教材セットを無料配布した。座学と体験学習の計4時間分の授業構成で、パラリンピックの魅力をクイズ形式で学んだり、競技を体験したりできる内容だ。

先生が授業で使えるスライドや動画、配布資料など必要なものがセットに含まれている。映像装置がない教室でも、スライド代わりに使えるA3サイズの紙芝居も入っている。

5月に埼玉県内の小学校であった、この教材を使った公開授業。ゴールボールを体験した小学校5年生が「目が見えない人と球技をするのは無理と思っていたけど、僕が目を隠すだけで一緒にできた。簡単なことだった。僕らは目をつぶっただけで不安になったのに、パラリンピックの選手はすごい」と話していたのが印象的だった。

また、見学した保護者が「子どもだけに学ばせるのはもったいない。親の私たちも知りたいことばかり」と言っていた。小学生向けの教材が、大人も感化する。親の参観日に授業をすれば教育効果は倍増するだろう。

マセソン美季
1973年生まれ。大学1年時に交通事故で車いす生活に。98年長野パラリンピックのアイススレッジスピードレースで金メダル3個、銀メダル1個を獲得。カナダのアイススレッジホッケー選手と結婚し、カナダ在住。2016年から日本財団パラリンピックサポートセンター勤務。

〔日本経済新聞朝刊2017年6月8日付〕