スマホでナビ 最新地図に渋滞情報、弱点はトンネル
日常生活になくてはならないスマートフォン。これを自動車内で安全に使うための方法を、前回「音楽、ナビ…車でスマホ 安全・快適支える3アイテム」でご紹介した。
スマホを車内で安全に使うことができたら、活用はさらに広がる。スマホで使いたい機能といえば、やはり現在地の把握、そしてナビゲーションだろう。そこで今回はスマホ用の地図アプリ、ナビアプリの特性を理解し、活用の仕方を歴史を振り返りながら紹介していく。
最初のカーナビは1980年代に登場
まずナビゲーションの歴史をひもといてみよう。
1981年にホンダから登場したのが「エレクトロジャイロケータ」、世界初のデジタルマップである。
これは紙の地図をベースに自車の位置をガスレートセンサーというジャイロによって追跡、表示させるというものだった。ジャイロのみの自車位置特定は誤差が蓄積されるために、だんだんと道から外れていくという問題があった。
その後自車位置が絶対座標で特定できるGPSが急速に普及していく。誤差が蓄積するジャイロよりも自車位置特定が安定するGPSカーナビだったが、いくつか問題点があった。
・ビルの陰や高架下、トンネル内ではGPS電波を受信できず自車位置がずれる
・誤差が100m前後と大きく、戦争が起きるとさらに誤差が拡大する(と確証はないが一般に言われている)
そのため道なき道を走る、海の上を走っているといった問題は依然解決されないままだった。
その後コンピュータ処理能力の高速化、記憶媒体の大容量化により地図データは詳細化、ルート探索を行い最短ルートと予想到着時間の表示、右左折の指示といったナビゲーションが可能となった。しかし渋滞を考慮しないため、予想到着時間は不確かでナビは高い買い物のわりにまだまだ信頼できないものだった。
プローブカーによるリアルタイム渋滞情報
その後道路交通情報通信システム(VICS)の渋滞情報を利用することで、渋滞を考慮したルート探索、ナビゲーションが可能となった。
2000年代、通信ナビが登場する。通信機能によりリアルタイムに渋滞情報を取得するほか、地図データを自動的に更新することによって、ナビゲーションの正確さが大幅に上がった。これが現在まで続いている。
またデータを取得するだけでなく、実際の走行データをセンターに送信、それを次に走る車両に提供する、きめの細かな渋滞情報を可能とした。実際の走行車両を探針(プローブ)として使用するため、これをプローブカーと呼ぶ。
また蓄積されたデータはビッグデータとして解析され、時間、曜日や季節や天候などから渋滞発生の未来予測まで行うことができる。
専用ナビに遜色ないスマホナビ
スマホは基本機能として通信機能、GPS、ジャイロセンサーを内蔵している。スマホナビソフトはこれらの機能を使うことで専用ナビに遜色のない機能を提供する。オンラインで動作することが前提のため、渋滞情報取得や最新地図に特に強い。
代表的なナビアプリを4つ紹介する。
グーグルが提供している地図アプリだがVICS渋滞情報とスマホを使ったプローブカーによる渋滞情報をリアルタイムに表示、渋滞を加味して到着時間を予測、ナビゲーションできる。
グーグルは検索技術が高く、目的地をセットするのが容易である。一方でナビゲーションについては多少甘いところがあり、比較的大通りを中心としたルート案内をする印象だ。
ナビ音声は適切な箇所で音声案内をしてくれるため、例えばオートバイなどで画面が見られない場合でも音声に注意していれば曲がるところを逃すといったこともなく、平均的な使い勝手といっていいだろう。なにより無料であり、Androidでは標準アプリとなっているので不自由がない。最近ではAndroid Wearのスマートウォッチにも対応しており、さらに便利となっている。
後発ながらもナビゲーション機能を含むフル機能を無料で使えることから、人気となっているのがYahoo! カーナビだ。JARTICとプローブで得られた渋滞情報も無料提供、ナビゲーションも見やすい。
またハンドルに装着する専用のリモコンがあり、それには拡大縮小、音声認識のボタンを装備する。これを使えば専用ナビのような使い心地が得られるのも嬉しい。
世界初のデジタルマップを開発したホンダが提供しているスマホナビ。VICS渋滞情報だけではなく、ホンダ車が蓄積したビッグデータを使った渋滞予測データを使った渋滞回避ルートの案内、正確性の高い予想到着時刻、そして単純な最速ルートだけではなく、料金とのバランスを考えたスマート、無料での最速、ETC割引を生かしたもの、省燃費、一般道を使った最速などきめ細かな条件設定が特徴だ。車種切り替えで軽自動車と普通自動車を選べ、正確な高速道路料金表示が可能。
ホンダは二輪メーカーでもあるので二輪での使用もサポートしており、経路上で雨がふりそうな場合にカッパアラームがでるなど、降雨情報の提供、通行止め情報など事故防止への取り組みも充実している。
ただしこの充実したナビゲーション機能は有料であること、そして目的地検索で曖昧な検索キーワードでは目的地が出てこないことが惜しい点である。また、ホンダ車のユーザーでないと使えないのが残念なところだ。
ナビタイムはオリジナルのルート検索技術をもとに古くからナビゲーションや乗り換え案内といったアプリ、サービスを提供してきたナビゲーションの専業メーカーだ。スマホナビも車載ナビと同等の性能を持たせ、きめ細やかな機能が売りである。通信圏外でもローカルに保存した地図データによりナビゲーションが途切れない、マイカーの車高や車幅に対応したルート検索などかゆいところに手が届くアプリとなっている。
また取り締まり情報表示もあり、安全運転の喚起にも役立つ機能が備わっている。有料アプリにも関わらずカスタマー評価が5点中4.5点(iPhone)、4点(Android)と高評価なのがその実力を表しているといえるだろう(いずれも2017年5月下旬時点)。
トンネルの先の分岐は案内できない
基本的にはスマホナビはGPS頼みである。スマホのジャイロセンサーからの情報を併用するアプリもあるが、精度はあまり期待できないのが現状だ。
そのため首都高速中央環状線(C2)や海ほたるから川崎側の東京湾アクアラインでは現在位置をロストしてしまい、海ほたるからトンネルに入った先の分岐では、的確なタイミングで案内できないことがある。これは汎用ハードウエアゆえの制限であることを十分に理解しておくことが必要だ。
あくまでもナビゲーションは参考程度で最終的にはハンドルを握るドライバーの判断で、安全にドライブしていくことを心がけてほしい。スマホナビはまず自分の生活圏、通勤やドライブで実際に使い、事足りるか否かを判断、高機能かつ正確なものが必要な場合は車載ナビシステムの装着を検討するのがオススメだ。
なお筆者はここ数年インターナビ・ポケットを愛用、トンネル内分岐はよく注意することで事足りている。正確性の高い渋滞予測、回避ルート案内は本当に満足のいく出来栄えだと実感している。ぜひ自分にあったスマホナビを見つけ、安全に活用してほしい。
(ライター 野間恒毅)
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