東京名物「ひよ子サブレー」 実は博多出身?
せんべい(7)
せんべい。ちょっと変化球から。
なにっ、平仮名ばかりで読みづらいと。漢字で書くと煎餅と煎餅でなおさら区別がつかない。仮に前者を煎餅B、後者を煎餅Pと書くと米で作るのが煎餅B、小麦粉で作るのが煎餅Pだと小学校のころに教わった。遠足のバスガイドさんが言っていたから間違いはない。
例えば博多の二○加せんぺい、長崎の九十九島せんぺい、そういえば下関の亀の甲煎餅もジモPの発音はPだぞ。これって九州山口地方に限ったことなんでしょうか?(てっぺい@源氏名はけっして名乗らぬ下関育ち@でもペンネームでお願いねさん)
説明しよう。博多お土産の定番は「二○加(にわか)せんぺい」であって「せんべい」ではない。佐世保銘菓「九十九島せんぺい」も「せんべい」ではない。「べ」と「ぺ」の違いである。
テレビ、ラジオのコマーシャルでもはっきりと「せんぺい」と言っている。私もそう聴いて育ったし、そもそも商品にそう印刷してある。
せんぺいと発音する地域は九州だけかもしれない。
九十九島せんぺいは長崎県の多島海「九十九島」に題をとったもので、小麦粉製。六角形をしていて甘い。ピーナッツ入り。
上京した福岡県人が、何を血迷ったか東京名物として「ひよ子サブレー」を持ってきたことがあった。当然、福岡在住の同窓生たちはけちょんけちょんに東京かぶれをけなしたことであった。ひよ子は、福岡のお菓子ですばい(もと博多、もとい、福岡市民、今は久留米人ですたいさん)
東京駅でも、あたかも東京銘菓のごとく売られている「ひよ子」。別に東京銘菓であってもいいのだが、福岡へのお土産には必ずしも適さないかもしれない。理由は上記メールの如く、このお菓子は福岡生まれの福岡育ちだから。東京で活躍しているのは以前に移住した分家。
久留米が出たついでに宣伝しちゃお。
久留米やきとり学会の豆津橋さんから「筑後(ちっご)うどん」の6人前詰め合わせ(1000円)をいただいた。筑後うどん振興会がお土産用に開発したもので「ねばりゴシの麺と、うまいだし」というキャッチフレーズがついている。
ベティー隊員 早速、お相伴にあずかりました。説明通りにじっくりゆでてじっくりだしで煮て食べたところ、適度にもちもちしておいしかったです。でも「筑後うどん」という名前から腰のないふわふわのうどんを期待しただけに、やや「あれれ?」感もありました。
私が勝手に提唱した「弱腰うどん」はついに採用されることなく終わったようである。でもおいしそう。九州以外では「丸天」は手に入りにくいだろうから、スーパーで売っている薩摩揚げで代用されるといいであろう。ネギは青いのにしてね。白はNG。
おっと、九州関連のメールがまだあった。
ぬれせんというのは米せんべいで作るものなので、小麦粉せんべいが優勢な西日本、特に九州になかったとしても不思議はない。
二○加せんぺいも九十九島せんぺいも小麦粉製品であり、もし水分を含ませて濡らしたらぐずぐずになって崩れてしまうとたい。
カリントウもせんべいの内とするならば…。
古川は宮城県。平たいカリントウは見たことがない。「かりんとう 古川」で検索したら地元の菓子店のカリントウの画像がヒットした。本当だあ、平たいや。
デスクびっくり 5ガロン缶!? アメリカ製のかりんとう?
野瀬 違うと思う。「米菓」っていうのがアメリカ製じゃないの?
『飲食辞典』を引いてみると、中国菓子に起源をもつカリントウは味を付けた小麦粉を練って「短冊形に切り」とあるので、もともとは平べったかったのもしれない。
一転して豪州の味なしせんべいの謎。
見たところは立派な塩せんべい、もしくは大振りのあられ。何が違うかというと「味」がついていないのであります。いかに立派なおせんべいでも味なし? これが禅味…?
その後何年かして呼ばれた友達の家でのパーティーでこの禅味塩せんべいの謎は解けたのであります。要するにこちらの人間は、お茶の相手におせんべいをバリバリ食うんじゃなくて、酒のつまみにクラッカーの代わりに上になんかのせて、あるいはディップをつけて食べるので、土台になるおせんべいには味がない方がいい。単純にそれだけのことでありました。
え? ディップをつけたおせんべいはどうかですって? うまかったらスーパーで買って写真をとってこのメールにも貼付しておりましたわい(オーストラリアのさんさん)
豪州のせんべいに味がないのには合理的な理由が存在した。だが私が都内某所と某所で食べたチャンポンに味がなかったのは、一体どんな理由があったんだよー。教えてくれよ、味なしチャンポンの訳をよー。
デスクなだめる どー、どー。
ベティー隊員 落ち着いてください。でないと警察を……。
国内に戻る。
その後、100円ショップなどを徘徊、おにぎりせんべいは東京でもぼちぼち見かけました。でも、歌舞伎揚は地方にもあるのかしらん?(川崎育ちの30年熟成りんごさん)
関西で歌舞伎揚と対抗しているのは「ぼんち揚げ」ではないだろうか。西日本の同人の皆さん、そちらに歌舞伎揚はありますか? 東日本の同人の皆さんは「ぼんち揚げ」ってわかります?
デスクううむ 聞いたことあるような、ないような。少なくとも「ぽんせん」よりは身近かもしれない。
ベティー隊員 私もなんとなくわかるような、わからないような。
(特任編集委員 野瀬泰申)
[本稿は2000年11月から2010年3月まで掲載した「食べ物 新日本奇行」を基にしています]
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