PIXTA投資信託の積立投資は毎月など機械的に買い付けていくので、高値づかみのリスクを減らす効果がある。であるならばいっそのこと、毎日積み立てるのが得策のようにも感じるが、実際のところどうなのか。データを検証してみると、意外にも毎月と毎日では積み立ての運用成果にほとんど差が付かないという結果になった。投信の基準価格がランダム(不規則)に変動することが関係している。
積立投資は「コツコツ投資」の呼び名が定着している。ドルコスト平均法ともいう。投資タイミングの判断抜きに、決まった日に機械的に一定額で投信購入を継続する投資手法だ。安値では多くの口数、高値では少ない口数を購入するため、高値で多くを買ってしまう失策を減らすことができる。
■リターンは毎日も毎月も差がない
積立投資は毎月行うのが一般的だが、高値づかみのリスクを回避する手段を突き詰めていくと、毎日積み立てるのが究極のようにも感じられる。そこで、毎月と毎日で運用成果がどのように違ってくるか検証してみた。
まず、日経平均株価と米ドルを例にとり、投資の開始時期を20年前、10年前と5年前として、それぞれについて4月末まで積み立てたリターンを計測し、表にまとめた(表A)。購入頻度は毎月、毎日と同じ曜日で週1回とした場合に加え、2カ月ごと、3カ月ごと、4カ月ごと、6カ月ごと、1年ごととした。
赤で囲んだのは日経平均を20年前から積み立てた場合だが、毎月の積み立てリターンはプラス51.7%で毎日は同52.1%。その差は1%未満で、誤差の範囲だった。毎週の積み立てリターンも、どの曜日でも約52%となった。驚くべきことに積み立て間隔を広げ、2カ月ごと、3カ月ごと、4カ月ごと、6カ月ごとにしてもリターンは50%~52%に収まり、大きな差は付かなかった。
投資開始時期を10年前、5年前としても、購入頻度で大きな差が付かないのは同様であり、米ドルに投資した場合も同じ状況だった。
■平均購入単価がほぼ同じになる
積み立てリターンに差が付かないということは、平均購入単価がほぼ同じということだ。平均購入単価の推移をグラフにして確認してみよう。
グラフBは、日経平均を2012年4月末から5年間、毎月、毎日または毎週(金曜日)、買い続けたときの平均購入単価の推移を示す。グラフからは、積み立ての頻度によらず、平均購入単価が日経平均の上昇に合わせて緩やかに上昇しながらも、ほぼ同じ動きをたどったことが分かる。
次に実際のファンドで、積み立ての頻度を変えた場合のリターンを確認してみよう。表Cは株式、債券とREIT(不動産投資信託)を投資対象として、地域を国内、海外に区分した場合の代表的な指数連動型のインデックスファンドおよび、複数の資産でインデックス運用を行うバランス型について、5年前から積立投資したリターンをまとめたものだ。
リターンの水準自体は各ファンドで異なるが、購入頻度ではリターンに大差がない傾向は変わらない。
■基準価格のランダム変動が主因
購入頻度を変えても積み立てリターンに大きな差がないというのは、偶然ではなさそうだ。調べてみると、理論的な背景があった。専門的には「調和平均」という数式を使って平均購入単価を計算するのだが、考え方としては「ランダムに変動する価格の平均購入単価は、その購入間隔の影響はそれほど受けず、一定の値に収束する」ということのようだ。株価をはじめ投信の基準価格など金融商品の価格は通常、過去の動きに関係なくランダムに変動する。
いずれにしても、長期でコツコツ投資するなら、毎日、毎週、毎月、隔月も運用成果はあまり変わらないので、頻度にこだわる必要はない。
■iDeCoの加入者にも朗報
個人型確定拠出年金(iDeCo=イデコ)では、毎月26日(休業日の場合は翌営業日)に掛け金が金融機関から引き落とされる(給与天引きの場合は事業主経由)。ところが、実際の投信購入日はというと、事務手続きなどの関係で26日から3週間近く後ずれし、翌月半ば過ぎになる。しかしながら、積立投資では買い付けが多少遅れても運用成果にはあまり影響しないので、気にするほどではない。
むしろiDeCoで注意すべきは、投信などの買い付けの際に掛け金から差し引かれる口座管理手数料だ。口座管理手数料はちりも積もれば山となる。手数料が高いほど長期の複利効果による運用成果の上積み効果を減殺してしまうからだ。
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