『あなたのことはそれほど』 W不倫の怖さと狂気描く
結婚していながら本当に好きな人が現われたら……。そんな問題にヒロインが直面するドラマ『あなたのことはそれほど』。美都(波瑠)は2番目に好きな涼太(東出昌大)と結婚した矢先、小学生からの同級生で初恋の相手・有島(鈴木伸之)と再会。許されぬ恋に走る。
放送しているTBS火曜午後10時は『重版出来!』『逃げるは恥だが役に立つ』『カルテット』など、良作・ヒット作が相次いでいる注目枠。ドリマックスの佐藤敦司プロデューサーは、同枠で何をすべきか考え、夫婦をテーマに選んだ。
「この枠で結婚・夫婦の話がメインのものはまだなかった。そこで夫婦の話だけれど恋愛要素が濃くて、恋愛をあらゆる角度から描くものを作りたいと思いました」
佐藤氏がリサーチしたところ、「初恋相手や元恋人と再会後に不倫した」ケースが約3割とのデータがあったという。そんななかで選んだ原作はいくえみ綾の同名コミック。ヒロインに加え、相手も既婚者のため、W不倫の関係となる。どの登場人物も淡々と、ニュートラルに描かれているのが特徴だ。
「ドラマでは美都の行動も視聴者の皆さんに、こういう考えだから、こういう行動に移す、と伝わるよう心掛けています。美都のモノローグもドラマ独自のもの。彼女の言葉にツッコみ、あきれてもいい。一方で『でも、その気持ちは止められないよね』と思ってもらえる微妙なさじ加減を探っています」
物語は涼太と有島の妻・麗華(仲里依紗)にもスポットがあたる。
「2人は不倫を知っても自分からは何も言いません。今後様々な事実が発覚し、彼らの人格にも変化が起きて、狂気の片鱗が見え始めます。決して怒鳴るのではなく、変に鋭いところを見せて、ジワジワ責める。美都たちからすると、一番いやなパターン(笑)」
メインキャストの4人は既婚者の役がまだそう多くない面々。
「波瑠さんは結婚をはじめ、自分にとって未経験の話なので、妄想でどこまで演じられるかを追求したいと語っています。東出さんは目は笑っていない笑顔とか、激高した一瞬だけ声のトーンを上げるとか、涼太の狂気を演じるべく挑戦中。仲さんは女性として芯が一本通っている方。その強さをもって、良妻賢母で物静かだけれど、なぜか怖さのある女性を見せてほしいと思っています」
有島役の鈴木伸之は連ドラで大役を演じるのは初めてのこと。
「有島は格好良くて、すごくモテる男。そこにずるさや大人のいやらしさもある。でもやんちゃで憎めない。鈴木さんが持つ性格の良さを生かして演じてくれたら」
原作は5巻まで既刊。ドラマはオリジナル要素を加え進む。
「2組の夫婦が今後持ち直すのか、破たんするのか。ドラマの中では恋愛や結婚に関する様々なワードが出てくるので、もしかしたら自分の身にも起こりうる話と思っていただけると、より興味深く見てもらえるはず」
"危険な恋"は決して絵空事にあらず。ヒロイン・美都の選択にあなたは何を思うだろうか。
(「日経エンタテインメント!」6月号の記事を再構成。敬称略。文/田中あおい)
[日経MJ2017年6月2日付]
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