キャリア育成したいなら 「業種」でなく「職種」でキャリアアップをマネーハック(1)

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今月のマネーハックのお題は「キャリアアップ」です。今まさに就職活動をしている学生(あるいは今後に控えている学生)、就職したばかりの新社会人にとって「キャリアを育てる」というイメージはつかみにくいものです。そこで今回はキャリアアップとお金の問題を考えてみたいと思います。

20代から仕事のスキルを伸ばす

20歳代をどう働き、仕事のスキルをどう伸ばすかは社会人として過ごす約40年を大きく左右することになります。

独立行政法人労働政策研究・研修機構の「ユースフル労働統計2016」によれば、会社員の生涯賃金は2億7000万円にもなります(男性で大卒・大学院卒。退職金含まず)。ですが、実際には会社によって賃金水準は異なりますし、同じ会社の中でも昇格・昇進のスピードによって生涯賃金は大きく変わってきます。

かつては同期入社であれば同じように昇格し、部長レースの手前くらいまでは同じ給料だったかもしれません。しかし、今ではそう単純ではありません。同じ社内で同じ年齢でも賃金差が2倍以上になるような会社も出始めました。

ひとつの会社で働き続ける場合でも、違う会社に移って働く場合でも、自分の仕事の能力をどう高めていくかが問われる時代になっています。自分の評価を高める、つまりキャリアを育てて、お金に換える意識が必要なのです。

筆者は高校や大学に出かけて、「キャリアとお金の関係」について、あるいは「社会保障の役割」について、金銭教育の講師をすることがあります。そのとき、まだ就職前の学生に必ずアドバイスすることは「業種」ではなく「職種」で自分のキャリアを育てていきましょう、ということです。

会社や業種で選んでいないか

私たちはつい「○○食品」とか「△△グループ」といった名前で会社選びを行います。「業界研究」といわれるように、特定業種について情報収集をして就職活動したり、アドバイスしたりすることが当たり前のように行われています。

しかし、私にいわせればそれでは仕事やキャリアの半分しか見ていないと思います。むしろ自分が向いている職種を見極めることこそ大切です。これができれば、どんな会社にも転職できるようになるのです。

同じ会社でもまったく違う仕事をしている人がたくさんいます。たとえば、一般的なメーカーなどでは「製造」「開発」「営業」「総務」「人事」「経理」「財務」「法務」「営業企画」の部門に分かれ、それぞれが役割を果たしています。これらが職種です。

職種でみたとき、メーカーでも流通でもIT(情報技術)系企業でも、「人事」の仕事や役割の多くは共通です。自分のキャリアを職種の視点で育てることは、私たちの可能性を広げ、能力を最大限に引き出すことにもなるのです。

ただし、職種には「向き不向き」があります。適性を知ることができると伸ばすべきキャリアもまた明確になってきます。

人事異動はチャンスにもピンチにも

会社員になると、人事の洗礼を受けます。どんな仕事をするかは会社が決めます。新入社員の最初の配属も人事が発令されます。ゲーム会社で開発をしたいと思って就職しても、経理部に配属され、毎日経費精算についての事務作業をするかもしれないわけです。

また、定期的に人事異動があります。職場の活性化、人員の最適配置を考えて行われるのですが、これまた個人の希望がかなえられるとは限りません。営業をずっとしていたら、ある日突然財務部に配属されるというようなことが起こります。

人事は必ずしも個人の希望に沿うわけではありません。人事異動はある程度、本人から意向を聞くのが一般的ですが、必ずしも希望通りにはいきません。しかし、本人の気づかない適性を周囲が評価し、配属してくれることだってあるのです。

このとき、社内人事を「職種経験のチャンス」とするか、「スキルを伸ばす障害」と捉えるかは難しい問題です。

違う職種を経験してみると「意外にこれは興味が持てる楽しい仕事だ」と感じることもあります。もし、新しい業務経験を素直に受け入れられる(あるいは辛抱できる)なら、いろんな職種を経験し、自分の「適職種」を見つけるチャンスとしてください。

逆に異動してみて「これはまったく自分には向かないな……」と感じることもあります。前の部署を思い出し、「もう少し今の職種を続けて自分のビジネススキルを伸ばしたかったのに……」と考えることもあるでしょう。どうしても納得できない場合、早めの異動を希望するか、転職も視野にキャリアアップを検討する必要が出てきます。

向かない職種にはしがみつかない

転職サイトの広告などを見ていると「キャリアアップ=転職」というイメージがありますが、必ずしも転職をする必要はありません。自分が向いている部署に異動が許されるなら、今の会社で働き続けることでそれなりに仕事の能力も高まります。転職が容易な時代とはいえ、転職をしないまま定年まで働く人もまだたくさんいます。

しかし、異動が許されない場合などは無理にしがみつく必要はないでしょう。たとえば、筆者は総務や経理の仕事は向いていないと自負しています。コラムを書くためなら何時間でも苦労しますが、経費精算などの事務処理は30分でも苦痛です。逆に企画書を書くのは嫌だが、事務処理を効率的にこなすことは得意という人もいるでしょう。誰でもそういう向き不向きはあります。

私たちはみんながオールマイティーにはなれませんし、なる必要はありません。得意な仕事でお金を稼いでいく方が長続きしますし、もっと稼げるようになるかもしれません。逆に、不得意な仕事をしてお金を稼いでいくことは大変です。

「職種」の適性、つまり「適職種」を考え、自分の伸ばしたい能力は何かを意識しながら仕事をしてください。転職を考えるより、まず先にやるべきことが見えてくるはずです。

マネーハックとは ハックは「術」の意味で、「マネー」と「ライフハック」を合わせた造語。ライフハックはIT(情報技術)スキルを使って仕事を効率よくこなすちょっとしたコツを指し、2004年に米国のテクニカルライターが考案した言葉とされる。マネーハックはライフハックの手法を、マネーの世界に応用して人生を豊かにしようというノウハウや知恵のこと。
山崎俊輔
AFP、消費生活アドバイザー。1972年生まれ。中央大学法学部卒。企業年金研究所、FP総研を経て独立。退職金・企業年金制度と投資教育が専門。著書に『誰でもできる 確定拠出年金投資術』(ポプラ新書)など。http://financialwisdom.jp
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