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『うんこ漢字ドリル』227万部ひねり出した3つの工夫

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日経トレンディネット

「うんこ」という忌避されがちな言葉をあえて全例文で使った小学生向けの「うんこ漢字ドリル」(文響社)が発売後約2カ月で発行部数227万部(2017年5月30日時点)を記録。発売以来学習参考書の週間売り上げランキングで1~6位を独占し続けるという大変なベストセラーになっている。

例文は、「春らしい色のうんこだ」「うんこにも羽が生えたらいいのに」など、ナンセンスなバカバカしいものばかり。それが子どもだけでなく親にも「面白い」「笑える」と大受け。発売直後に「例文がすべて『うんこ』の漢字ドリルを見つけてしまった」というツイートが瞬く間に拡散したことも追い風になった。

この「うんこ漢字ドリル」はいかにして、世に出たのか。さまざまな壁を乗り越え、この本を"踏ん張って"出した作者の古屋雄作氏に、そのてん末を聞いた。

当初は「うんこ川柳」の本を出す話だった

――うんこ漢字ドリルは小学1~6年生の学年別に全6冊が初版3万6000部で2017年3月24日に発売され、あまりの人気に書店で欠品が続出。発売後約2カ月で発行部数148万部を超え(インタビュー時点の部数)、驚異のヒットを記録しています。作者としてどう受け止めていますか。

古屋雄作氏(以下、古屋): 発売前は、「今の小学生の人口が約650万人だから、その1%が買ったとして6万部程度は売れてくれれば」などと皮算用していましたが、その計算をはるかに超えるヒットだと思っています。「うんこなんて汚い」「子供に買い与えられない」などとクレームが殺到することも予想されましたが、ふたを開けてみるとクレームはほとんどなく、逆に良い形で広まって、受け入れてくれる親子が多かった。うんこというワードに世間が想像以上に肯定的で、「気にしすぎだったかもね」と、今は胸をなでおろしています。

――そもそも全例文にうんこという言葉を使うドリルを作ることになったきっかけは?

古屋: 僕は14年前にうんこという言葉を使って言葉遊びをする「うんこ川柳」を個人のウェブサイトで発表し始めました。「うんこをぶりぶり漏らします」「うんこがぷかぷか浮いてます」など、真ん中に擬音語、擬態語を入れたうんこの短文を延々と作って更新していたのです。1000句以上できた時点で出版社に持ち込み、書籍化を目論みましたが、企画は通らず……(笑)。そこで、書籍化が無理なら映像化しようと、老人が創始者になって子供たちにうんこ川柳を広めるという架空のドキュメンタリーを撮影し、DVDにして販売しました。ばかばかしいながらクスッと笑える、うんこという言葉を使ったコンテンツ作りをライフワークにしてきたわけです。

――なるほど、うんこ川柳がライフワークだった。

古屋: それから月日が経って、2015年の初めだったと思いますが、今回のドリルを出版した文響社の山本周嗣社長から「うんこ川柳を書籍化しないか」と声がかかりました。実は彼と僕、そして「夢をかなえるゾウ」「人生はニャンとかなる!」などヒット書籍の著者である水野敬也氏は中学・高校時代の同級生だったのです。仲の良い同級生からの思いもよらぬオファーに、僕は小躍りしました。「なるほど、今なのね」と(笑)。早速、「四季を感じるうんこ川柳」「生活に密着したうんこ川柳」など、本の構成を考えながら、制作を進めていきました。

――うんこ川柳の制作を進めていたわけですね。

古屋: 僕は「うんこ川柳の書籍化」という長年の思いを実現するために突っ走ったのですが、あるとき、山本から「古屋、これはちょっと売れないかもしれないな」と、ストップがかかったのです。彼は出版社の社長として、もっと世の中に受け入れられるものを作りたいというビジネス視点があったのだと思います。そして、「うんこ川柳を使って漢字を覚えられるドリルにできないか」と提案されました。

それを受けて、うんこ川柳の例文をコツコツ作っていったのですが、そのうち山本から「古屋、うんこ川柳は一度忘れて、川柳なしでうんこの例文を作ってくれ」という身も蓋もない要望が来たんです(笑)。ただ僕もその時点では「面白い例文になれば川柳にこだわる必要はないかもしれない」と思いました。そこでようやく、小学校で習う1006字の必修漢字それぞれに対して3つずつ、合計3018の例文を掲載する、現在のうんこ漢字ドリルの体裁が決まったのです。

"3つの工夫"で「うんこ」を受け入れやすくした

――3018もの例文を「うんこ」という言葉を使って作る作業は大変だったと思いますが、何に一番苦労しましたか。

古屋: 面白い例文を作ることはもちろんですが、ほかにも"3つのルール"を設けました。

まず、うんこを「食べる」、あるいは「くさい」といった想像すると嫌悪されるような例文は避けること。例えば、「カレーだと思って食べたらうんこだった」という例文は具体的にイメージできてしまい、気持ち悪いですからね。

あと、物質としてのうんこの汚さをなくすような表現にも心がけました。「春らしい色のうんこだ」「うんこにも羽が生えたらいいのに」などはその代表例。具体性を極力そぎ落とし、抽象化することによって、うんこの生々しさやリアリティーを薄める工夫をしていったわけです。

さらに、「友だちのカバンにうんこを入れた」「君のうんこを見て気持ち悪くなった」など、いじめにつながるような例文は避け、「君のうんこを見たおかげで元気になった」と、ポジティブな例文になるように工夫しました。

嫌悪感をなくすこと、生々しさを薄めること、ポジティブな例文にするという3つの工夫によって、子どもだけでなく親も受け入れやすくなったのではないでしょうか。

――学習効果を高めるために、例文や熟語の良し悪しを判断する監修者にも途中から加わってもらったようですね。

古屋: 学習参考書や漢字ドリルを制作してきた実績のある編集プロダクションに協力してもらいました。ただ、それは僕が例文を作り始めて1年以上経ってからなんですよ。山本が「すまん、古屋、せっかく作ってもらった例文と熟語だが、監修者を入れて一から作り直したい」と言い出したんです。

それから、「この例文は子供に読ませたくないので要検討」「熟語は優先度を考慮してこれに変えたほうがいい」と取捨選択を進めました。その過程でおそらく1000くらいの例文がボツになっています。最初から監修者に入ってもらっていれば、こうした二度手間は防げたのでは、というのが僕の本音です(笑)。ここまでくると、山本から「すまん、古屋、出版できなくなった」と宣告されることも覚悟しなければならないと思い始めました。

――完成までに幾多の工夫や苦労があったのですね。ほかに気を付けたことは?

古屋: 例文の内容ができるだけ重複しないように気を付けたこともポイントです。「うんこ」を使ってかぶらないように例文を約3000も作るのですから、簡単なことではありません。

やり遂げるためにはどこかに籠もって一気に片付けたほうがいいと考え、一人で沖縄に飛びました。そこで約1週間、海沿いのホテルに缶詰めになって作ったんです。沖縄を選んだのは、オーシャンビューで空と海しか見えない景色の中、自分のイマジネーションを解放して、例文作りに没頭したかったから(笑)。食べるときと寝るとき以外は、うんこの例文のことだけを考え続けました。このひとり合宿のおかげで制作は随分とはかどり、苦難を乗り切ることができたのです。

これは小学生にとっての"うんこの解放"です

――複雑な経緯がありましたが、スタートから2年以上を経て出版にこぎ着けました。今の心境は?

古屋: 約3000の例文全部をうんこでやると決めて、やり切った。今は達成感と満足感でいっぱいです。おそらく、すべてをうんこの例文で貫いた、世界初の教材ではないでしょうか。うんこだけで全例文を作ることができたことが驚きであり、さまざまなアイデアを駆使して言葉遊びができたことは、自分にとっても貴重な体験でした。

――出版できたことも驚きですよね。

古屋: その通りです。こうやって面白い企画やアイデアを、そのまま形にして世の中に出せることは、少ないと思います。通常、企業ではコンプライアンスが先に立ち、「こんなの無理だろう」「やり過ぎ」などの意見が出て、企画自体がなくなるか、角がどんどん削られて丸くなってしまうことが往々にしてあるからです。しかし、今回のうんこ漢字ドリルでは、企画通りの純度が高いものをそのままの形で出すことできた。これはまさしく「奇跡」です。出版社としてリスクを取って世に出してくれた山本の勇気に感謝したいと思います。

――最後に、うんこ漢字ドリルへの今後の期待を聞かせてください。

古屋: 自分が小学生だったころを思い返すと、うんこという言葉は好きだったし、今の小学生も同じように好きだと思います。ですが、一方で使うと先生や親に怒られる言葉でもあり、言いたいのに言えず、抑圧を受けているのが実態。だから、僕は小学生に「漢字を学ぶ」という大義名分を持って、うんこという言葉を好きなだけ楽しんでもらいたかった。そんな思いも、このドリルに込めています。

言ってみれば、小学生へのうんこの解放(笑)。勉強は子供も大変ですが、やらせる親も大変。うんこという小学生受けする鉄板ワードが散りばめられたドリルで、勉強嫌いの子が進んで漢字の学習に取り組み、実際に成績が上がって、親にとっても子にとっても、良い結果につながればいいなと思っています。

(ライター 高橋学)

[日経トレンディネット 2017年5月16日付の記事を再構成]

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