リーダーが語る 仕事の装い

仕事はプライベートのため?「だから服装ダメなんだ」 ワークスアプリケーションズCEO 牧野正幸氏(上)

2017/6/7

 「仕事はプライベートのために嫌々やっているもの」という発想が、ビジネスシーンでの装いへのこだわりを損ねている――。こう指摘するのは、人工知能(AI)ソフトウエア開発を手がけるワークスアプリケーションズの牧野正幸最高経営責任者(CEO)だ。就職してすぐに「給料2カ月分でスーツを買った」といい、「趣味はスーツ」と豪語する牧野氏に、ビジネスとファッションについての思いを語ってもらった。

 後編「上着は絶対に脱がない 『シャツは下着だから』」もあわせてお読みください。




 ――スーツに対するこだわりの理由をお聞かせください。

 「そもそも、学生のころから『日本のサラリーマンはめちゃくちゃ格好悪い』というイメージがあって。実際、『ドブネズミルック』とまでいわれていた。米国では東海岸と西海岸で服装が違う。西海岸では誰もスーツなんて着ないけれど、東海岸ではスーツ着ます、みたいなね。でも日本は全員中間、というのか中学校の制服と同じで、『とりあえず3年間同じ服を着続ける』という印象だった」

 「とはいっても、日本人もずいぶんとファッショナブルになってきた。女性は昔からそうだけど、男性もね。私服は意外とみんなこだわっているし、こぎれいにしているんだけど、スーツは違う。『制服だから、とりあえずなんでもいいや』という人が多い」

 ――こだわりがないのはなぜでしょうか。

 「日本人のスーツに対するこだわりのなさの根底には、働き方に対する考え方があると思う。『ワークライフバランス(仕事と生活の調和)』という言葉があるけれど、『仕事とプライベートをきっちり分ける』という考え方がある。もちろん分けてもいいんだけど、『仕事はプライベートのために嫌々やっているんだ』という前提条件を立てている人が、ずいぶん多いと思うんですよね」

■「仕事は悪だ」という考え方が前提にある

 「最近、『働き方改革』が注目されていますが、私はいろいろなところで委員を務めています。そこで、非常に違和感があるのは、『仕事は悪』だと決めつけていて、『だから労働時間は規制しなくては』という考え方があることです」

 「また、日本の多くの企業は入社後に社会人としての基礎的な部分を教える期間がある。当社の場合は長くて約半年間、『自分でものを考える』やり方を教育する時間を設けています。一人前になってからも、エンジニアならどこの会社でもそうですが、様々な技術を習得するための時間が必要です。その時間は仕事なのか、仕事ではないのか。当社では仕事の時間の2割を業務外のことに使う『スカンクワーク』を推奨しているので、会社で勉強している者がたくさんいます」

 「いずれ近い将来、自分のキャリアを磨くためにアフタースクールに通うことすら、『そんなことしたら働き過ぎだろう』とされてしまうのではないかと、感じることがある。とにかく『努力することは一切認めない』、という風潮になってしまうのではないか。極端かもしれないけれど、こうしたことの根本には、『仕事はプライベートを充実させるためにやむなくやっている』という考え方があるのだろう」

「その日会う人に応じて装いを選ぶ」という牧野氏。この日は取材ということで、「他の人が着ないようなスーツにしようと、ピンクのチェックにしました」
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