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ブラジル「屋台おばちゃんの味」 政府公認の文化遺産

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NIKKEI STYLE

2014年サッカーワールドカップ開催、2016年リオネジャネイロ・オリンピックパラリンピック開催と、これまで日本の真裏で遠い存在だったブラジルが近年、急に身近に感じるようになった。ブラジルの食も、牛肉の塊を串に刺し、ダイナミックに炭火で焼き上げるシュラスコ料理店が相次ぎ開業するなど、日本で食べる機会が増えている。

それでも、ブラジルの食は奥深く、日本に知られていない未知の食がまだまだあろう。「広大な国土のため、それぞれの地域に特有の料理があり、また移民大国ゆえ、移民元の多くの国の影響もそれぞれの地域で受けています。だから、ブラジルの代表的な料理は何かと問われれば、『地域料理』だとお答えすべきでしょう」とアンドレ・コヘアドラゴ駐日ブラジル大使は話す。

例えば、シュラスコ料理は、アルゼンチンやウルグアイに近い、畜産が発達しているブラジル南部の地域料理。南部には、ドイツ人の移民が多いため、シュラスコ料理と合わせておいしいビールを堪能することができる。一方、アマゾンの先住民インディオの言葉でタピオカと呼ぶキャッサバ芋は、今やブラジル全土で様々な料理に広く使われるようになった。

タピオカといえば、台湾など東南アジアで一時大流行した、半透明の丸い寒天のようなつぶつぶが入っているドリンクを思い起こすことだろう。しかし、それは「タピオカパール」のこと。同じキャッサバ芋が原料でも、ブラジルのタピオカとは、ずいぶん違う。

例えば、少し前に日本でも流行したチーズパンの「ポン・デ・ケージョ」。もちもちっとした独特の食感は、原料のキャッサバ芋のなせる技。日本でも、チェーン系ベーカリーですっかり定番になっているが、キャッサバ粉が手に入りにくいため、小麦粉で代用する場合が多いようだ。しかし、ブラジル人に言わせると「言語同断!」なんだそう。

コヘアドラゴ大使は「ポン・デ・ケージョのファストフード店があれば、1週間毎日でも食べるよ」とキャッサバ芋への愛着ぶりを披露する。

さて、ブラジルで「タピオカ」という料理名にもなっているのは、フランスのクレープによく似た料理。キャッサバ芋のでんぷんを粉にしたものを、油をひかずにそのまま焼き、焼き上がった白い生地に好きな食材をはさんで食べる。

クレープよりは小ぶりで直径15センチメートルくらい。もちもちっとした食感がクレープとも異なる。クレープやパンケーキのように、粉を水に溶いて、それを焼くのではないところがユニークだ。ただ、塩味であるチーズを挟めば食事になるし、甘味であるココナツの果肉をほぐしたものやコンデンスミルクを挟めばお菓子になるという点はクレープと同じだろう。

一方、地域限定のローカル色が強く、いまだにその土地でなければあまり食べられないのがブラジル北東部、バイア州の郷土料理「アカラジェ」だ。

「アカラジェ」とは、黒目豆をすりつぶし、刻んだタマネギなどを混ぜ、よく練った生地を丸めてデンデ油(オニヤシ油)で揚げたもの。外見は日本のカレーパンのようだが、食感はやや硬めのドーナツという感じで、軽くサクッとした味わい。それを半身に切って、エビや特製の具をはさんで食べる。お好みで、ブラジルの辛味調味料「ピメンタ」をたっぷりかけるのも一興だ。

特製の具は主に2種類。一つは、水に戻した干しエビをすり身にし、キャッサバ粉を混ぜて練り、オクラとデンデ油を加えて煮る「カルル」。もう一つは、やはり干しエビを材料に、ココナツミルクや生クリームを使ってトマトやピーマンなどを煮込む「ヴァタバ」だ。それぞれは「アカラジェ」にはさんで食べるほか、ご飯のおかずとしてもよく食べるという。

バイア州では、バイアーナと呼ばれる伝統衣装を着たおばちゃんたちが屋台で「アカラジェ」を売っている。まさにブラジルの食を代表する「地域料理」の風物詩だ。ただ、この地域が、食材の黒目豆やデンデ油、干しエビの特産地で安く調達でき、どの家庭でも作り、古くからたくさん食べられてきた「庶民の味」かというと、そうとも言えない面がある。

干しエビなどの食材は高いし、手間もかかる。日常的によく作るというものでもなく、「アカラジェ」だけを売っていては赤字になるので、同じ油で揚げる揚げ菓子などをいっしょに売るなど、工夫しながら商売を続けているのが実情だ。

実は「アカラジェ」は、アフリカ民族信仰に起源を持ち、ブラジル先住民インディオの神霊主義と融合して確立した宗教の儀式における、神への捧げものとして作られてきたという。「アカラジェ」という言葉もアフリカの部族の由来で、「火の玉」を意味する「アカラ」と「食べる」を意味する「ジェ」が結合してできた。植民地時代、アフリカからブラジルに渡った奴隷の女性は「女主人の怒りが収まるように」と願い、神に「アカラジェ」を供えたのだ。

神聖なものとはいえ、お腹がすけば自分たちも「アカラジェ」を食べ、そして大きな盆に載せて「アカラジェ」を町で売ってささやかな小遣いを稼ぐなどして、バイアーナは「アカラジェ」とともに厳しい時代を生きてきた。

それが、ブラジルの食と文化の歴史を形成してきたのだ。

そんなブラジルを代表する食の担い手として生き抜いてきたバイアーナは2005年、ブラジル政府によって無形文化遺産に登録された。

無形文化遺産に登録されたこともあり、大都会のリオデジャネイロやサンパウロでも、「アカラジェ」売りのバイアーナをよく見かけるようになったとのこと。ただ、ブラジル人でも「アカラジェ」がどういったものか、正確に知っている人は多くないらしい。大使館を取材をしたときも「アカラジェ」について尋ねると、「この取材の席にブラジル人が5人いますが、残念ながら『アカラジェ』を日常的に食べたことがあるものは一人もいないのです」とコヘアドラゴ大使も苦笑い。

聞けば聞くほど、「『アカラジェ』をぜひ、食べてみたい!」。そんな気持ちがわきあがってきた。すると、大使館員の一人が、「日本では『東京アカラジェ&タピオカ』というアカラジェ料理を応援してくれているグループが作っていますよ」と教えてくれた。ちなみにその大使館員氏、「私が生まれて初めて食べた『アカラジェ』が、ここ日本で食べた彼らの作る『アカラジェ』だったのです」。

「東京アカラジェ&タピオカ」は、ブラジル音楽を愛好する3人の日本の若者が、ふとしたきっかけでブラジルの民族音楽にも歌われている「アカラジェ」を食べたところ、すっかりその魅力にとりつかれ、以来ケータリングユニット(依頼に応じて料理を作り届けたり、臨時店舗やイベントで料理を作り販売するグループ)を結成し、日本において「アカラジェ」の普及促進に励んでいる。

その「東京アカラジェ&タピオカ」が、都内の臨時店舗で「アカラジェ」を提供するというので、行ってみた。ハンバーガースタイルとプレートスタイルが用意できるという。本場の「アカラジェ」は、屋台料理のため包んだ紙をつかんで、思い切りほお張るハンバーガースタイルが流儀だろうが、食べやすさを優先してプレートスタイルを注文。2つの具を順番に味わった。

すでに、お客としてきていたブラジル・ミナスジュライス州出身の女性イラストレーターは、「ブラジル人だけど、食べたのは今ここが初めて。とってもおいしい」と興奮気味に感想を話してくれた。「これは見た目もきれい。ブラジルの屋台で売っているのは、実際はおいしいのだろうけど、見た目はイマイチかな」。やはり、器用な日本人がつくると、見た目もおいしそうな「アカラジェ」になるのだろう。

ほめられた「東京アカラジェ&タピオカ」の風間のうさんは、「日本では誰もやったことがない『アカラジェ』作りには苦労しました。教えてくれる人がいないので、YouTubeで探し当てた伝説的なバイアーナを3人でブラジルに訪ね、"師匠"から直々に教えを仰いだんです」。

そんな渾身の「アカラジェ」をさらにおいしくしたのが、カシャッサというサトウキビからつくる蒸留酒のカクテル「カイピリーニャ」。神様への捧げ物をいただくには、やはりお神酒も不可欠だろう。地球の真裏の、食の奥深さをしみじみ味わうひとときだった。

(中野栄子)

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