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インバウンド最前線

「オンリーワン」の魅力 外国人目線で探して伝えよう インバウンド提言(下)コンサルタント ルース・ジャーマン氏

2017/6/25 日経MJ

前回(「国籍」はピント外れ 訪日外国人は「種族」で捉えよ)に引き続き、インバウンド(訪日外国人)を呼び込むための方策を専門家に聞く。後編は米ハワイ出身で日本に約30年住む米国人コンサルタント、ジャーマン・インターナショナル代表のルース・マリー・ジャーマンさん。外国人の目線で「オンリーワン」の魅力を見つけ出し、伝えることの重要性を説く。

◇  ◇  ◇

「島から富士山と海を眺められるオンリーワンの天然温泉スパ」――。江の島アイランドスパ(神奈川県藤沢市)で外国人集客のコンサルティングを始めて5年目になる。外国人客がごく少数からのスタートだったが、現在は月平均で500人強が来る。精緻なデータ分析はこれからだが、外国人客は滞在時間が長く、付帯サービスの利用率も高いため、1人当たりの平均消費額は高くなる傾向があるようだ。

前職は外国人向けの高級サービスアパートメントの営業職だった。12年までの12年間で約4万人の外国人の富裕層と接してきた。

賃料が月20万~70万円程度というサービスアパートメントの顧客は富裕層。実は、リッチな外国人観光客と属性や消費行動がそっくりなのだ。購買力があって、出身国・地域にかかわらず英語が通じて、日本語ができなくても日本びいき。サービスアパートメントで私が習得した誘客戦略は今日のインバウンド集客にも役立つだろう。

では、具体的にどうすれば、世界の富裕層を呼び込めるのか。

第一歩は「オンリーワン」を発掘することだ。

先日、広島県福山市に行った際、「もったいない」現場を目にした。ホテルのロビーに素敵な土産販売コーナーがあり、福山名産の下駄(げた)が数種類、飾ってあった。左側には木でできた一般的な商品で9千円。右側にはガラスケースに入った鎌倉彫で3万円。全く違う商品にもかかわらず両方とも「Geta Slipper」という簡単な英文表示しかなかった。

その場を通る外国人の潜在顧客から値段について納得感は得られないだろう。そもそも下駄の意味と役割もわからないため、同じように見えるのだ。にもかかわらず、あまりにも値段に大きな差があると、結局どちらも買わないまま通り過ぎることになる。

本来なら「福山産の木でできています。着物とあわせて履物もどうぞ。暑い夏の日にお使いください」と表示し、さらにもう片方には「手作りの彫り物に、伝統的なデザイン。着物向けの履物ですが、こちらはインテリア、和のしつらえとしてもお楽しみいただけます」というような、「オンリーワン」のスペシャル感を出せば、手を伸ばす客は出てくるだろう。

オンリーワンを見つけても、そのすばらしさを外国人観光客にもわかるよう、上手に表現しなければ、消費にはつながらない。実にもったいない!

オンリーワンの魅力を納得してもらえれば、買い物につながるだけではない。その外国人観光客自身が商品の宣伝塔になってもらえる可能性も広がる。

そもそもインバウンド集客で欠かせないのは、ターゲット層の定義だ。付加価値は何なのか? 適正価格はいくらで、払える客は誰で、どこにいて、何を情報源にしているのか?

江の島アイランドスパの場合、富裕層を狙い、サービスアパートメントで培ったマーケティング戦略が役立った。もちろん魔法のような答えはないが、以下の項目を押さえれば、相応の成果が得られるだろう。

江の島アイランドスパで定義したターゲットと適正価格は「丸1日滞在してくれて、弁天スパのトリートメントを受け、レストランで食事を楽しみ、平均で2万円使う顧客」とした。

次に、理想の顧客はどこにいるのかを考えた。目を付けたのは富裕層だ。月に1度の「スパデイ」を企画し、ターゲット層にモニターで参加してもらった。来た外国人客は自前のSNS(交流サイト)に発信し、英語のコンテンツを執筆して、自身の友達や家族に宣伝してくれた。本人から貴重なフィードバックをもらい、オンリーワンの発信プランを磨き上げる上で大事なヒントになった。

この層とつながれば、国内の営業マンが一気に増える。貴重な外国人目線を提供してくれる人はすぐ近くにいると実感した。

英語のSNSなどのウェブ戦略も重要だ。江の島アイランドスパでは自社のホームページ、「フェイスブック」「トリップアドバイザー」との連携を意識し、統一感を持たせた。

内容も単なる日本語サイトの英訳ではない。文化的な背景などを知らない外国人客でも施設の魅力が伝わるようにした。

自社の施設が外国人客にどう見られているか、チェックすることも必須だ。トリップアドバイザーなどにある英語の書き込みを読めば、外国人客にとって良かったところは何か、残念だったところは何か、外国人目線での答えがある。

インバウンド対策には営業戦略や広告宣伝の予算をしっかり確保することが必要だ。富裕層を呼び込みたいのに、コストの安い外国人留学生を集めて情報提供しても、目当ての層に口コミは広がらない。

日本には観光資源や土産など、豊富なオンリーワンがある。これからも増え続ける、消費に積極的な訪日観光客とつながれば、無限のチャンスがある。

[日経MJ2017年5月31日付]

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