2017/5/31

岡本 DCとNISAは用途が違いますよね。退職後のための資産形成ということでしたら、まず、第一にDCです。でも、そのためにNISAが全然使えないわけではありません。DCを使った上で、NISAも部分的に使うということはありうる。順位としては、DCがあって、NISAがあって、課税口座ということになるんですけれど。要するに、税金はコストであるという認識をハッキリさせるということでしょうね。

大江 よく「一番良いものを教えてくれ。それに全部入れるから」といった発想になってしまうんですが、そうではないわけです。個人型DC(iDeCo、イデコ)は月々の積み立てで、会社員だと毎月2万3000円が上限です。それ以上は投資できない。すると、それが自分の全資産ではない方が多いと思います。NISAもそうですよね。全体の資産の中で、自分が失業して給料が入ってこなくなったときの備えとして、一定額を定期預金などの現金で持っておかないと怖くて仕方がありません。そういう資産までNISAに突っ込んでしまえ、というのは考えものです。バランスの問題だと思うんです。

馬渕 DCを使っている方の中には、DCの中だけで適正な資産分散をしなければいけないと誤解している方がいます。あなたにはDCしか資産がないんですか、という話です。そこに大きな誤解があるような気がします。

竹川 iDeCoは2017年から加入対象者が大幅に拡大されたため、新たに入れる人に注目が集まっています。けれど、私はむしろ、従来から入れる自営業者や企業年金がない方々が積極的に使うべきだと思います。自営業者は公的年金は国民年金だけですし、まとまった退職金もない。企業年金がない会社員は退職一時金だけで企業年金がありません。国や会社から受け取る年金が手薄なので、自分で準備をする必要があります。iDeCoは60歳までお金が引き出せないことが気になるのだったら、自営業者なら小規模企業共済とiDeCoの両方に入るという選択肢も考えられます。

大江英樹さん

大江 法律上は企業型DCに入っている人もiDeCoを使えるのですが、やる企業はあまりないでしょうね。やろうと思ったら、会社の規約を変更して拠出上限を下げる、すなわち会社が出す掛け金を減らす必要があります。それに労働組合が同意するわけがないですね。

竹川 私も、DC口座については優先的に期待リターンが高い商品を振り向ければよいと思います。一方、NISAは非課税期間が5年なので、注意点もあります。5年を超えて保有する場合、(1)新たに開始するNISA口座の投資枠に移す(ロールオーバー)か、(2)課税口座(特定口座など)に移管することになりますが、いずれも移管時の時価がそのあとの取得価格になります。値上がりしていればよいのですが、値下がりしていたときに課税口座に移すと課税強化になる可能性もあります。

例えば、投資した100万円が非課税期間終了時に80万円になったとします。この場合、課税口座に移管すると、その後の取得価格は80万円になりますから、その後に値上がりして90万円になると(90万円―80万円で)10万円に対して税金がかかってしまいます。でも、実際には損をしているわけですよね。制度が少々複雑なので、制度の理解と運用方針をしっかり決めておくことが必要です。

2018年からは、新たに積立NISAも始まります。積立NISAは投資金額の上限が年間40万円、非課税期間20年という制度です。投資対象は一部の投信などに限定されるため、個別株への投資などを考えている人は既存のNISAを活用することになりますね。

岡本 選択制なんですよね。従来のNISAか積立NISAか、どちらかだけ使える。

竹川 はい、どちらか一方の制度しか利用できません。積立NISAは、買いたい投信が積立NISAの対象になっていて、積み立てで購入していきたい人向きと言えそうです(2017年3月時点)。

■この人に聞きました
馬渕治好さん 世界経済・市場アナリスト
竹川美奈子さん ファイナンシャル・ジャーナリスト
岡本和久さん 投資教育家&ファイナンシャル・ヒーラー
大江英樹さん 経済コラムニスト

日経プレミアシリーズ『投資の鉄人』の一部を再構成

投資の鉄人 (日経プレミアシリーズ)

著者 : 岡本 和久, 大江 英樹, 馬渕 治好, 竹川 美奈子
出版 : 日本経済新聞出版社
価格 : 918円 (税込み)


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