20歳を過ぎてから、最初に衰え始める筋肉はどこ?
この記事では、今知っておきたい健康や医療のネタをQ&A形式で紹介します。ぜひ、今日からのセルフケアにお役立てください。
(1)上肢の筋肉
(2)体幹の筋肉
(3)下肢の筋肉
正解は、(3)下肢の筋肉 です。
最も衰えが早いのは下肢の筋肉、特に大腿四頭筋
運動機能の面で加齢とともに最も衰えていくのが、下肢の筋肉です。約4000人の日本人を対象に、年齢による筋肉量の変化を調べた研究では、20歳を過ぎると、下肢の筋肉量は、上肢や体幹の筋肉よりも早く、そして大きく減少していくことが分かりました(図)。筋肉の老化は、まず脚から始まるのです。
2012年ロンドン五輪などでチームドクターを務めた、順天堂大学大学院スポーツ医学教授で整形外科医の櫻庭景植さんによると、下肢の中でも、とりわけ筋力の衰えの目安となるのが、前ももに位置する大腿四頭筋。大腿四頭筋の筋肉量は、25歳くらいでピークを迎えた後、加齢により減少し、60歳では25歳時の約60%にまで落ち込みます[注1]。櫻庭さんが行った研究によると、2週間ギプスを巻いて下肢の筋肉を使わないでいると、ハムストリング(ももの裏側の筋肉)の筋力は約14%衰え、大腿四頭筋の筋力は、約20%も落ちていたそうです[注2]。
「若さというと、肌のシミや小じわなどの外見を気にしがちですが、一番大事なのは"動ける体"であることです。動かないと、加齢とともに筋肉はどんどん衰えます。特に、大腿四頭筋の筋量や筋力は、外見よりもよっぽど若さのバロメーターといえます」と櫻庭さんは話します。
一方、筋肉を構成する筋繊維でいうと、一般に、遅筋(長時間、力を維持する持久力にかかわる赤い筋肉)よりも速筋(瞬間的に大きな力を発揮する白い筋肉)の方が衰えやすいといわれています。そのため、年をとると俊敏性が失われ、とっさの動きに対応しづらくなるのです。
「例えば子どもの運動会で短距離走やリレーに出場したお父さんが、コーナーを曲がる辺りでバタッと転ぶという現象が見られるのは、速筋が持たなくなるからです。『こんなはずじゃなかった』とショックを受けるかもしれませんが、それは明らかに下肢の速筋が衰えている証拠です」(櫻庭さん)
日ごろの階段の上り下りで息切れがするかどうかや、ハーフスクワット[注3]を楽にできるかどうかを試してみるだけでも、自分の今の筋量・筋力の衰えを実感できるでしょう。普段、まったく運動をせず、下肢を中心に筋量・筋力ともに衰えた状態で突然運動をすれば、思わぬトラブルの元になるので要注意です。
[注1] 越智隆弘著. 最新整形外科学大系(23)スポーツ傷害. p4-6. 第1版. 中山書店.
[注2] 櫻庭景植. 運動療法としての筋力トレーニング. 東京都医師会健康スポーツ医学研修会. 6月3日、2007.
[注3] ハーフスクワット:フルスクワットの半分程度まで腰を下ろすスクワットのこと
[日経Gooday 2017年5月1日付記事を再構成]
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