2017/6/5

カリスマの直言

株価指数ばかり見ていてもこうした企業のダイナミックな動きはわからない。長期の投資家にとっては個々の企業の業績の方が、日経平均が2万円台に乗るか乗らないかより、はるかに重要だ。

企業との対話で個人に満足感

ファンドによっては為替動向を予測しながら投資判断をしている場合がある。その方が運用成績が上がると思いがちであるが、為替動向の予測は当たるときもあれば、当たらないときもある。予測が当たっても為替の水準が既に株価に織り込まれている場合もある。弊社が長期運用するファンドは、あくまで個別企業の分析を主軸にしているので、為替予測は一切していない。そのため、短期的には円高は向かい風となる。

しかしながら、長年の経験則からいえることは、一時的に円高に振れたとしても、いずれは円安方向へと戻ってくる。長期運用では価値ある企業にロングタームで投資することが要諦なので、円高で株価が下がれば、むしろ安く買うチャンスを与えてくれる。

また、長期投資では銘柄を頻繁に入れ替えすることはしない。企業との「対話」を通じて、持続的な価値創造を促すべく、日々努力している。弊社では特に、受益者である一般個人と投資先企業との直接的な接点をつくる対話の場を設けることを重視している。

主宰している「論語と算盤」経営塾の第9期が5月から始まった。定員30人のところ、申し込みは43人。前期3割だった塾生の女性比率は過半数となった

弊社の主な顧客層は、企業の持続的な価値創造への長期投資に共感する一般個人だ。当然ながらプロは何に投資しているかわかっている。であるなら、個人も自分の大切なお金を何に投資しているか知るべきだろう。投資の「見える化」が不十分で短期的な運用成績が振るわないと、不満につながる。

企業との対話を通じて双方が理解し合うことは、個人側はもちろん、企業にも有意義だ。筆者は、資産運用業界が時代の趨勢として求められている「顧客本位」の本質は、投資の「見える化」を促すことだと考える。株価指数を見ているだけでは、投資の見える化にはならないと思う。

渋沢健
 コモンズ投信会長。1961年生まれ。83年米テキサス大工学部卒。87年カリフォルニア大学ロサンゼルス校MBA経営大学院卒。JPモルガンなどを経て、2001年に独立し、07年コモンズ株式会社(現コモンズ投信)を創業、08年会長就任。著書に『渋沢栄一 100の金言』(日経ビジネス人文庫、2016年)など。
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