今回はビックカメラ新宿西口店にて、いわゆる格安スマホと呼ばれるSIMフリースマホの売れ筋を取材した。スマホ売り場全体の売り上げでは、大手キャリアの端末のシェアが8割近くを占めるが、格安スマホの需要は着実に伸びているという。
同店の携帯電話コーナー主任の室井貴宏氏は「“格安スマホ”という言葉がだいぶ浸透したこともあり、最近は高齢な方からも相談を受けることが多くなっています。すでに、詳しい人だけの市場ではないですね」という。そのなかで市場をけん引している人気モデルは以下のとおりだ。
1位●P9 Lite、ファーウェイ・ジャパン、2万3890円(ポイント10%)
5.2型フルHD液晶を搭載したAndroid 6端末。nanoSIMスロットを2基備え、メモリーとストレージは2GB/16GBとなる。バッテリーは3000mAhで、サイズと重量はW72.6×D7.5×H146.8mm/約147g。
2位●ZenFone 3 Laser、エイスーステック、2万7780円(ポイント1%)
5.5型フルHD液晶搭載のAndroid 6.0.1端末で、microSIMとnanoSIMスロットを各1基備える。4GBメモリーと32GBストレージを採用し、バッテリーは3000mAh。W76×D7.9×H149mm/約150g。
3位●Priori 4、フリーテル、1万4770円(ポイント10%)
1280×720ドットの5型液晶を採用するAndroid 6端末。2GBメモリーと16GBストレージを備え、microSIMとnanoSIMに両対応する。バッテリーは4000mAh。W71.5×D9.5×H144.8mm/約167g。
4位●VAIO Phone A、VAIO、2万4770円(ポイント1%)
5.5型フルHD液晶搭載のAndroid 6.0.1モデル。3GBメモリーと16GBストレージを備え、バッテリーは2800mAhとなる。microSIMとnanoSIMに両対応し、W77×D8.3×H156.1mm/約167g。
5位●arrows M03、富士通、3万1880円(ポイント10%)
nanoSIMに対応するAndroid 6端末で、メモリーとストレージは2GB/16GB。バッテリーは2580mAhで、液晶は1280×720ドットの5型となる。サイズと重量はW72×D7.8×H144mm/約141g。
格安スマホのボリュームゾーンになっている2万円台のモデルが多数ランクインしているが、ストレージ容量やバッテリー容量、カメラ性能の差は大きく、スペックの幅は広めになっている様子だ。室井氏は「ビジネスパーソンがサブ機として選ぶ場合と、初めてのスマホとして購入される場合では、重視されるスペックが変わってきますからね。いまは格安スマホの購入層が広がっているところなので、それを反映しているところはあるでしょうね」と語る。
[注]掲載している価格は、2017年5月10日14:00時点のもの。日々変動しているので、参考程度に見ていただきたい。
・バッテリー容量の差は大きい。一般的な安心ラインの目安は2800mAh
・ストレージは16GB以上を目安にしたい。ゲームをするなら32GB以上を
・1年以上使い続けるなら、メモリー容量は最低2GB。3GB以上が理想
コスパ高な2機種が盤石の人気
一番人気はファーウェイ・ジャパンの「P9 Lite」。フルHD液晶と3000mAhバッテリー、1300万画素カメラにオクタコアCPUといった仕様のモデルが2万円台前半で買える割安さから、定番の人気を得ているそうだ。
「大手キャリアならば7万~8万円するスマホに匹敵する作りなので、コストパフォーマンスの良さからよく選ばれています。初めてスマホを導入するという年配の方から、日本滞在中のスマホを探している外国人の方まで、購入層は幅広いですよ」とのこと。
加えて、SIMカードとのセット購入値引きも人気を後押ししているとか。「SIMカードとのセット値引きは格安スマホ全体の魅力ですが、P9 Liteは端末代が53%引きになるのが大きいですね。8割くらいの人がSIMとのセットで買われます」
続く2位はエイスーステックの「ZenFone 3 Laser」。こちらもコストパフォーマンスの高さから幅広い層に人気を集めているそうだが、とくにカメラ性能を重視する女性からの支持が厚いという。
「カメラのピントが素早く合う『レーザーオートフォーカス』機能を目当てで選ぶ方が多いです。本体のストレージが32GB、メモリーが4GBあるのも決め手になっています」
安さの「Priori 4」、ビジネス人気の「VAIO」
3位はフリーテルの「Priori 4」。800万画素カメラに2GBメモリーと16GBストレージといった割り切った仕様ながら、1万5000円を切る安さから入門機的な人気を集めているモデルだ。
「P9 Lite以上に割り切って『とりあえずスマホを試してみたい』という方に選ばれますね。カメラが1000万画素ないところをネックに感じる人も少なからずいらっしゃいますが、SIMカードとセットなら端末代が100円になるので、その点を評価して購入を決める人もやはり多いです」
4位に入ったVAIOの「VAIO Phone A」も、同社の端末としては破格といえる2万円台半ばの価格設定で、十分に入門機の圏内に入る。しかし、こちらはエントリーとしてではなく、仕事で使うサブ端末として指名買いされることが多いそうだ。
「昔からVAIOブランドのノートPCやソニーのビジネスツールを使ってきた人からの人気がすごいモデルです。これまでのVAIO Phoneは5万円台だったので、一気に手が出しやすくなったということでブレイクした感があります」
企業が複数台をまとめ買いすることもよくあるそうだ。
おサイフケータイが使える「arrows M03」
5位は、ランキング上位で唯一の3万円台となった富士通の「arrows M03」だ。こちらはおサイフケータイ機能と防水仕様が人気を支えているという。
「現行機種のなかではおサイフケータイ機能が使える最安の端末となります。フィーチャーフォンやキャリアの端末から乗り換える際、おサイフケータイ機能はなくては困るという方が一定数いらっしゃるので、M03の人気も安定していますね。同じく、防水仕様を重視される方もいらっしゃいます」
はみ出し情報…高級機ではDSDS対応の「Mate 9」が人気
格安スマホのカテゴリーに含まれるが、高価なハイスペックモデルも安定した人気を獲得している。このラインで売れ行きが目立っているのは、ファーウェイ・ジャパンの「Mate 9」という。取材時の価格は5万5690円(ポイント10%)だった。
5.9型のフルHD液晶を採用するAndroid 7.0端末で、2枚のSIMを同時に待ち受け状態にできるDSDS(デュアルSIM・デュアルスタンバイ)に対応している。また、2000万画素のモノクロカメラと1200万画素のカラーカメラも搭載しており、写真をクリアに撮影できる特徴を備えている。メモリーは4GBで、ストレージは64GBだ。
「全方向に優秀な端末で、30~40代の男性にとくに人気がありますね。カメラ性能に惚れ込む人やDSDSが使いたい人など、さまざまな理由でファンを獲得している印象です」
1977年生まれ。建設業界と葬祭業界を経て2002年にライターへ転職し、テクニカル系の記事執筆と死の周辺の実情調査を進める。
[日経トレンディネット 2017年5月16日付の記事を再構成]