「自分を生かせる働き方考えて」 中川智子さん
ロイヤルホテル執行役員(折れないキャリア)
「女性だからこそできる『おもてなし』がある」。前社長の助言から学んだ考え方だ。ロイヤルホテルで女性初の執行役員として、グループ全体の営業企画などを手掛けている。「接客現場では多くの女性が活躍している。女性のモチベーションを上げることこそが自分の使命」と意気込む。
学生時代は外国人客が訪れる奈良、神戸などで過ごした。大学では外国語を専攻。「語学を生かしながら、日本の文化や伝統を伝えられる会社で働きたい」と思いロイヤルホテルに入社した。これまでのキャリアを振り返ると、3つの「女性初」が転機になった。
最初の「女性初」は入社4年目に配属されたセールス部。「男性と同じように働かなければ」と考えたが、体力の差を痛感。重い手荷物やハードな勤務日程に苦しみ「もう辞めたい」と帰宅後に嘆く日々が続いた。しかし顧客から見ればロイヤルホテルの顔である。「これまで積み上げてきた信頼関係を崩すわけにはいかない」と強い意志を持って耐える日々だった。
次の転機は入社10年目。1993年に女性として初めての海外赴任の話が舞い込んだ。しかし入社7年目に結婚し、長女はまだ2歳と小さい。仕事と家庭の間で葛藤した。しかし「断れば2度と同じチャンスはこない」という思いは変わらなかった。同居する両親と夫に子どもの面倒について頼み込み、海外へ飛んだ。
最大の転機は08年。女性初の宿泊部長になったときだ。部下が約120人と一気に増えただけでなく、スタッフは入社後ずっと宿泊部を歩み続けてきたベテランぞろい。一方で自分の経験は1年半程度。話を聞いたときは「本当にできるだろうか」と不安を持った。
決断を後押ししたのは、当時社長だった川越一氏。「専門的なことは経験が長いスタッフに任せればいい。あなたにはあなたにしかできないことがある。女性スタッフをどのように育てていくかを考えなさい」。自分らしく働く考え方を学んだ言葉だ。
4月からは女性初の執行役員として、グループ全体での販売促進を主導する。新たな責務に気を引き締めるという中川さんはこう締めくくった。「私が仕事を通じて得た人とのつながりは一生ものの財産になっている。野望を持つ女性がもっと増えたらうれしい」
(聞き手は千葉大史)
[日本経済新聞朝刊2017年5月29日付]
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