MONO TRENDY

私のモノ語り

野村萬斎 考える着回し、一度買ったら末代までの精神

2017/6/2

主演映画『花戦さ』が公開される野村萬斎さん

日本の伝統芸能「狂言」を継承する一方、『陰陽師』『のぼうの城』などの映画に主演し、ヒットに導いてきた野村萬斎さん。その芸に集中するためのモノへのこだわり、「一度買ったら末代まで」の精神とは。

■装束は「離見の見(りけんのけん)」に合うものを

「モノはやっぱり、良いものがほしい。本業でいえば、装束(衣装)、面、扇。そういうものには、すごくこだわりを持ちます。

例えば、装束。僕は2011年から、福島の復興を祈願するような形で、『MANSAI ボレロ』という独舞を上演してきました。狂言の『三番叟(さんばそう)』(※1)とラヴェルの『ボレロ』(※2)が音楽的に似ていることから創作したものです。

※1:天下泰平を祈る儀礼曲『翁(おきな)』の後半部分および狂言方の舞。※2:フランスの作曲家、モーリス・ラヴェルが1928年に作曲したバレエ音楽。

その装束は、もともとは巫女(みこ)的なイメージのものでした。でも17年4月に舞うにあたって、『天地人』とか『生と死』とか、いろんな次元を飛んでいくイメージがほしいと思った。そこで鳳凰(ほうおう)の柄がドカンと描かれた狩衣(かりぎぬ)を新調したんです。それをまとうことで、自分の中で鳥的なイメージが膨らんで、舞もいろいろ変わりました。

狩衣は狂言の世界では引きずらない。しかし新調した『MANSAI ボレロ』では大きな鳳凰の柄にしたので、長く尾を引きずる形に(世田谷パブリックシアター開場20周年記念公演『MANSAIボレロ』 撮影:細野晋司)

自分の意に沿った装束じゃないと、かえって邪魔になることもある。僕らの世界では「離見の見(りけんのけん)」という言い方をしますけど、自分が客観的にどう見えているかをイメージしながら舞うときに、自分のイメージと装束が違うと、どうも集中できない。白を着ているつもりなのに、実際の装束が赤かったりすると、やっぱりまあ、それはねぇ(笑)。

では邪魔にならないように装束を着ないとどうなるか。『MANSAI ボレロ』で実験したことがあるんですけど、やっぱり僕ら狂言師は、裸にはなれないと思いました(笑)。例えば、狩衣のような装束には大きな袂(たもと)があるので、手をすっと動かせば、それが翻って動きが出る。でも裸や洋服ではその翻るものがないので、手自体を大きく動かして見せなくてはいけない。

装束によって、身体も動きも違ってくる。素材感も、いつもと違うものを着たりすると違和感がありますから、その素材感に合わせていく。モノをなじませるというより、こちらがそのモノになじむようにしていくんです」

■役者が花を咲かせるために必要なもの

狂言師としての活動と並行して、映画出演も行ってきた萬斎さん。17年6月3日に公開される主演映画『花戦さ』は、市川猿之助さん、中井貴一さん、佐々木蔵之介さん、佐藤浩市さんらと共演した時代劇。暴君となった豊臣秀吉に対し、花を武器に戦ったという実在の花僧・池坊専好を演じる。豪華なキャストの中で、萬斎さんの武器は何かと聞いてみた。

「古典芸能の人間は、ある種の様式美というか、型を持っています。型は誇張も含みますから、一種のダイナミズムを生む。今回のように天才を演じるときには、そういう大胆なキャラクタライズが生きるのではないかと思います」

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