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野村萬斎 考える着回し、一度買ったら末代までの精神

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NIKKEI STYLE

日本の伝統芸能「狂言」を継承する一方、『陰陽師』『のぼうの城』などの映画に主演し、ヒットに導いてきた野村萬斎さん。その芸に集中するためのモノへのこだわり、「一度買ったら末代まで」の精神とは。

装束は「離見の見(りけんのけん)」に合うものを

「モノはやっぱり、良いものがほしい。本業でいえば、装束(衣装)、面、扇。そういうものには、すごくこだわりを持ちます。

例えば、装束。僕は2011年から、福島の復興を祈願するような形で、『MANSAI ボレロ』という独舞を上演してきました。狂言の『三番叟(さんばそう)』(※1)とラヴェルの『ボレロ』(※2)が音楽的に似ていることから創作したものです。

※1:天下泰平を祈る儀礼曲『翁(おきな)』の後半部分および狂言方の舞。※2:フランスの作曲家、モーリス・ラヴェルが1928年に作曲したバレエ音楽。

その装束は、もともとは巫女(みこ)的なイメージのものでした。でも17年4月に舞うにあたって、『天地人』とか『生と死』とか、いろんな次元を飛んでいくイメージがほしいと思った。そこで鳳凰(ほうおう)の柄がドカンと描かれた狩衣(かりぎぬ)を新調したんです。それをまとうことで、自分の中で鳥的なイメージが膨らんで、舞もいろいろ変わりました。

自分の意に沿った装束じゃないと、かえって邪魔になることもある。僕らの世界では「離見の見(りけんのけん)」という言い方をしますけど、自分が客観的にどう見えているかをイメージしながら舞うときに、自分のイメージと装束が違うと、どうも集中できない。白を着ているつもりなのに、実際の装束が赤かったりすると、やっぱりまあ、それはねぇ(笑)。

では邪魔にならないように装束を着ないとどうなるか。『MANSAI ボレロ』で実験したことがあるんですけど、やっぱり僕ら狂言師は、裸にはなれないと思いました(笑)。例えば、狩衣のような装束には大きな袂(たもと)があるので、手をすっと動かせば、それが翻って動きが出る。でも裸や洋服ではその翻るものがないので、手自体を大きく動かして見せなくてはいけない。

装束によって、身体も動きも違ってくる。素材感も、いつもと違うものを着たりすると違和感がありますから、その素材感に合わせていく。モノをなじませるというより、こちらがそのモノになじむようにしていくんです」

役者が花を咲かせるために必要なもの

狂言師としての活動と並行して、映画出演も行ってきた萬斎さん。17年6月3日に公開される主演映画『花戦さ』は、市川猿之助さん、中井貴一さん、佐々木蔵之介さん、佐藤浩市さんらと共演した時代劇。暴君となった豊臣秀吉に対し、花を武器に戦ったという実在の花僧・池坊専好を演じる。豪華なキャストの中で、萬斎さんの武器は何かと聞いてみた。

「古典芸能の人間は、ある種の様式美というか、型を持っています。型は誇張も含みますから、一種のダイナミズムを生む。今回のように天才を演じるときには、そういう大胆なキャラクタライズが生きるのではないかと思います」

「これだけ豪華なキャスティングになるのは、脚本がすばらしいからですよ。やはりホン(脚本)に魅力がないと、役者は集まらないと思います。自分が演じた役についても、大きな充実感を覚えています。

撮影で印象に残っているモノは数珠。持道具さんが新品の数珠を用意してくださったんですが、狂言の数珠と大きさが違うし、握り方も違う。だから手になじませておかないといけないと思って、普段からずっと手に持っていました。

あとは、はさみ。花僧ですから、はさみは必須アイテム。撮影前から池坊会館の大会にも数回通い練習しました。本番では持道具さんが『専好』と書いてある僕用のハサミを用意してくれたので、それもまた、手になじませて。でも、それはそんなにたいしたことではなく、役者としての基本の作業ですけれどね(笑)。

京都の時代劇は、場を盛り上げるために、スタッフさんがみんなものすごくこだわってくれる。織田信長が専好に山のような花道具を下賜するシーンでは、花道具のすべてに、織田家の家紋が入っているんですよ。あんまり見事なので、『これ、どうやって作ったの?』と聞くと、ひみつがあるらしいんです(笑)。工夫することで、そんなにお金がかからない形でしっかりとした良いものを作っているんです。

花や花器、茶器などについても、みなさんこだわり抜いて作ったり、選んだりしている。それがあることで役者にとっては大きな助けになり役に入りやすくなりますし、そういうもの、ひとつひとつの存在感が、空間や作品に奥行きを与えていると思います」

先祖代々の「一度買ったら末代まで」の精神

「作品にキャラクターという花を咲かせるのが役者」という萬斎さん。舞台に映画に花を咲かせて忙しいが、プライベートではどんな買い物をしているのか。

「最近、買ったものですか。昨日、ジャケットと靴を買いました。洋服は、オーダーメードもしますし、つるしでも買いますよ。選ぶときのポイントは着回しがきくもの。『今持っているあの服にも合うな』とか、ほかの組み合わせにも流用できるかどうかを考えます。着回しを考えるのは、コストパフォーマンスを気にしているわけではなく、買ったものを大事に使いたいからです。

狂言師の面や装束は『面・装束』といい、先祖から預かっているものです。次の世代に渡さなければならないもの。面・装束だけでなく、『一度買ったら、末代まで使う』という精神も受け継いでいます。

面だって、木の塊といえばそうだけど、それを使ってきた人間の魂、想いがそこに詰まっている。だから面を着けるときは『いただく』といって、必ず一礼してから着ける。装束は、またいではいけないと教えられた。そういう世界で育ってきたから、新しく買ったものでも同じように大切に扱っていく精神が身についたのかもしれませんね」

野村萬斎
 1966年生まれ、東京都出身。狂言師。人間国宝の祖父・故六世野村万蔵と父・万作に師事し、3歳で初舞台を踏む。97年にNHK連続テレビ小説『あぐり』に出演以降、映像でも活躍。主な映画は『乱』(85年)、『陰陽師』シリーズ(2001年・03年)、『のぼうの城』(12年)、『スキャナー 記憶のカケラをよむ男』(16年)など。02年から世田谷パブリックシアターの芸術監督に就任、芸術の普及にも貢献している。

『花戦さ』

 戦国時代、破天荒ないけばなで人々を魅了した花僧・池坊専好。親友の茶人・千利休を死に追いやられたことから、天下人となった豊臣秀吉に「花」で戦いを挑む。 脚本・森下佳子 監督・篠原哲雄 原作・鬼塚忠(『花戦さ』角川文庫刊) 出演・野村萬斎、市川猿之助、中井貴一、佐々木蔵之介、佐藤浩市 6月3日(土)全国ロードショー

(ライター 泊貴洋、写真 藤本和史)

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