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2020フォーラム

広い空港も電動車いすでスイスイ 羽田で自動搬送実験 パナソニックなど「アクセスフリー」目指す

2017/5/30

利用者はスマートフォンから電動車いすや「追従走行カートロボット」に指示を出す(都内で2月に開かれたデモンストレーションの様子)

 2020年の東京五輪・パラリンピックに向けて、日本の玄関口となる空港の「おもてなし度」に注目が集まっている。様々な国から訪れる障害者や高齢者など多様な人々が快適に情報やサービスを利用できるようになるにはどうすればいいのか。羽田空港を舞台にアクセシビリティー(アクセスしやすさ)という課題の解決に取り組むパナソニックの動きを追った。

 障害者や高齢者が羽田空港に到着すると、スマートフォン(スマホ)であらかじめ予約していた電動車いすと自動走行する「追従走行カートロボット」がお出迎えし、施設内の目的地まで本人と荷物を自動で搬送する。利用後はそれぞれが自動で元の待機場所に戻る。空港内で実験中のプロジェクトの将来像はこんなイメージだ。

 羽田で実験した電動車いす本体を開発したのはベンチャー企業のWHILL(ウィル、米カリフォルニア州)で、パナソニックの安全センサーを搭載。人が乗って、マウスカーソルで操作する。センサーが障害物や人を探知して自動停止するのが特徴だ。

 昨年は人や障害物を避ける実験のほか、通称「カルガモ走行」と呼ばれる複数台の電動車いすでの自動追従走行、利用後の無人回収実験などを行い、一定の成果をあげた。実験に携わったパナソニックのパラリンピック統括部主幹の黒川崇裕さんは、「初めて(電動車いすに)乗った人が違和感なく操作できた」と振り返る。

パナソニックの黒川崇裕パラリンピック統括部主幹

 空港内では飛行機が着陸してから入国審査や荷物の受け渡しをして空港を離れるまで相当な距離を移動する。障害者や高齢者にとって、広い空港ターミナルを移動することは負担が大きく、迷うことさえある。せっかく日本での滞在を楽しもうと期待が膨らんでいるのに、空港を出るまでに疲弊してしまっては台無しだ。

 電動車いすとカートロボットの実用化は、空港スタッフの負担軽減にもつながる。現状では車いすを貸し出した場合、利用した後に車いすをスタッフが元の保管場所に戻す必要がある。電動車いすが自力で戻れるようになれば、その作業が不要になり、案内業務など他の仕事に時間を割くことができるというわけだ。

 そもそも移動困難者とは、「障害者、高齢者にとどまらず、乳幼児を連れた家族なども含まれる」というのが黒川さんの考え。移動支援ロボットが実用化すれば、超高齢化社会に突入した日本では恩恵を受ける人は少なくないとみている。

 障害物や人を避ける自動走行技術は、パナソニック健康保険組合傘下の松下記念病院(大阪府守口市)などで稼働する移動ロボット「ホスピー」で培った技術を活用した。病院内で薬剤や患者の検体を自動搬送するロボットで10年以上の実績があるという。

 この実験は管理・運営会社の日本空港ビルデングが16年に羽田空港内で始めた「羽田空港ロボット実験プロジェクト」の一つで、全体では清掃、移動支援、案内の3種類のロボットの実証実験を行った。電動車いすについては、今後も実証実験を継続する考え。すでに技術面ではほぼ課題を解決できるレベルに達しているといい、今後は「空港のシステムにどう組み込んでいくのか、安全面や責任の所在をどうするのかといった課題を解決する段階にきている」と黒川さんは語る。さらに実証実験に取り組み、課題の洗い出しに努める。

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