売れるキーワードは? 17年前半のヒット商品分析
2017年上半期、個人消費はどのような変化を見せたのか。エンタメから食品・飲料、AV・家電まで、5大ジャンルのヒット商品から「売れるキーワード」を導き出した。また、「けもフレ」「ボードゲーム」などの不思議ヒットも検証。下半期ブレイク候補も徹底予測した。
2016年8月の公開から、一気に国民的なアニメ映画の座に躍り出た『君の名は。』(東宝)。このメガヒットによって、消費者がアニメに向ける目は様変わりした。従来なら、コアなアニメファンだけの世界で埋もれてしまっていた作品に光が当たり、想定以上のヒットとなる「ニッチの大衆化」が進行した。
SNSを介して共感が広がる「ニッチの大衆化」
太平洋戦争の終戦間際の日常を描いたアニメ映画『この世界の片隅に』(東京テアトル)は、当初の公開館数が63館と小規模なスタートだったが、「泣ける映画」としてSNSで話題が拡散。アニメファン以外の一般層も"宣伝部隊"となり、上映館数は当初の約5倍に達した。
また、動物をテーマにしたアニメ「けものフレンズ」(テレビ東京系)は、放送のたびに尻上がりにファンを拡大した。ビジュアルは萌え系アニメに見えるが、その裏に動物好きやSFファンもうならせる緻密な仕掛けを用意。それぞれのコアなファン層がつながり、大きなうねりとなった。
この上半期は、食品や日用品、文房具など、「もうこれ以上の進化はない」と思われていた商品の本質価値に踏み込み、ヒットしたケースも目立った。
ど真ん中を価値向上する「本丸チャレンジ」
湖池屋が2月に発売したポテトチップスの新ブランド「KOIKEYA PRIDE POTATO」は、創業時の原点に立ち返り、使用するジャガイモや皮のむき方、洗い方、揚げ方などを一新した。同社の"看板"であるのり塩味もグレードアップ。そうして老舗の底力を大々的にアピールしたことが信頼感につながり、一部商品を早々に出荷休止せざるを得ないほど売れた。
ここ数年で「芯が折れない」ところまで行き着いたシャープペンシル。それを飛び越えたのが、ぺんてるの「オレンズネロ」だ。従来からのパイプが芯をガードする仕組みに加え、最初に1回ノックすれば芯がなくなるまで書き続けられる「自動芯出し機構」を搭載。税別3000円もする品だが、月産3000本というレアさも手伝って、「入荷するたびに即完売する状態が続いている」(ロフト)ほどの人気だ。
ライオンの「hadakaraボディソープ」は、従来の商品で洗い流されがちだった保湿成分を肌に吸着する仕組みを導入。ハウス食品の濃縮ペーストルウ「きわだちカレー」は、粉末原料が中心の固形ルウに対してみずみずしい原料を使うことなどで、段違いの味わいに仕上げた。いずれも、果敢に「本丸チャレンジ」をしたからこそ生まれたヒットだろう。
私らしさを表現する「誇れるたたずまい、語れる中身」
自分だけで香りを楽しむガジェットに、フォトジェニックな箱を採用した本格チョコレートなど。持っているだけで「私らしさ」を表現できる商品が売れた。チョコなら産地別の味わいの違いを楽しめるなど、奥深い世界感を持ち、人に語りたい消費者の知的好奇心を満たした。
親も思わず納得する「子供プレゼン文具」
「ユニ ナノダイヤ カラー」は、文字を色分けして書いたり、筆圧によって濃淡を付けて図やグラフを描くなど、勉強のまとめノートを作成するのに役立つカラーシャープ芯。従来品より滑らかに書けて発色が良く、きれいに消せる。購入時、子供が親にプレゼンしやすい納得の機能性で売れた。
(日経トレンディ編集部)
[日経トレンディ2017年6月号の記事を再構成]
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