不動産・住宅ローン

プロが教える住まいのキホン

欠陥住宅をつかまないために 「ひと・約束」見極める 建築家・米田耕司 弁護士・岡田修一

2017/6/7

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一級建築士と建築に詳しい弁護士がプロの視点から住宅建築に関する基礎知識、トラブルの予防法や対処法などを紹介する新連載「プロが教える住まいのキホン」。今回からスタートです。マンションや建売住宅など、すでにできあがっている住宅を購入する際の注意点やトラブル予防法についても紹介する予定です。

 雨漏りや建物の傾きなど、欠陥住宅のトラブルが後を絶ちません。私たち建築家や建築士、弁護士といったプロに相談が持ち込まれ、最終的に法廷闘争にまでいたるような深刻なトラブルも増加傾向にあるといわれています。「欠陥住宅をつかまないためにはどうしたらいいのか?」という質問を受けることがありますが、住宅は基本的にオーダーメードであるためトラブルの原因も様々。すべてのケースに当てはまる万能の処方箋は残念ながらありません。ただ経験上、トラブルが発生する原因はある程度、類型化することができ、原因を知れば防ぐための対策も浮かび上がってきます。欠陥が生まれるパターン別に原因とその対策を紹介します。

■施工ミスや手抜き工事

 「欠陥」と聞いてまず思い浮かぶのが「施工ミス」「手抜き工事」でしょう。例えば雨漏り、耐震強度の不足、壁のひび割れ、建物の傾き、揺れ、強度の床鳴りなどは何らかの工事のミスや手抜きが原因となっていることがほとんどです。こうしたミスや手抜きを原因としたトラブルは、工事を手掛けるのが中小規模の建築会社でも、大手のゼネコンやハウスメーカーでも、さして確率は変わらずに発生しています。これも欠陥住宅の特徴のひとつといえるかもしれません。実際に現場で住宅を造っているのは下請けの大工など職人です。そうした現場の職人の質の良しあしで住宅の品質が大きく左右されるのが現実で、それは元請けとなる建築会社の大小によってあまり変わらないのが住宅建築の現状です。

 では、これらのトラブルを予防するためにはどうすればよいでしょうか。もちろん、設計事務所(建築家)に依頼して、設計監理と施工を別々にすればベストです。また、設計事務所や建築会社選びに時間をかけ、契約前に図面と実作(その会社が受注して建てた住宅の実物)の両方を見て、誠実な施工者に依頼することはもちろん大切です。ただ正直なところ、住宅は大勢の人間が共同作業で建てるものなので、人的ミスを100%防ぐことは難しいと言わざるをえません。

 一方、手抜きは意図的なものなので、設計施工で依頼する場合でも、手抜きが発生しにくい現場体制をつくることは可能です。そうした体制のもとではミスの発生確率も相対的に下がります。そうした現場体制を直接的につくるのは主として現場監督になりますが、建て主である消費者においてもできることはあります。まず、現場監督とよくコミュニケーションを取り、分からないことがあればちゅうちょなく質問することです。定期的に現場に行き、職人らと会話をすることだけでも現場の雰囲気はかなり変わります。気軽に質問できる関係をつくりましょう。

 日本の建築現場では伝統的に、建て主は現場のことはプロにすべてお任せするという感覚が強く、現場側も素人である建て主に口を出されるのを嫌うといった傾向があります。しかし、現場の大工の棟梁(とうりょう)と建て主に個人的な信頼関係が残っていた時代と異なり、現在ではそうした「お任せ体質」がミスや手抜きを生む温床になっていることは否定できません。

 確かに建築は極めて専門的であり、素人の建て主がお任せにしてしまいたい気持ちになることはわかります。ただ建築の重要な部分については、ネット情報や現場での質問である程度、カバーできます。たとえ表面的であっても、そうした勉強をした建て主が何度か現場を見たり、現場監督らと会話したりすると、問題のある現場のちょっとした違和感くらいは感じることができます。その違和感について気軽に質問していくだけでも、現場はミスや手抜きを許さない雰囲気になります。ミスや手抜きを完全に防ぐことはできないにしても、建て主が現場にお任せにせず、一定の勉強と手間をいとわず、現場とコミュニケーションを取っていくだけでもトラブル発生の確率はある程度、下げることができます。

■現場作業員の腕の悪さ

 現場作業員の腕の悪さは「ミス」や「手抜き」ではなく、普通に作業をしているつもりでも、その作業員の腕の悪さによって、塗装の色むら、塗り壁のデコボコ、壁紙のよじれなどの問題が発生します。その地域で家づくりを一手に担っている大工の棟梁が、責任をもって職人を鍛えるといった古き良き時代は過ぎ去りました。工法のプレハブ化や人手不足の中、十分な研さんを積んでいない作業員や、建築技法について知識が不足した外国人作業員を現場に送り込まざるを得ない業界の実情もあります。

 いざ問題が発生した場合も、腕の良しあしは相対的な評価になります。建て主側が「これはひどいではないか」と苦情を言っても、建築会社側が開き直って「いや、どの住宅もこんなものですよ」などと補修を拒否して、お互いの主張が平行線をたどると、裁判所の判決という形でジャッジを受けるしかないというケースも珍しくありません。

 事前に対策はないのでしょうか? 建て主が建築会社の人を見ることや現場とコミュニケーションを図ることで、現場にいい意味での緊張感を持たせることができれば、作業員の選定や作業自体もおのずから慎重になり、少なくとも「目も当てられない」ようなクオリティーのものはできにくくなります。

 本来は設計監理者である建築士にそうした手抜きを防ぐ役割を果たすことが期待されるのですが、監理者が建築会社の関係者や社員であるような契約の場合、身内同士での厳しいチェックは期待しにくいでしょう。その場合は相談役として、現場を見てもらえる第三者の建築家を探しておくのも一案です。

■約束が曖昧… 守られない

 工事の途中で「話が違う」という建て主の言い分を施工者が聞いてくれず、契約解除などの破綻をきたす最悪のケースもあります。設計者、施工者を問わず実績や信頼性はもちろんですが、住まいづくりはプライバシーに立ち入る作業ですので、人間関係は重要です。これらの人選を誤るとわだかまりが大きくなり、施工者から契約解除され訴訟に至った悲しいケースもあるのです。

 約束したことが守られないことでもトラブルは起きます。例えば、以前の建物の基礎や浄化槽といった地中障害物が見つかって別途工事が発生した場合や、工事中に設計変更が生じた場合の手配の遅れなどが原因で工期が遅延し、引渡し前に代金精算の問題と連動してトラブルになることがあります。工期や別途工事に関連する問題などは契約書に明記されているか確認し、変更などが生じた場合の工期と金額の増減については施工者に事前に説明を求め、柔軟に協議することが大切です。

 必要なところに要求したはずのものがない、仕様や性能が違う、寸法が違うなど、建て主が望んだものと違うものができてしまうといったトラブルもあります。原因としては、寸法の測定や設計、発注のミスが絡む場合もありますが、私たちのところに相談に来る事例では、むしろ、建て主と建築会社の認識の違いを原因とするものがかなりの割合を占めます。

 建て主には簡単な図面・仕様書しか渡されておらず、本来なら部材の品質や数量、単価などが詳しく記載されるべき見積書が「一式」表示になっているなど、どういった建物が建つのかという基本的情報が建て主に十分に伝わっていないことがあります。建て主もお任せ感覚で、間取りや外観のイメージ図以外の細かな図面には興味を持たない人も多いようです。そのため、いざ出来上がってみると、建て主が考えていた住宅とかけ離れたものだったということも珍しくありません。

 契約後の現場でのやりとりで変更が追加されることはよくあることですが、それが書面などで十分に記録されていないと約束の存在や内容が曖昧となり、建て主は追加や変更を依頼したという認識にもかかわらず、完成した住宅ではそれが十分に反映されていないこともありますので注意が必要です。

(監修:米田耕司)

米田耕司
 
建築家(日本建築家協会登録)。一級建築士事務所米田耕司建築研究室主催。建築相談委員として長年、市民の建築相談を受ける。紛争解決にも取り組むようになり、弁護士会などで講演経験も多く、法曹界との親交も深い。私的鑑定書作成や公的機関の紛争処理専門委員などの経験が豊富。東京都世田谷生区生まれ。趣味は、音楽、フライフィッシングや卓球など。
岡田修一
 
弁護士。2000年弁護士登録。鹿野・岡田法律事務所所属。不動産関係紛争、特に建築紛争を中心的取扱業務としており、訴訟・調停・示談交渉など建築紛争の受任事件は100件を超える。専門家以外にも消費者向けなどの建築関係の講演経験が多く、昨年までに14都府県で講師を務めた。三重県四日市市出身。趣味は野球観戦、スキューバダイビングなど。

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