図書館サービス進化中 スマホで検索、リスト管理も

2017/6/1

本をさがしたり、読書歴を管理したりする図書館の関連サービスが進化している。全国の図書館の本をまとめて検索できる無料の民間サイトもあり、うまく使いこなせば読書習慣が変わるかもしれない。

「ここ2年ほどは年70~80冊のペース。図書館サービスが便利になったおかげで本をよく読むようになった」。東京都在住の40代会社員、阿部雅彦さんは、パソコンやスマートフォンで使えるサービスを駆使し、自宅と勤務先それぞれの近くで利用登録している図書館から効率よく本を借りるようになった。

図書館の本を検索したり、貸し出し予約したりするシステムは自治体ごとに異なる。このため「目当ての本があるか」などを調べるには、複数のサイトにアクセスして書名や著者名などを繰り返し入力しなければならない。こうした面倒をなくせるとして人気が高まっているのが「カーリル」を代表格とする図書館の一括検索サイトだ。

カーリルでは、まず自分の利用している図書館を登録。そのうえでキーワード検索をすると、どこの図書館に蔵書があるか、貸し出し中かどうかが表示される。さらに「予約する」をクリックすると、そのまま図書館サイトにつながるので手間が省ける。図書館は自治体、大学などの単位で10まで登録できる。

貸し出し状況や予約の可否が色で分かる(カーリル)

こうした一括検索をおおむね数秒でこなせるのもカーリルの特長だ。検索結果は本の表紙などがカラー表示され、「貸出可」なら青枠、「貸出中」なら黄枠で囲まれていて見やすい。運営会社、カーリル(岐阜県中津川市)の吉本龍司社長によると「一般利用者は月間で約60万人に達している」という。

「国立国会図書館サーチ」は国内で出版される本の情報をほぼ全て調べられるほか、専門分野の学術論文、デジタル化された古典資料も検索できる。カーリルと同じく自分の利用する図書館を設定しておけば、そのまま予約画面に進める。国立公文書館、美術館、博物館のデータベースとも連携している。

カーリルと国会図書館サーチのシステム仕様は無償公開されており、これらをベースに開発されたユニークなサービスも増えてきた。

複数の図書館を使うと、予約したり、借りたりしている本が数十冊にのぼることがある。iPhoneで使えるアプリ「図書館日和」は、カーリルの検索で見つけた本をリストにして「予約した」「借りた」といった管理ができる。自由に記入できるメモ欄に読みたいと思った動機や感想などを入力しておけば、簡単な読書日記にもなる。

自宅や学校、勤務先がなくても利用登録できる場合も

同志社大学の原田隆史教授がネットで無償公開するのは表計算のエクセルで国会図書館サーチを利用できる仕組み。ダウンロードすれば、クリック1回で検索結果を500件まで自分のパソコンに取り込める。データの順番を入れ替えたり、自分で情報を書き加えたりもできるので、ある分野の本や資料をしらみつぶしに当たる研究などに役立ちそうだ。

目当ての本が自分が利用する図書館になくても、同じ都道府県の自治体間で本を融通する「相互貸借制度」が使えるかもしれない。最寄りの図書館で申し込めば取り寄せてくれる。例えば京都府では、京都府立図書館など公立図書館の700万冊と4大学の図書館にある本が対象。相互貸借の本を運ぶ配送車を週2便、巡回させている。ただ府内に1冊しかない本などは相互貸借できないことがある。

図書館情報サイト「東京図書館制覇!」の竹内庸子さんは「自宅、学校、勤務先がなくても図書館の利用登録ができる自治体がある」と指摘する。東京都なら品川区や豊島区、千代田区、千葉県の千葉市や館山市、埼玉県の川口市などだ。通勤の乗換駅やよく出かける街にこうした図書館があれば、新たな本との出会いにつながるかもしれない。

(畑中麻里)

[NIKKEIプラス1 2017年5月27日付]