「ウコンのサプリには比較的多量の鉄を含むものがあります。しかし、鉄の含有量が記載されていないものがあるのです。鉄は一部の肝臓の悪い方に悪影響を及ぼすことがわかっています。その代表が、C型肝炎や脂肪肝です。貧血予防に効果があることで知られる鉄ですが、摂取過多で肝臓に蓄積すると、フリーラジカル(活性酸素)を発生させ、肝細胞を傷つけ、炎症を悪化させます。線維化[注3]が進んで肝臓が硬くなるなどして、肝硬変や肝がんになる可能性も高まります。私のこれまでの治療経験では、脂肪肝の人の血液を調べると、ほとんどの人が鉄が過剰でした。このため、脂肪肝の人はウコンは制限したほうがいい。同じく鉄を含むシジミなども同様です」(浅部さん)
[注3]慢性的な炎症が起こることで肝細胞が死滅・減少し、線維組織が増殖していくこと。肝臓全体が線維化すると肝硬変などになる。

「鉄分は多く摂取したほうがいいと思っている方が多いと思いますが、それは女性の話です。月経のある女性は鉄分を補給する必要がありますが、男性は鉄不足なることはまずありません。中でも日常的にアルコールを常飲する習慣のある方や脂肪肝の方は鉄過剰の傾向があるので注意が必要です」(浅部さん)
「肝機能を高めるから」と信じ、積極的にウコンやシジミなどを摂取している人は少なくないはずだ。「肝臓にいい」「鉄分が豊富だから」とレバーを食べるようにしている人もいるだろう。そんな人にとって、この事実はかなりショックに違いない。もちろんご多分に漏れず、筆者も大打撃を受けている……。
過度な心配は不要だが、肝障害がある人は避けたほうがいい
となると、結局のところウコンは飲まないほうがいいってことなのか、そこが知りたいところだ。
「肝機能障害がない健康な人が、コンビニで買えるドリンク剤をたまに飲む程度であれば、過度に心配する必要はありません。実際、飲酒30分前にウコンに含まれるクルクミンという成分を飲んだ人は、アセトアルデヒドの血中濃度の上昇が抑えられたという報告もあります[注4]。葉石さんのように『効く』という実感を持つ人が多くいるのは確かです」(浅部さん)
[注4]Biol Pharm Bull. 2011;34(5):660-5.
「ウコンによる薬物性肝障害の報告例が多いのは、ウコンがことさら危ないからではなく、ウコンを飲んでいる人が多いからだと推測されます。ただし、先に挙げたように、ウコンを煮出したり、ウコンを精製した粉を飲むなど、濃度が高いものを長期間、大量に飲むのは注意が必要です。健康食品などは、1回飲んだだけで問題が起こるというケースは少なく、継続的に飲み続けて肝臓を壊すケースがほとんどです。そして、肝臓に問題のある人、例えば脂肪肝の人などは避けてください」
「ウコンに限ったことではなく、どの健康食品についても言えることですが、副作用が全くないものはまずありません。健康に不安のある方こそ、医師に相談してから飲み、飲み続ける場合は定期的な検査をされることをお勧めします」(浅部さん)
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たとえ健康食品であっても、自己判断で摂取するのは危険ということか。今はネットで一部ながら医薬品までもが購入でき、サプリメントはコンビニでも買える時代。それ故に自己判断で「効く」と思ったものに安易に手を出してしまいがちだが、そこには常に危険が伴うことを忘れてはならない。左党にとっては身近な存在のウコン。今一度、いい付き合い方を考えてみよう。

[日経Gooday 2017年5月2日付記事を再構成]