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遺言は「争族」回避に有効 元気なうちに書くというが 終活見聞録(5)

2017/5/26

 相続はときに「争族」などの文字をあてはめることがある。新聞や雑誌で見たことがある人もいるだろう。亡くなった人の遺産をどう分けるか、遺族同士で争うことがあるからだ。そんなトラブルを避けるために有効とされているのが、財産の分け方などに関して自分の意思や希望を「遺言」として書き残しておくことだ。相続が話題となっている昨今、自分らしい最期を迎えるために生前から準備をする「終活」のひとつとして、注目の度合いが高まっている。

■相続争い、富裕層とは限らず

公正証書遺言。表紙やレイアウトは公証役場で異なる

 遺言はミステリー小説やサスペンスドラマ、映画などで古くから登場してきた。横溝正史の『犬神家の一族』や山崎豊子の『女系家族』などは代表例だろう。「争族」を描いたこうした作品は、人間関係が複雑な家族に加えて、裕福な資産家やリッチな経営者らを取り上げるケースが多かった。そのため、見たり読んだりした人の多くは「自分には縁遠いこと」と思いがちだが、実はそうではない。

司法統計年報より ※家庭裁判所の調停・審判における遺産の分割に関する処分と寄与分を定める処分の合計件数

 裁判所が取り扱う事件をまとめた司法統計によれば、相続争いの件数は年間1万6000件を超えており、10年前に比べて2000件以上増えた(全国の家庭裁判所の調停・審判における遺産の分割に関する処分と寄与分を定める処分の合計)。こうしたトラブルのうち、調停などが成立した案件について、その内訳を金額別に見てみると、全体の4分の3が遺産5000万円以下。1000万円以下も30%を超える。遺産が1億円を超えるのは少数派だ。遺産相続でもめるのは財産の多い人よりも、むしろそれほど多くない家族だということが分かる。

司法統計年報「遺産分割事件のうち認容・調停成立件数」(2015年)

 一部の富裕層は税理士らに相談して相続対策をしているようだが、それ以外では対策を講じている人はさほど多くないようだ。遺産は少しの金融資産と自宅でほとんどということも珍しくなく、相続人が複数いると分けづらい。国税庁が発表した2015年の相続税の申告状況によれば、相続財産で最も多かったのが土地で38.0%。これに家屋の5.3%を加えれば、全体の4割以上が分けにくい不動産だ。現金・預貯金(30.7%)、有価証券(14.9%)といった分割しやすい金融資産よりも多い。近年は相続に対する関心の高まりで遺産をめぐる家族の権利意識は強まっており、それらが相まって相続争いの数字を押し上げる。

■順位や割合、民法で規定

 民法では、誰が相続人となり、どれだけの財産を渡すか定めている。法定相続人には配偶者と血族がなり、血のつながりのない子どもの嫁や婿、おじ・おばはなれない。配偶者は常に相続できる特別な存在であって、血族は優先的に相続できる順位が決まっている。筆頭が子や孫(直系卑属)、次いで父母や祖父母(直系尊属)、第3が兄弟姉妹や甥・姪(傍系血族)で、順位の高い人がいる限り、その下の順位の人は相続人にはなれない。配偶者しか相続人がいなければ、配偶者が全部を相続し、子や兄弟など他の相続人がいれば、組み合わせによって取り分が変わる。同じ順位の相続人が複数いれば均等に分ける。例えば、妻と2人の子がいれば、妻が2分の1、2人の子が残りの2分の1を半分にした4分の1ずつといった具合だ。相続人となる人が亡くなっていれば、その人の子や孫が代わって相続人となる。

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