優待株の強い味方 「クロス取引」で脱・初心者

2017/7/21

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日経マネー

3000円の優待品の権利を取ったものの、翌日の権利落ちで株価が1万円も下落──。優待投資の初心者は、こんな失敗も多いはず。達人がこぞって使う「クロス取引」をマスターすれば、安全に優待を取れるようになる。

クロス取引の仕組みは単純だ。優待の権利を取るには、権利付き最終売買日の大引け時点で、一定の現物株を保有している必要がある。この時、同じ株数の信用売り玉(カラ売り)を保有しておくのがポイントだ。

買いと売りを同数持つことを「両建て」と言い、この状態では株価がどれだけ動いても損益は出ない。一方、両建てでも現物株を保有していることには変わりないので、優待の権利はきっちり取れる。このため、株価がどれだけ下がっても全くダメージを受けずに優待を取れるわけだ。

クロス取引の具体的な手順は上図の通り。まず、権利付き最終売買日の寄り付きで、現物買いと信用売りを、同株数、成り行きで注文する。こうすると、買いも売りも同じ価格で約定する。後はそのまま翌日まで持ち越して、手じまえばいい。それぞれ反対売買してもいいが、現物株を「現渡」して信用売りを決済すると手数料を節約できる。

クロス取引のコストを見極め

便利なクロス取引だが、どんな時でも得できるわけではない。クロス取引の損得を整理してみよう(下表)。

まず、クロス取引では株価がどれだけ動いても損益は出ない。また、配当については、現物株の保有で配当金をもらえる一方、信用売りをしていると配当相当額(配当落ち調整金)を支払わなければいけないので、おおむね相殺される。結局、クロス取引の収支は、「もらえる優待品」と「支払う手数料」の差になるわけだ。

クロス取引の手数料は、現物買いと信用売りの売買手数料の他、信用売りの貸株料(2日分)が必要だ。これらは、ネット証券であればそれほど高額にはならない。

問題は、「逆日歩」(ぎゃくひぶ)という特別なコスト。これは、信用売りの需要が急増し、貸し出す株数が不足すると発生する。運が悪いと、優待品の数倍に相当する逆日歩を支払うこともあり、クロス取引で最大のリスク要因といえる。

その日の取引で逆日歩が付くかどうかは、翌日になるまで分からない。一般的に、流動性の低い中小型株ほど高額の逆日歩が発生しやすいので、初心者は大型株に絞ってクロス取引を行うのがいいだろう。また、目当ての銘柄について、前年の権利付き最終売買日の逆日歩をチェックし、高額の逆日歩が付いていたらクロス取引を避けるのが無難だ。

逆日歩かからない一般信用

逆日歩のリスクを回避する手段として、「一般信用取引」を利用する手もある。これは、通常の「制度信用取引」とは異なり、証券会社とユーザーが相対で行う信用取引のこと。一般信用取引は、対象銘柄や貸株料、返済期限などのスペックが証券会社によって異なっている。仕組み上、逆日歩が発生しないのがメリットだ。

これまで一般信用取引の売りではカブドットコム証券と松井証券が先行していたが、16年12月に楽天証券が参入し、競争が激化している。大手ネット証券のサービスを比べると(下表)、取扱銘柄数はカブドットコム証券が最も多く、クロス取引の第1候補といえる。手数料は、少額取引なら1日約定合計10万円まで無料の松井証券、それ以外ではSBI証券が割安だ。

注:2017年4月末時点。手数料例は1注文ごとに手数料を支払うコースで優遇なしの場合。価格は税抜き。※口座開設から6カ月後の月末まで、1日合計30万円まで無料

一般信用取引の難点は、証券会社ごとに「在庫」が限られる点。権利日が近づくと人気銘柄は争奪戦になり、いざ信用売りしようと思っても「在庫切れ」で注文できないことも多い。複数の証券会社に口座を開いておくのが得策だ。

(日経マネー 市田憲司、小谷真幸)

[日経マネー2017年7月号の記事を再構成]

日経マネー 2017年8月号

著者 : 日経マネー編集部
出版 : 日経BP出版センター
価格 : 730円 (税込み)