倒産劇は何を語るか 八重洲で中高年読者の関心呼ぶ八重洲ブックセンター本店

ビジネス街の書店をめぐりながらその時々のその街の売れ筋本をウオッチしていくシリーズ。今回は定点観測している八重洲ブックセンター本店だ。4月に訪れたときと比べて売れ筋に大きな変化がない。力強いビジネス書の新刊が乏しいようだ。そんな中、好調なのがビジネス系の新書だという。中でも八重洲の中心購買層の中高年ビジネスマンが関心を寄せたのは最近の倒産事例を一冊の本に整理した新書だった。

日経電子版の連載を書籍化

その本は帝国データバンク情報部 藤森徹著『あの会社はこうして潰れた』(日経プレミアシリーズ)。日経電子版の人気コラム「企業信用調査マンの目」という連載をまとめた本だ。著者の藤森氏は著者名につけた肩書からもわかるように信用調査会社の情報部で部長を務めるベテラン調査マン。「どうすれば企業は潰れるのか、なぜ倒産が防げなかったのか。また予兆はどう判断し、倒産を予測するには何が必要か」を具体的な倒産事例に即して語っていく内容だ。

連載では60社を超える倒産事例を扱い、今も同社の情報部のメンバーが引き継いで連載が続いているが、その中から37の事例を項目に選び、8つのテーマに分けて掲載している。第1章は「構造改革に呑まれた企業はこうなる」。スマートフォン(スマホ)ゲームにとどめを刺されたゲームセンター運営会社や厳しい局面を大型公共工事の受注で挽回しようとして労務費と資材費の高騰に沈んだ建設会社などの事例が語られる。

信用調査マンの冷静な分析が光る

「消費者の変化に対応する次の一手が打てなかったのである」「経営者はその不運に最後まで誠実に向き合ったのだろうか」――倒産原因に言及する著者の一言は数多くの事例を見てきているだけに、経営姿勢を鋭くあぶり出す。その冷徹な視線が読みどころだ。事例にそっての一言に迫力が宿る。他の章でも「ベンチャー企業はどこでつまずいたか」「捨てられる会社、捨てられる社長」「闇経済、不正、詐欺の舞台裏」など、興味をそそるテーマが立てられて、次々と読み進んでしまう。

「破綻や崩壊といった企業の末路を扱った本はこの店ではよく売れる。中高年のビジネスマンが身につまされる思いで手に取ったり、他山の石として参考にしたりといった需要があるようです」と、副店長の木内恒人さんは話す。

意欲的な新書、相次ぎ上位に

それでは、先週のベスト5を見ておこう。

(1)アサヒビール 30年目の逆襲永井隆著(日本経済新聞出版社)
(2)ビジネスプロデュース成功への道三宅孝之・島崎崇著(PHP研究所)
(3)あの会社はこうして潰れた藤森徹著(日経プレミアシリーズ)
(4)投資の鉄人馬渕治好ほか著(日経プレミアシリーズ)
(5)捨てられる銀行橋本卓典著(講談社現代新書)

(八重洲ブックセンター本店、2017年5月14日~5月20日)

1位と2位は著者・版元関係のまとめ買いが入ってのランクイン。1位の本はビール業界の攻防を長年取材してきたフリーのジャーナリストがアサヒビールの脱スーパードライ戦略の展開を取材した企業ルポだ。2位の本はコンサルティングやベンチャー投資を手がけるドリームインキュベータの執行役員2人が同社の方法論をひもとき解説した内容だ。3位に冒頭に紹介した本が入る。4位は資産運用のプロ4人が一堂に会し、投資で成功するための鉄則を徹底指南した本。5位には、連休明けの紀伊国屋書店の回で紹介した『捨てられる銀行』の第2弾が顔を出す。3~5位の本はすべて4月中下旬発売の新書。表にはないが、10位にも5月発売の新書、高嶋健夫『しくじる会社の法則』(日経プレミアシリーズ)が食い込む。「ビジネス書のランキングで、ここまで新書が上位を占めるのは珍しい」と木内さんも驚く。

(水柿武志)

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