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日本の公的年金の特徴は? 2階建て、世代間扶養… 公的年金 丸わかり(1)

2017/5/28

夜ごとマネー談議が交わされる筧家のダイニングテーブル。この日のテーマは年金制度です。会社員生活が第4コーナーに入った良男は老後を支える公的年金の行方が気になる様子。同じ会社員でも若い恵とは制度に関する理解や考え方にも差があるようです。

筧幸子(かけい・さちこ、48=上) 良男の妻。ファイナンシャルプランナー資格を持ち、家計について相談業務を手掛ける。 筧良男(かけい・よしお、52=中) 機械メーカー勤務。家計や資産運用は基本的に妻任せ。最近、親の相続が気になり始めた。 筧恵(かけい・めぐみ、25) 娘。旅行会社に勤める社会人3年目。自分磨きと"コスパ"にはかなりこだわっている。

 確定拠出年金(DC)について同僚から相談があった際、公的年金のことも調べたんだけど、難しかったな。

幸子 恵も毎月のお給料から保険料が天引きされているわけだし、年金について知っておいた方がいいわね。

良男 私も知りたい。退職した先輩が「先行き年金は今ほどもらえなくなるかもしれない」と話していたので不安でね。基本から教えてほしいな。

幸子 ではまず、日本の公的年金制度の特徴から。ひとつは「国民皆年金」。海外では給与所得者と自営業者に加入者を絞っている国が多いけど、日本ではこうした収入がある人だけでなく、収入がなくても、原則として20歳以上の全居住者が年金制度に加入することになっているの。国民皆年金の制度ができたのは1961年だから、パパが生まれるより前の話ね。

 無職の人も学生も20歳になったら全員加入して保険料を払うわけね。でも、私が大学生だった頃はママが払ってくれていたような……。

幸子 恵が大学生のときは毎月の保険料を自分で払えないというので私たちが立て替えたのよ。確か、就職したら返すと言っていたはずよね。

 えっ……。まあ、その件はおいといて。そのほかにも特徴はあるの?

幸子 もうひとつが「2階建て」。国民年金と厚生年金保険があるのは知っているよね? 自営業の人が入る国民年金と会社員らが入る厚生年金はもともと別の制度だったけど、1986年から一体化されたわ。その際に国民年金は全員が入る基礎年金とし、その上に厚生年金を乗せるスタイルになったの。この2階建ても他の国ではあまり見かけないそうよ。以前は公務員が入る共済年金も2階に乗っていたけど、2015年に厚生年金に一元化されたわ。

良男 「3階建て」と言っている人もいたよ。

幸子 公的年金に上乗せする企業年金などを「3階」に例える人もいるわ。老後の年金額を増やすために任意で加入するもので、個人型DCなどが当てはまるわね。強制加入の公的年金だけを示すなら2階建てでいいと思うわ。

 私もパパも会社員なので1階と2階の両方に加入しているわけね。

幸子 国民年金の被保険者の分類で見ると、二人は「第2号」ね。一方で自営業者やフリーランスなど国民年金だけに加入している人は「第1号」、第2号に扶養されている配偶者を「第3号」と呼ぶの。保険料の納め方も原則、第2号は給与天引きなのに対し、第1号は口座振替や納付書などで自分で払い込むのよ。会社員だった人が脱サラして自営で仕事を始めれば、加入する保険も変わり、第2号から第1号になるわ。

 第3号は自分で保険料を払わなくても年金をもらえると聞いたよ。

幸子 第3号は国民年金には加入しているけど、保険料は第2号の加入者全員で負担しているの。第1号や第2号の女性は自分で保険料を払っているので「不公平だ」と議論になることがあるわ。ただ、会社員の夫が脱サラすれば第3号だった妻も第1号に変わり、自分で保険料を払う必要が出てくるの。

良男 1階だけの第1号より2階がある第2号の方が年金額が多くて有利だというね。

幸子 そうね。だから任意で加入する個人型DCや国民年金基金などで金額の上乗せを考えたいわね。さて、2階建ての話はこれぐらいにして、3つめの特徴は「世代間扶養」。現役世代が払った保険料で高齢者の年金に必要なお金を賄う、世代間での支え合いの仕組みのことよ。「賦課方式」とも呼び、海外でも多くの国が導入していると聞くわ。日本の年金は賦課方式を基本にしつつ、一定の積立金を保有し、その運用収益も年金給付に充てているの。

良男 私がずっと払ってきた保険料はおやじやおふくろの世代の年金になっていたわけだ。私がもらう年金は恵や満たちが払う保険料が原資になるわけか。恵、よろしくな!

 世代間扶養の運営には、現役世代と年金世代の人数が影響するんじゃないかしら。少子高齢化の進展で年金をもらう人が増えていく一方で、保険料を払う人は少なくなっていくわけよね。なんだか若い世代ほど割を食うような気がするな。私の知り合いでも「年金制度の将来が不安」とか、「保険料が払い損になるのではないか」と心配している人がいるよ。

幸子 年金は国民の約3人に1人が受給している社会保険のひとつ。時代の状況に合わせて負担や給付のあり方は変わっていくと思うけど、制度そのものは継続していくはずよ。重要なのは制度についてよく知ること。人は何歳まで生きるか誰も分からないけれど、老齢年金は死ぬまでもらえるの。若くして障害を負ったり亡くなったりした場合も、本人や家族の生活を支える障害年金や遺族年金という仕組みもあるわ。保険料をきちんと納めていないと、これらの年金をもらえない可能性があるので注意したいわね。

■拠出の範囲内で給付額調整
ニッセイ基礎研究所主任研究員 中嶋邦夫さん
日本の公的年金は「拠出優先」に変わりました。2004年に導入された保険料水準固定方式に基づき、被保険者が負担する保険料の引き上げは今年で打ち止めです。今後はその拠出の範囲で給付を調整することになります。経営者も労働者も保険料引き上げに反対しているので、しばらくは上がらないでしょう。高齢者が増えて若い人は少なくなるので、給付額は目減りします。
年金の支給開始年齢は65歳に移行しています。さらに引き上げが必要との意見がありますが、年金財政をよくするという目的には当てはまりません。開始年齢を上げればその分、金額も増やす必要があるからです。一方で60歳以降も働く人は増えています。就労をさらに延ばすシンボルとしての開始年齢引き上げは、選択肢としてあると思います。
(聞き手は土井誠司)

[日本経済新聞夕刊2017年5月24日付]

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