マネー研究所

子供にお金の話をしよう

「早めの老後準備を」 子供にどう伝えればいい?

日経マネー

2017/6/21

PIXTA
日経マネー

[親父の悩み]老後のための資産運用が必要だというのはひしひしと分かっている。現役時代にもっと資産を形成しておけばと反省もしている。だが、子供にどうやって、老後に向けた資産運用を始めるべきだと説得すればいいのか……。

◇  ◇  ◇

イラスト:ふじわらかずえ

老後のために資産を形成する必要性を子供に伝えるのは、なかなか難しいものです。なぜ20代は老後のための資産運用を始めないのか。自分のことを振り返ってみると、2つの理由に気付くはずです。

まず、20代にとって40年後のための生活費を今の自分のお給料から捻出することは難しいと思っていること。もう一つはリスクのある資産運用には手を付けたくないと感じていることです。結果、将来の懸念は後回しにして、今の生活に意識を集中してしまうという「行動バイアス」に陥ってしまうのです。

では本当に40年後の生活費のために、今の給料から資金を捻出するのは難しいのでしょうか。20代からは「給料がまだ少なくてそれどころじゃない」といった言い訳が聞こえてきそうです。でもむしろ問題は、仕事や結婚にかかる費用、あるいは子供の教育費や住宅資金といった目先の資金需要と、老後のための資金需要のどちらを優先するかという二者択一の議論にしてしまうことにあります。まずは「どちらも準備する」という考え方に切り替えるのが大切です。

■節約なんてしなくていい

まずは「退職準備のための節約はやめるべきだ」と、子供に伝えましょう。節約は、「収入から消費を引いたものが貯蓄や投資に回る」という考え方です。この過程は苦しいだけに、退職準備自体が苦しいものになりがちです。

そこで、退職後に必要な資金を給料から先に取り出すようにして、残りで生活するという発想を伝えましょう。つまり、給与から将来の資金を天引きするのです。「収入から貯蓄や投資を引いた分を消費に回す」という考えに立てば、手取りは少なく感じるかもしれませんが、その中で生活すればいいと達観できるはずです。

イラスト:ふじわらかずえ

その典型例が、財形貯蓄やDC(確定拠出年金)に対する拠出です。DCのうち企業型といわれるタイプは、その積立額を会社が出してくれます。これは紛れもなく自分が受け取れる給料の一部が積み立てられているものです。会社によっては、DCに入らない人にはその分を給料に上乗せして払うところもあります。最近話題になっているiDeCo(個人型確定拠出年金)では、自分のお給料や銀行口座から自動的に拠出額が引き落とされるので、もっと分かりやすい「天引き」といえます。

若い方の中には財形貯蓄をしているしっかり者の方もいます。ただ、その資金使途はまとまった買い物や旅行ということが多いので、これを見直して長期の資金需要に充てるように仕向けることが重要です。

■投資するリスク、しないリスク

天引きで貯蓄する気になったら、次はその資金で投資をするかが大事になります。特に、「投資で損をするのが嫌だ」と言って「投資のリスク」を強く意識している子供も多いと思います。でも「投資をしないことで抱えるリスク」も理解してほしいものです。

その際避けるべきなのは、「公的年金は安心できないから投資をすべきだ」と安直に言うことです。確かに公的年金の先行きは厳しいですが、実態を理解できないまま不安をあおっても行動にはつながりません。フィデリティ退職・投資教育研究所のサラリーマン1万人アンケートでは、20代の73%が公的年金は安心できないとしていますが、64%が公的年金の給付額を知らないと答えているのです。「公的年金への漠然とした不安」だけでは、もはや資産形成への動機づけにならなくなっています。

注:フィデリティ退職・投資教育研究所調べ

本当に伝えなければならないのは、自分たちの子供が65歳以上になる2060年頃には、65歳以上人口は3500万人くらい、20~64歳の人口は4400万人くらいになるということです。15年ではそれぞれ3400万人と7100万人ですから、大体45年後には高齢者はそれほど増えてない一方で現役世代が大きく減ります。

今は現役世代の2.2人が高齢者1人を支える時代です。いわば子供は「支える側」にいるのですが、45年後に自分が「支えられる側」に行くと、支えてくれるのはその半分くらいの1.3人しかいない。これに伴う不都合を避けるのは、自助努力しかないと分かってほしいのです。子供たちの時代には、投資をしないことで不都合に陥るリスクが存在しています。

「投資をしなければ陥るリスク」と「投資をするリスク」は二者択一です。そうだとすれば、リスクの水準を自分でコントロールできる「投資をするリスク」の方が優位にあるのではないでしょうか。

今後のコラムでは、投資のリスクをコントロールするための、長期投資や分散投資、時間分散などについて説明しましょう。

【こんなふうに伝えよう】

今と将来の費用に向け、両方の資金をどう準備するかを考えましょう。給与から天引きで用意した資金を、そのための資産形成につなげましょう。「投資をしないリスク」より、自分で管理できる「投資をするリスク」は優位なのです。

イラスト:ふじわらかずえ
野尻哲史
フィデリティ退職・投資教育研究所所長。一橋大学卒業後、内外の証券会社調査部を経て2006年にフィデリティ投信入社、07年から現職。アンケート結果を基にした資産形成に関する著書や講演多数。

[日経マネー2017年7月号の記事を再構成]

日経マネー 2017年8月号

著者 : 日経マネー編集部
出版 : 日経BP出版センター
価格 : 730円 (税込み)


マネー研究所 新着記事

ALL CHANNEL