契約はしたものの、細かな内容はよく知らない――。生命保険や損害保険の契約者の中には、こんな人も少なくないだろう。だが、保険は契約条項ひとつで受けられる補償が大きく変わる上、新たなサービスも続々と登場している。本コラムでは、生命保険と損害保険を交互に取り上げ、保険選びの上で知っておきたい知識を解説する。
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教育費の準備といえば「学資保険」。だが、返戻率がより有利として「低解約返戻金型終身保険」を薦められることも多い。保険料が割安な半面、払込期間中は返戻金が安く抑えられており、払い込み終了直後に通常水準に戻るタイプだ。
今回は生活設計の観点で両者を比べてみたい。学資保険は明治安田生命保険の「つみたて学資」を、低解約返戻金型終身保険はオリックス生命保険の「RISE(ライズ)」を取り上げる。保険各社が予定利率を引き下げる中、相対的に優位性を保っている2商品だ。保険料払込期間15年、18歳時解約金が約300万円とした場合の、それぞれの使用例を下の表・図に示した。
払い込み終了直後(15年経過)も、大学入学時(18年経過)も、返戻率は「つみたて学資」の方が良い。むしろ目立つのは、15年未満で解約する場合の「RISE」の返戻率の低さだ。子育て時期は何かと物入り。住宅購入時に学資保険を解約したとの話もよく聞くが、低解約返戻金型終身保険を早めに解約するのは躊躇(ちゅうちょ)せざるを得ない。
保険料負担が重いと感じた際、「つみたて学資」は基準保険金額(表の例では75万円)を10万円まで減額できるので、支払い可能な水準まで保険料を下げられる。「RISE」の場合、減額は一部解約と同じことになり、元本割れ期間中の減額は大きく損だ。
低解約返戻金型終身保険の利点として、解約時期を自由に選べ、教育費が不要ならそのまま継続できることがある。ただ、目的はあくまでも教育費の準備。収入減や子の成長に伴う家計費増といったリスクへの対応力は学資保険に分がある。商品は適材適所で選びたい。
生活設計塾クルー。13年間の大手生命保険会社勤務の後、FPとして独立。生活設計塾クルー取締役を務める。『医療保険はすぐやめなさい』(ダイヤモンド社)など著書多数。一般社団法人FP&コミュニティ・カフェ代表。
[日経マネー2017年7月号の記事を再構成]