今から考えるお墓とお金 「期間限定」「ペット可」も
「まだまだ先の話」と、考えるのを先送りしがちな「お墓」。しかし、自分の親、家族にもしものことがあった際、短い時間のうちに葬儀の段取りやお墓をどうするかなど、さまざまなことを決めていかなくてはなりません。いざとなってあわてることがないよう、およその方針だけでも決めておくのが大切です。最新のお墓事情と、お墓にまつわるお金事情を解説します。
お墓の費用は全国平均で200万円前後
お墓にかかる費用は地域や内容によりさまざまですが、墓地に墓石を建てる一般墓の場合、墓石の代金と墓地を使う永代使用料の全国平均額はこの数年、200万円前後を推移しています。葬儀やお墓の情報を集めたポータルサイトを運営する鎌倉新書の調査によると、2016年は全国平均が181.5万円。2015年の201.6万円に比べ20万円低下。直近5年間では最も低い水準です。
お墓といえば「墓地に墓石を建てて、先祖代々守っていくもの」というイメージが強いかもしれません。しかし最近はライフスタイルや家族のあり方に対する考えが多様化し、それに合わせたタイプのお墓が登場しています。最近人気の「樹木葬」と呼ばれるお墓もその一つ。木々や草花に囲まれた庭園のようなタイプのお墓です。
実際に、お墓を選ぶ際には自分なりのこだわりを重視して選ぶという人が増えています。鎌倉新書が実施した「いいお墓/第8回 お墓の消費者全国実態調査」(2016年)では、「墓地・霊園を選ぶのに一番重視した要素」として「一般墓か樹木葬かなど、お墓のタイプ」が全体の23.4%と最も多い回答となりました。「お墓参りに行きやすいといったアクセスのよさで選ぶという印象が強かったのですが、今回の調査で初めて、お墓のタイプを重視するという人が最も多いことが分かりました」(鎌倉新書)
一方で「金額を重視」という回答は全体の9.6%。一定数はいるものの、より多くの人が、お墓のタイプなど自分の好みを大事にしていることが読み取れます。
「自分は自分、子世代は子世代」柔軟な設定が可能
こうした変化がある中、自分が入るお墓をどうしたいのかを世代ごとに決められる臨機応変型が注目を集めています。代表的なのが「期限付き墓地」と呼ばれるもの。その名の通り、一定の期間だけお墓を自分たちのものとして使うことができるタイプです。
「墓地に固有のお墓を建てる」という一般的な方式では通常、(1)墓石の代金(2)墓地を使う永代使用料、さらに(3)墓地の管理料が必要になります。特に(3)は後々も継続的に発生するもの。そのため、自分が亡くなった後にも支払いが続きコストが膨らむことや、そもそもお墓を守ってくれる子孫がいるのかに不安があり、お墓を持つことをためらう人も少なくないという実情がありました。また、知らない先祖と同じお墓に入るのを敬遠する人もいます。
期限付き墓地はこうした不安を持つ人たちに対応したスタイルで、夫婦2人やおひとり様、今一緒に暮らしている家族3人だけで使いたいなどのニーズに向くものです。契約期間中は購入したお墓の中に個別に埋葬され、期間が終了すると場所を移して、他の遺骨と一緒に埋葬される合同墓地の方法がとられるのが一般的です。
契約期間は3年、5年などの短い期間から、30年、50年など長期の契約ができるものなどさまざま。当初決めた契約期間の終了時に延長できる場合もあります。お墓の利用を一代限りとしてもよいし、延長可能なタイプを選べば、後になって子供や孫世代も「同じお墓に入りたい」という希望を持った場合に対応できます。
女性に人気の樹木葬 友人やペットと一緒もOKのタイプも
女性に特に人気なのが「樹木葬」。樹木や花木を墓碑・墓標とするスタイルのお墓で、環境を重視し、園内が美しく保たれるよう配慮されているのが特徴です。今のところ樹木葬には明確な定義はなく、庭園の中でシンボルとされる樹木の下に骨壺を納める庭園型のほか、郊外の広大な土地を使って公園のような趣にした公園型、自然とより密着した山林の中にある里山型などさまざまな種類があります。
契約も前述した期限付き墓地と同様、一代限りで使うタイプや代々子孫が継いでいけるタイプなど、さまざまな選択肢から選べます。宗教を問わず、子供などお墓の後継者がいなくても認めてもらえるところが多いのも魅力です。家族や血縁関係者だけでなく、友人やペットと同じ区画に埋葬してもらえる方式もあります。個別埋葬のほか、合同墓地となる場合もあるので、条件と金額を見比べて選ぶとよいでしょう。
アクセスよく、手間いらずの効率重視タイプ
都市部に多い「自動搬送付き納骨堂」も最近注目されているタイプです。お墓の墓石自体は園内専用の参拝ブースに設置され、他の人と共有で使用します。故人の遺骨は、普段は参拝ブースとは異なる場所に個別に納められており、参拝するときにブースで専用のICカードを読み込ませると骨箱が自動的に搬送されてくるスタイルです。
このタイプのメリットは、都市部で比較的安い金額で利用できること。駅から近い好立地が多く、通常のお墓のようにプライベートな空間で参拝できる点が人気を集めています。
室内タイプが主流なのでお参り当日の天候を気にする必要はなく、掃除の手間が省けるのも大きなメリットです。利用期間は50年など長めに設定される場合が多く、期間終了後は合同で納められるのが一般的です。
最近はお墓に関する情報をまとめ、容易に比較できるサイトも充実しています。早いうちから家族と話し合って、希望する形や重視するポイントをはっきりさせておき、不要な部分は極力そぎ落としていくのが理想です。
(ファイナンシャルプランナー 福島由恵、構成 日経BPコンサルティング 「金融コンテンツLab.」)
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