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都内タクシー、なぜ初乗り410円・80円刻みに?

編集委員 小林明

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NIKKEI STYLE

今年1月30日に東京都内(23区・武蔵野市・三鷹市)のタクシーの初乗り運賃が730円から410円に下がり、加算運賃が90円刻みから80円刻みに切り替わった。初乗り運賃が手ごろな価格に低下したことから「ちょい乗り」需要が喚起できるなどと話題になったが、そもそもどうして「初乗り410円・80円刻み」という運賃体系に決まったのだろうか?

背景を探ると、消費者のタクシー離れに歯止めをかけたいという業界の思惑や運賃に対する微妙な顧客心理が浮かび上がってきた。

初乗り410円は上限、「公定幅」で380円なども

まずタクシー運賃の仕組みを簡単に説明しよう。

上の表は東京都内のタクシー運賃の新旧比較である。新旧ともに「上限」から「下限」まで幅があり、そこに10円ずつ違う「B運賃」「C運賃」を加えた4種類の料金から各事業者が自由に選ぶ仕組みになっている(これら4種類以外の運賃は都内で存在しない)。これを「公定幅運賃制」という。

現状だと最も安い運賃で「初乗り380円・80円刻み」で運行しているタクシーも少数ながら存在するようだ。ただ、新旧いずれも「上限」を採用する事業者が圧倒的に多いため、便宜上、「初乗り730円・90円刻み」から「初乗り410円・80円刻み」に移行したなどと表現している。

初乗りはNY・ロンドンより割高感、値下げでタクシー離れに歯止め

ところで、なぜ初乗り運賃が下げられることになったのだろうか?

これは国際的に見て、東京のタクシーの旧初乗り運賃に割高感があったためとされる。

たとえばニューヨークやロンドンのタクシー運賃と比べてみよう(2015年2月27日時点)。上の画像の一覧表をみると東京の初乗り運賃の高さがかなり目立っていたことが分かる。初乗り運賃はニューヨークだと5分の1マイル(約320メートル)まで301円(2.5ドル)、ロンドンだと259.8メートルまで451円(2.4ポンド)。一方、東京は2キロまで730円と明らかに割高に感じる。

ただ、東京のタクシー運賃に割高感があったのは初乗り区間だけ。

約4キロ時点での運賃を比べると、東京1450円、ニューヨーク約1300円、ロンドン約1700円で東京だけが必ずしも高いというわけではない(画像の折れ線グラフを参照)。東京の初乗り距離が2キロと長かったのだ。

業界からは様々な声が強まっていた。

「2020年の東京五輪に向けて外国人観光客が増えているなか、初乗り運賃を国際基準に下げるべきだ」「車体に初乗り運賃が表示されているので、割高だというイメージを利用者が抱いてしまう」――。

こうして初乗り運賃の引き下げが検討されるようになったというわけ。

背景には「消費者のタクシー離れ」という切実な問題もある。東京都内タクシーにおける年間の実車距離、輸送回数はそれぞれ1989年、87年をピークに減少傾向が続き、業界の低迷が止まらない。これに歯止めをかけるためにも利用客を取り込む有効策が必要になったのだ。

東京のタクシーがどのように利用されていたのを示す興味深い統計がある。

初乗り客は平均0.8キロ分を乗り捨て、加算に敏感な顧客心理

右のグラフは東京ハイヤー・タクシー協会がまとめた実態調査である(2667台・22事業所対象、2014年から15年に実施)。初乗り距離である2キロに近づくに従って需要(回数)が増え、2キロを超えると一気に下がる。90円といえども、その加算分を利用者が強く意識している様子がうかがえる。

同協会によると、2キロ未満の利用者の平均実車距離は1.2キロ(時間加算分も加味すると1.4キロ)。つまり「初乗り運賃で乗れる2キロまでの権利を放棄して下車する『乗り捨て』(平均0.8キロ)分が大きいため、それが運賃の割高感の原因になっていた」(同協会)と分析する。

そこで初乗り距離を短縮することで初乗り運賃を切り下げることにしたのだ。

では、なぜ「初乗り410円・80円刻み」を大勢が採用したのか?

各事業者を取材しているうちに、主に6つの運賃体系が検討されていたことが分かってきた。

具体的には「初乗り380円・70円刻み」「同410円・80円刻み」「同490円・80円刻み」「同370円・90円刻み」「同460円・90円刻み」「同550円・90円刻み」――の6つ。

実はこれにも理由がある。

今回の変更は全体として「値上げ」でも「値下げ」でもなく、運送収入が変更前後で同等となるようにした「運賃組み替え」(国交省自動車局旅客課)という措置だった。そのため、「変更前の初乗り運賃を超えない」ことが前提条件。つまり、2キロ時点で730円を超えないように運賃を設定する必要があったのだ。

6案をシミュレーション、70円・90円刻みが脱落

当初、100円刻みや60円刻みの加算運賃なども検討されたが「100円刻みでは一度の上げ幅が大きすぎるし、逆に60円だと上げ幅が小さすぎて加算するタイミングが頻繁になり、どちらも利用者に敬遠されかねない」とはじかれて、刻み幅を70~90円でシミュレーションすることになった。

2キロ時点でちょうど730円となる上限の初乗り運賃と刻み幅を考えると、国際的に違和感のない400~500円程度の初乗り運賃になる組み合わせで浮上したのは上の表の6案。

だがシミュレーションの過程で、70円刻みだと「加算距離が207メートル、加算時間が75秒で値上がりの頻度がやや多すぎる」と判断された。一方、90円刻みだと「2キロ以降はどの段階でも値下げになる場合がないので、利用者が心理的な負担と感じてしまう」という結論になったらしい。

こうした消去法で刻み幅は80円に絞られ、上限の初乗り運賃は410円かもしくは490円かの選択肢が残された。どちらの組み合わせも、2キロ以降では値上げと値下げが混在するので利用者の心理的な負担を相対的に少なくできる。

410円が良いか? それとも490円か?

消去法で残った80円刻みの2案、利便性とインパクトで410円に

最後に決め手になったのは(1)近距離利用者への利便性の大きさ(2)初乗り運賃引き下げの社会的なインパクトの大きさ――だったとされる。これに加えて、都内のバスの普通運賃が210円なので「タクシーの初乗り運賃の方が2人分のバス運賃の420円よりも10円安いとPRできる」こともプラス材料になったようだ。

こうして運賃の国際比較、利用者の経済心理、旧運賃との兼ね合い、社会的なインパクトなどを考慮しながら、新運賃が決まっていった(シミュレーションでは初乗り距離は1055メートルだったが、認可された新運賃では1052メートルになった)。

検討の過程で各事業者の頭をよぎったのは「340円タクシー」の教訓だったという。

1997年に東京都内の2000台ほどのタクシーが初乗り運賃を1キロ340円に設定したことがあったが、結局、浸透せずに終わってしまったからだ。「一部の利用者には好評だったが、都内のタクシー台数の1割未満しか導入しなかったので結局、世の中に浸透しなかった」(東京ハイヤー・タクシー協会)

初乗り運賃の引き下げはある程度、大規模に導入しないとやはり定着しない。

ただ現行の「公定幅運賃制」では当時のように運賃が大きく乖離(かいり)してしまう二重運賃問題は発生しにくいので、同じ失敗をおかす恐れはないと判断したとみられる。

340円タクシーの教訓、「中小に不利」懸念も業界足並み

「大手企業よりも中小企業に不利ではないか」――。

業界ではこんな懸念もくすぶっていた。都心を流す大手会社のタクシーよりも、住宅地などを拠点とする中小会社のタクシーの方が初乗り運賃低下のあおりを受け、深刻な売り上げ減少に苦しむのではないかというのだ。

たしかに地域別、時間帯別でタクシーの利用状況を比べると「初乗り運賃で下車する利用者の割合(初乗り割合)は『都心』よりも『住宅地』、『深夜』よりも『朝から昼』の方が明らかに高い傾向がある」(東京ハイヤー・タクシー協会)。

「住宅地」の方が「都心」よりも初乗り割合が4~7ポイントほど高く、22~5時以外の時間帯なら「住宅地」は初乗り割合が3割台半ばなのに、22~5時の「都心」では初乗り割合が14.7%とかなり低い。

利用状況が変わらなければ、「住宅地」で「深夜」以外に営業しているタクシーの売り上げがそのまま減る計算になる。

とはいえ「そうした懸念よりも業界全体の低迷状態の方が深刻だった」と多くの業界関係者は振り返る。むしろ初乗り運賃の引き下げで『ちょい乗り』需要の喚起に期待しようという業界としての機運の方が急速に強まっていった。

このような様々な経緯を経て、「初乗り410円・80円刻み」という新運賃体系が最終的に形成されたのだ。

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