都内タクシー、なぜ初乗り410円・80円刻みに?編集委員 小林明

東京のタクシーがどのように利用されていたのを示す興味深い統計がある。

初乗り客は平均0.8キロ分を乗り捨て、加算に敏感な顧客心理

右のグラフは東京ハイヤー・タクシー協会がまとめた実態調査である(2667台・22事業所対象、2014年から15年に実施)。初乗り距離である2キロに近づくに従って需要(回数)が増え、2キロを超えると一気に下がる。90円といえども、その加算分を利用者が強く意識している様子がうかがえる。

同協会によると、2キロ未満の利用者の平均実車距離は1.2キロ(時間加算分も加味すると1.4キロ)。つまり「初乗り運賃で乗れる2キロまでの権利を放棄して下車する『乗り捨て』(平均0.8キロ)分が大きいため、それが運賃の割高感の原因になっていた」(同協会)と分析する。

そこで初乗り距離を短縮することで初乗り運賃を切り下げることにしたのだ。

では、なぜ「初乗り410円・80円刻み」を大勢が採用したのか?

各事業者を取材しているうちに、主に6つの運賃体系が検討されていたことが分かってきた。

具体的には「初乗り380円・70円刻み」「同410円・80円刻み」「同490円・80円刻み」「同370円・90円刻み」「同460円・90円刻み」「同550円・90円刻み」――の6つ。

実はこれにも理由がある。

今回の変更は全体として「値上げ」でも「値下げ」でもなく、運送収入が変更前後で同等となるようにした「運賃組み替え」(国交省自動車局旅客課)という措置だった。そのため、「変更前の初乗り運賃を超えない」ことが前提条件。つまり、2キロ時点で730円を超えないように運賃を設定する必要があったのだ。

6案をシミュレーション、70円・90円刻みが脱落

当初、100円刻みや60円刻みの加算運賃なども検討されたが「100円刻みでは一度の上げ幅が大きすぎるし、逆に60円だと上げ幅が小さすぎて加算するタイミングが頻繁になり、どちらも利用者に敬遠されかねない」とはじかれて、刻み幅を70~90円でシミュレーションすることになった。

2キロ時点でちょうど730円となる上限の初乗り運賃と刻み幅を考えると、国際的に違和感のない400~500円程度の初乗り運賃になる組み合わせで浮上したのは上の表の6案。

だがシミュレーションの過程で、70円刻みだと「加算距離が207メートル、加算時間が75秒で値上がりの頻度がやや多すぎる」と判断された。一方、90円刻みだと「2キロ以降はどの段階でも値下げになる場合がないので、利用者が心理的な負担と感じてしまう」という結論になったらしい。

こうした消去法で刻み幅は80円に絞られ、上限の初乗り運賃は410円かもしくは490円かの選択肢が残された。どちらの組み合わせも、2キロ以降では値上げと値下げが混在するので利用者の心理的な負担を相対的に少なくできる。

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