先行き不透明な局面 投信でどう備える?

日経マネー

日経マネー

株式投資ほどのリスクは取れないが、分散投資でリスクを下げつつ少しでも資産を殖やしたい。こんなニーズに応えた商品として、投資信託が人気を博している。ただ、一口に投信といっても中身は多種多様。自分に合った商品を見つけるには、どうすればいいのか。投信初心者の疑問をプロが分かりやすく解説する。

◇  ◇  ◇

Sさん(以下、S):トランプ相場が落ち着き、北朝鮮問題なども最近気になるので、保有する株式投資信託を一旦売ろうと考えています。

吉井さん(以下、吉):休むも相場とはいいますが、「言うは易(やす)し行うは難(かた)し」で、相場を予測しながら利益を上げるのは投資のプロでも難しいことです。そもそも投信は、購入や売却に数日の期間ともろもろの手数料がかかるので、短期的な見通しで動かすには不向きです。

S:何かいい方法はありませんか。

吉:先行き不透明な局面で大事なのは、どんな結果になっても大きな損失を被らないようにしておくこと。つまり、分散投資です。

S:株式と逆の値動きをするものというと債券ですか。

吉:株式と債券の分散投資は基本です。ただ債券は値動きが緩やかなので、株式の値動きを相殺するには資金を大きく入れる必要があります。少額で株式との分散効果が期待できるのは金です。

S:金はどんな値動きを?

吉:金価格は、株式やドルと逆向きに動く傾向があります(下図)。「有事の金」といわれるように、戦争や金融危機が起こると大きく上昇するのも特徴です。値動きが債券より大きいので、少額でも株式との分散効果を得られます。

S:株式が下がる時に金が上がるのは何となくイメージできますが、ドルとも逆に動くのはなぜですか。

吉:金は、通貨の信用が落ちた時に実物資産としての評価が高まります。世界の基軸通貨であるドルの魅力が落ちる時(=円高・ドル安)に、金価格が上昇することがよくあります。逆にドルの魅力が高まる時、例えば米金利が上昇し、ドルを持つ魅力が増す時には下落することを覚えておきましょう。

S:円高への備えにもなるのですね。金に投資するなら純金積み立てやETF(上場投信)ですか。

吉:金投資で気を付けたいのは為替リスクです。金価格は基本的にドルベースで動いており、国内の金価格は為替変動の影響を受けます。金価格が上昇しても、円高が進めば値上がり分が相殺されてしまうので注意が必要です。金による分散効果を得たいなら、金を投資対象とする投信がお薦めです。

S:なぜ投信がいいのですか。

吉:投信には為替ヘッジの仕組みがあります。ドル建ての金に投資しながら為替リスクを減らせれば、金本来の値動きによる分散効果を期待しやすいのです。

S:どんな投信があるのでしょう。

吉:為替ヘッジ付きの金投信であれば、「ステートストリート・ゴールドファンド(為替ヘッジあり)」や「ピクテ・ゴールド」は運用コストが比較的安くてお薦めです。その他に、金鉱株に投資する「ブラックロック・ゴールド・ファンド」も、為替ヘッジはありませんが面白い投信ですよ。

S:金鉱株?

吉:金を採掘する企業の株式です。金鉱株の値動きは金価格の変動よりも大きい傾向があり、さらに少額でも分散効果が期待できます。

S:なるほど……有事に備えて金投信を少し組み入れようかな。

吉井崇裕
イデア・ファンド・コンサルティング社長。ファンド・アナリストとして、国内約4000本の投資信託を常時分析する。モーニングスター、三菱アセットブレインズにてファンド・アナリスト、朝日ライフアセットマネジメントにて販売および運用関連業務に従事。現在はFP法人GAIAのセレクトファンドの選定に携わる。

[日経マネー2017年7月号の記事を再構成]

日経マネー 2017年7月号

著者 : 日経マネー編集部
出版 : 日経BP出版センター
価格 : 473円 (税込み)


近づくキャッシュレス社会
ビジネスパーソンの住まいと暮らし