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REIT投資の勘所

REITの「自社株買い」 市場は好意的だが効果に限界

日経マネー

2017/6/9

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日経マネー

 地政学リスクの後退と好決算を背景に株式市場が2万円相場を演じる一方、反転材料に乏しいREIT価格は上値が重い(2017年5月下旬時点)。

 債券としての性格を持つREITにとって金利の低下は追い風のはずだが、17年4月末に10年国債利回りが0.05%を下回る水準まで低下したにも関わらず反転の気配がない。市場は「この程度の水準は日銀の想定内であり反転材料ではない」と見切っている。

注:投資口価格は2017年5月2日時点

 めぼしい反転材料が見当たらない中、今、「自社株買い」に注目が集まっている。REITの場合は、正しくは「投資口取得及び消却」というが、株式会社における自社株買いおよび消却と同様の効果がある。

 REITは実質的に配当性向がほぼ100%だ。投資口を消却すると投資口数が減る分、1口当たりの分配金は増えることになる(分配金の原資が不変の場合)。

 投資口の取得及び消却自体は2013年の法改正で可能となったが、この4月21日にインベスコ・オフィス・ジェイリート投資法人(IOJ)の運用会社が投資口取得及び消却に関する規定を運用ガイドラインに盛り込んだことでREIT業界の耳目を集めた。

 IOJのこの制度変更は投資家からも好意的に評価されたようだ。IOJを含めた4月決算の10銘柄のうち、8銘柄は権利落ち日に年初来最安値を付けてしまったが、IOJは8銘柄に該当しなかった。

 IOJ自体も権利落ち日に2%超下落したが、前期の予想分配金に大きく寄与した物件売却益が剥落する期の取引であることを考えれば、堅調な値動きと言える。

■分配金の大幅増は難しい

 「自社株買い」による価格反転を期待したいところだが、制度自体を冷静に眺めると、投資口の取得及び消却による分配金増加効果は限定的だ。

 例えば分配金を10%増やすには、投資口数を9%強減らす必要がある。出資額500億円の投資法人なら45億円を超える資金で投資口を消却しなければならない。

 原則、内部留保が認められていないREITで、このような巨額の資金をプールすることは難しい。

 通常のREIT運営では、資金支出を伴わない費用である減価償却費から建物の資本支出を除いた部分を少しずつ余剰資金として留保するだけだ。その資金でさえ、物件取得時に一部使用することもある。つまり分配金を大幅に増加させるような規模の投資口消却を行うには、物件を売却してキャッシュリッチになる必要がある。

 IOJは「投資口消却のために物件を売却することは想定しない」としており、「自社株買い」の分配金の大幅増加は期待できない。

 一般的に株式会社の自社株買いは株価を押し上げる効果がある。今回のIOJの制度変更も同様の期待から市場の評価を受けた。だが、制度的には、REITの「自社株買い」は株式会社の自社株買いほど、投資口価格を押し上げる効果はないことは覚えておこう。

関大介
 不動産証券化コンサルティングおよび情報提供を手掛けるアイビー総研代表。REIT情報に特化した「JAPAN-REIT.COM」(http://www.japan-reit.com/)を運営する。

[日経マネー2017年7月号の記事を再構成]

日経マネー 2017年7月号

著者 : 日経マネー編集部
出版 : 日経BP出版センター
価格 : 473円 (税込み)


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