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投資道場

海外投資ならまず米国 指標良好、成長が持続 世界のどこに投資する?(1)米国・前編

2017/5/25

フィデリティ ポートフォリオ・マネジャーのハーリー・ランク氏
21世紀の個人投資家にとって、資産の一部を外貨や海外資産で運用することはリスク分散の意味からも重要です。しかし一体、世界のどの国・地域に投資すればいいのでしょうか? 特に今年は年初から、米トランプ政権を巡る混乱や欧州の保護主義的な動きなど、海外発の不安定な動きが目立ちました。この中で個人は世界経済の動きをどう見て、投資先をどう決めればいいのでしょう。そこで世界の主要地域を担当するエコノミスト、アナリスト、ファンドマネジャーなどの専門家に取材して、個人にとっての「外もの投資」の羅針盤を探ります。5~6回の連載を予定していますが、今回はまず世界経済に大きな影響力のある米国を取り上げます。

昨年秋のトランプ大統領就任決定で、改めて注目を集めた米国経済。5月19日時点ではダウ工業株30種平均は2万600ドル~2万1000ドル近辺の高値圏で推移しており、雇用や消費、景況感などの指標は足元の良好さを示している。トランプ政権を巡っては輸入品に関税をかける「国境調整税」導入、中国などとの貿易摩擦懸念、目先はロシアとの関係を巡る疑惑など不安定要素には事欠かないが、米国が世界経済最大のけん引役であることは間違いない。まずは米経済を取り巻く環境と、押さえておくべき指標を確認しよう。

■主要指標でみると米経済は二重丸

最初に米国の主要経済指標を確認しておこう。2017年1~3月期の実質GDP(国内総生産)成長率(速報)は前期比でプラス0.7%。16年10~12月期に比べ1.4ポイント低く、四半期としては3年ぶりの低水準となった。ただしGDP成長率の内訳を見ると、民間消費以上に設備投資がプラスに寄与しており、「企業が設備投資に前向きになってきた」との明るい声も出始めている。

米経済に詳しい第一生命経済研究所の桂畑誠治・経済調査部主任エコノミストは、「16年10~12月のGDP成長率は悪天候による一時的な成長減速。17年は2.3%、18年は2.5%と、2%台の水準を維持する」としている。国際主要機関のGDP予想も、18年にかけておおむね2%台前半が多い。米国は世界のGDPの約4分の1を占めており、米経済が高成長を保てば世界各国の輸出増加を通じて世界GDPの成長につながる。ちなみに、米政権は年4%の成長率目標を掲げている。

消費は堅調だ。4月の小売売上高は0.4%の上昇で、消費者信頼感指数も上昇傾向にある。1~3月期は自動車販売の減速で個人消費が低調となったが、4月の失業率は10年ぶりの低水準である4.4%で、非農業部門雇用者数は21万1000人増と前月から急回復している。このため消費の先行きは良好との見方が多い。

投資も良好さが続きそうだ。多くの専門家が指摘するのは、米サプライマネジメント協会(ISM)の景気指数の好調さ。特に非製造業は50が好不況の分岐点だが、4月は2.3ポイント上昇の57.5となった。トランプ政権の法人税減税についても、当初公約で掲げた税率35→15%は難しいものの、20~25%まで下げられるとの見方が多く、企業には追い風だ。前出の桂畑氏は「原油価格の緩やかな上昇にも注目」という。同氏は「石油輸出国機構(OPEC)が減産の期間延長で合意するなど、原油価格が堅調に推移すれば、シェールガス・オイルの増産による雇用増を通じて経済成長に貢献する」と見ている。

米国経済は輸出にやや不透明感はあるものの、消費と投資の両輪がGDP成長率を押し上げるというのが専門家のおおむね一致した見方。「成長を保つ先進国」と見て問題なさそうだ。

トランプ政権の金看板、1兆ドルのインフラ投資計画はどうか。同政権は道路・橋梁・石油パイプラインなどのインフラ投資を10年間で1兆ドル(約110兆円)実施する方針だ。複数の専門家のコメントを聞くと「米国のインフラは老朽化が進んでいるため、高水準のインフラ投資は不可避。ただし金額はさすがに1兆ドルには届かないかもしれない」との見方が多かった。

■リスクはトランプ改革の頓挫

一方、リスクについてはどうだろう。米経済の波乱要因はトランプ政権の改革の進捗だ。彼は法人税の引き下げだけでなく、所得税の基礎控除引き上げ・相続税廃止・キャピタルゲイン減税など、個人向けの経済政策も打ち出している。さらに1兆ドルのインフラ投資もある。ただしいずれも議会からの反発が根強く、調整は難航が予想される。減税・投資規模は当初打ち上げたほどの規模には至らない可能性も濃厚だ。桂畑氏は大規模なインフラ投資について、「民間からプロジェクト資金を吸い上げられるようなスキーム作りがカギ」と指摘する。

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