「部下はどこだ?」 オフィス改革、戸惑いの中進行米系CBREのワークプレース改革(上)

近年、オフィスに社員の固定席を設けない「フリーアドレス」を導入する企業が増えてきた。無駄なスペースをなくし、限られた不動産を有効活用しようとする試みであると同時に、生産性の向上などの効果も期待されている。世界51カ国に400拠点以上を構える米不動産サービス会社、CBRE(シービーアールイー)の日本法人(東京・千代田)も、そうした大胆な改革を実施した企業のひとつ。社長以下、全員が固定席のないオフィスで働くのは珍しいといい、新オフィス稼働後、3年間に訪れた見学者の数は2万人を超えるという。

社長も含めて全社員がフリーアドレス

「この2枚の写真をご覧いただくのが、わかりやすいと思います」。CBREのワークプレース・ストラテジー担当で、ノースアジア・シニアディレクターの金子千夏氏はこう切り出した。日本と米国でインテリアデザイナーとして勤務した後、3年前のオフィス移転とともにCBREに転職。現在は、企業向けに従業員の働きを支える環境づくりを支援するワークプレース・ストラテジストとして働いている。経営戦略に基づくオフィス環境づくりは米国では普及しているが、「日本ではまだこれから広がっていくところ」という。

東京・浜松町にあった以前の本社オフィス
東京・丸の内にある現在の本社オフィス

CBREが首都圏にあった4拠点を集約、東京・丸の内にある現在のオフィスに引っ越したのは2014年4月のこと。1枚はかつて東京・浜松町にあった本社オフィスの写真、もう1枚は現在の写真だ。比べると一目瞭然、移転後の方が社員も生き生きしているように見える。

フロアには4、5人が一緒に並んで使う大机もあれば、1人で集中できる個室や調べ物に最適な部屋などもある。昼寝ができるスペースや、育児休業から復帰した女性社員に好評の搾乳室、海外出張から戻った際や、ランニングの後に便利なシャワー室なども完備している。

会議室はすべてガラス張りだ。「最初のうちは抵抗感のある社員もいたようですが、今では慣れました」と金子氏。外の景色が見渡せる見晴らしのいいカフェで、カジュアルな打ち合わせをする社員も多いという。

変わったのは見た目だけではない。移転と同時に社長を含む全社員の固定席をなくし、フリーアドレスにした。社員も役員も含めて全員がフリーアドレスという企業は珍しいという。

フリーアドレスに関してはしばしば「作業に集中できない」など、否定的な意見も耳にする。生産性を阻害する要因はなんですかとアンケートを取ると、作業中に話しかけられたり、電話がかかってきたりして集中が妨げられることが嫌という意見が上位にくるという。この点について金子氏に質問すると、「成功させるコツは空間のメリハリをつけること、それと選択肢があることでしょう」とのこと。

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ごみ箱を減らして社員を動かす