2017/5/27
ネオと名付けられた成人の頭骨と体の骨。おそらく男性と思われる。(PHOTOGRAPH COURTESY LEE BERGER)

しかし、他にももっと証拠がなければ考慮にも値しないと主張する研究者も多い。英ロンドン自然史博物館の人類学者クリス・ストリンガー氏は、最新の論文を読んでこう語る。「私を含め多くの専門家にとって、ゴリラほどの大きさの脳しか持たない生き物が、このような複雑な行動を見せるとはとても考えられないのです。その上、洞窟に入るにはたいまつなどの明かりが必要で、それはつまり火を扱うことができたということです」

一方で、チームメンバーも他の専門家も、ホモ・ナレディが本当に死者を葬っていたのだとすれば、必ずしも人間がやるような儀式や理由付けを伴う必要はなかったとも指摘している。

ウィットウォーターズランド大学のポスドク研究員オーロラ・バル氏は、「埋葬をしていたと結論付けるのには、慎重になるべきです。彼らは穴を掘っていたわけではありませんし、道具もありません。これは、ホモ・サピエンスやネアンデルタール人に見られるような、いわゆる埋葬の儀式とは違うのです」と話す。バル氏は2016年に、遺体埋葬説に批判的な論文を書いている。

ホークス氏は、「私たちは、人間はとても賢く、何にでも理由をつけるものだと思いがちですが、私は、理由についてはそれほど重要視していません。ただ単に、遺体が動物に食べられたり、風雨にさらされるのを避けたかったというだけのことかもしれません」と語る。

石器を使っていた可能性も

レセディで見つかった骨は、まだ年代が特定されていない。また、ディナレディの測定結果からも、ホモ・ナレディが種としてどれくらいの期間存在していたのかはわからない。しかし、これらの骨の年代は、中期旧石器時代の初期にかかっている。その時代は、まだ複数のヒト属が混在し、現代のように1本の系統だけにはなっていなかった。

33万~23万年前、地球上には現生人類の祖先だけでなく、ヨーロッパとアジアにはネアンデルタール人が、アジアにはデニソワ人がいた。そしておそらく一部にはホモ・エレクトスや、ホモ・フロレシエンシス(フローレス原人)の祖先も暮らしていただろう。ホモ・ナレディは、この時期にアフリカに存在していたことが確認された最初の種ということになる(ただし、初期のホモ・サピエンスがわずかながら既に存在していたという証拠は見つかっている)。

レセディの狭い空間から掘り出されたばかりのホモ・ナレディの歯。(PHOTOGRAPH BY ELLIOT ROSS, NATIONAL GEOGRAPHIC)

しかしいまだに、ホモ・ナレディが系統樹のどの位置に加えられるべきなのかはわかっていない。ほとんどの研究者は、ホモ・サピエンスの直接の祖先は180万年前に出現したホモ・エレクトスであるという点で同意している。しかし、バーガー氏の分析では、骨の年代が比較的新しいという点はともかく、その形態から見ればホモ・ナレディのほうが人間の祖先候補として適しているのではないかとも考えられる。

バーガー氏のチームはさらに、もしホモ・ナレディと現生人類が同じ時代に生きていたとしたら、南アフリカ各地で見つかっている当時の石器は、人間が作ったものではない可能性があるとも主張している。「石器を作るという行為は、知能の高い現生人類の証拠と考えられてきましたが、この地域から最も多く見つかっているヒト属の化石は、ホモ・ナレディのものです」と、ホークス氏は指摘した。

バーガー氏も、「道具を作っていたといえば、すぐに人間だと決めつけてしまいがちですが、ならば科学のルールに則って、証拠を見せてほしいと言いたいですね」と話す。

ホークス氏の見積もりによれば、ディナレディはまだ全体の5%も発掘されていない。レセディにも、まだ化石が眠っていると考えられている。近くには他にも洞窟があり、発掘隊は太古の人類のさらなる証拠を探して調査を続けている。

(文 Michael Greshko、訳 ルーバー荒井ハンナ、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2017年5月12日付]