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保険はサプリ 貯蓄で足りない「栄養素」だけ補う ファイナンシャルプランナー 風呂内亜矢

2017/5/26

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食事で不足しがちな栄養素をサプリメントで補う人がいます。サプリは食事の補助的な役割で、食事で取りやすい栄養素ならばサプリで補充する必要性は低いでしょう。食事を「貯蓄」、サプリを「保険」に見立てると、保険の選び方も分かりやすくなります。

■起こる確率と経済的ダメージは?

保険の加入にあたっては、生保・損保ともに「起こる確率は低くても、起こったら経済的なダメージが大きいケース」に備えるのが基本です。損保なら賠償問題が生じた場合に備える「個人賠償責任保険」、生保(医療保険)なら保険適用外の治療も希望する場合の「先進医療保険・特約」「がん保険・特約」などもこの基本に沿った選択になります。

なお基本的に、「起こる確率が高く、経済的なダメージも甚大なケース」では、保険料は高くなります。保険金を支払う可能性が高いため、加入者から受け取る保険料も高くしなければ、仕組みを維持できないからです。分かりやすい例はセカンドライフの生活費。この費用を保険で備えようとすると、加入者は不利になる、つまり保険料が高くなります。保険料を支払うよりも、自分で貯蓄をしたり資産運用したりすることが一般的には有利な対策です。

■公的保険を理解し、かけ過ぎ防ぐ

保険への加入を考える場合、公的な保障(補償)や貯蓄など現時点ですでに備えられている対策を整理し、足りない分を保険で補填するのが有効です。日ごろの食事で取れている栄養素は食事に任せ、不足しがちな栄養素だけサプリで補うことと同じです。

死亡保険について考えてみると、独身の人の場合、自分が亡くなったときの葬儀費用200万円程度の貯蓄があれば、保険は不要でしょう。子どもがいる家庭の場合、収入にもよりますが、会社員の夫が妻と子ども1人を残して死亡した場合、遺族年金は年間約140万円受給できます(平均的に年収が約400万円だった35歳会社員の夫と、同年齢の専業主婦の妻を想定)。その他の蓄えや自宅の有無、妻がどのくらい働けそうなのかなどを整理して、必要な保障額を考えます。

非常に大ざっぱな目安としては「年収×3倍+1000万円×子どもの人数」というものがあります。上記のケースで貯蓄がほとんど無い場合は、夫の死亡に備えて2200万円程度の死亡保険をかけることが妥当な判断になります。

医療保険については、「高額療養費制度」という公的な保障があり、1カ月あたりの自己負担額に上限があります。一般的な収入の現役世代の場合、月約9万円程度が上限のため、そのくらいの費用が貯蓄などで捻出できる場合、保険に加入しない選択肢もあります。保険適用外の先進医療を受けたい場合や、治療費のほかに発生する差額ベッド代、交通費、入院に伴って家事を代行してもらう場合などは別途お金がかかります。病気になったときの治療費以外の費用が気になる場合は、保険で備える手もあります。

■保険で貯蓄、年間16万円まで

起こる確率が高く、必要な費用が大きい例として、先ほどセカンドライフを挙げました。個人年金保険や終身保険(死亡)、学資保険、養老保険などの貯蓄性が高い保険は、起こる確率が高いことに備える対策です。基本的には自分で貯蓄や資産運用などをして準備をしていくことが有利ですが、生命保険料控除の範囲内であれば、活用するのも一案です。

生命保険料控除の対象となる保険料は、一般生命保険料、個人年金保険料、介護医療保険料の3種類でそれぞれ年間8万円までです。学資保険も一般生命保険料として控除の対象になります。例えば学資保険を年間8万円、個人年金保険を年間8万円の合計16万円くらいまでを保険で貯蓄をすることは悪くないでしょう。年収400万円、所得税率5%の会社員の場合、住民税とあわせて1万円弱の節税になります。

ただ、貯蓄性が高いといわれている保険商品であっても、保険料のすべてが積み立てに充当されるわけではありません。中途解約すると返戻金はいくらになるのか、満期まで保有するとかけた保険料以上の金額を受け取れる設計になっているのかなどに注意し、さらに減税の恩恵を受けられるかどうかも確認し、加入の是非を判断するとよいでしょう。

起こりにくい事態も含め、すべてを貯蓄で備えることは難しく、保険はそうした部分をサポートすることは得意です。一方で、起こりやすいことや、起こっても貯蓄でまかなえる範囲のケースに保険で備えると、「貯金で十分だったな」ということになりかねません。貯蓄は食事、保険はサプリとして補助的に上手に活用できれば理想的です。

風呂内亜矢
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP認定者、宅地建物取引士。26歳でマンションを購入したことをきっかけにお金の勉強を始める。2013年ファイナンシャルプランナーとして独立。著書に『その節約はキケンです―お金が貯まる人はなぜ家計簿をつけないのか―』(祥伝社)、『デキる女は「抜け目」ない』(あさ出版)などがある。管理栄養士の資格も持つ。http://www.furouchi.com/

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